https://note.mu/moscowmuller/n/nf9d9270f3c6c

媒体をノートにしてみました
 CFBより、カーステン先生のスタンダードのマナベースに関する記事(https://www.channelfireball.com/articles/the-mana-in-new-standard-is-great-but-dont-stretch-it-too-far/)です。
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 スタンダード新環境が始まり、トーナメント結果が上がってきています。ラヴニカの献身の登場により、とうとう10種類のショックランドが勢揃いしました。このショックランド+チェックランドのマナベースはどこまで選択肢を広げさせてくれるのか? みなさん気になっていることと思います。その疑問に答えるため、今回は先週末インディアナポリスで開催されたSCGトーナメントのTop4デッキそれぞれのマナベースを分析してみましょう。

 このトーナメントについてはビデオ/テキストそれぞれで素晴らしいカバレージが採られています。カバレージが全くオミットされた、ニュージャージーのマジックフェスタ内で行われたグランプリとは対照的です。しかしそれより尚悪いのは、そのGPではカバレージを採らない旨が、あるツイートへのリプライという形で初めて"アナウンス"されたことです。このイベント運営の方針転換とコミュニケーションの取り方、いずれも私には極めて残念なことです。長年私はカバレージライターとしてGPに携わってきました。最後にカバレージを担当したGPではデッキブレイクダウンを取り、Top8は1つのツイートに順次結果をぶら下げていくことで動向をたどりやすくしましたし、その他多くの情報を適宜アップデートしていきました。自分が参加できないイベントでも、熱心なカバレージスタッフが発信する情報の全てを誰もが、ほぼリアルタイムで受け取ることができたのです──こういったことが、マジックのイベントが素晴らしいものであると確信できる所以でした。そういう時代が終わってしまったのだとしたら、とても寂しいことです。
 
 それはともかく、SCGのイベントにはカバレージがあるのですから、その運営を讃えようではありませんか。Top8に『批判家刺殺』も『荒野の再生』も全く姿を見せないのは少し意外でした──イベントの2日目、そしてMTGアリーナでは赤単とターボフォグをあれほど目にしたというのに! BO3とBO1が全く異なるフォーマットであるということが、改めて浮き彫りにされたということでしょうか。

 さて、まずは優勝デッキから見ていくことにしましょう。 

Anthony DevartiのBUGミッドレンジ 

愚蒙の記念像 2 
森林の墓地 4 
草むした墓 4 
沼 2 
島 1 
森 4 
繁殖池 4 
湿った墓 2 
水没した地下墓地 1 
ラノワールのエルフ 4 
マーフォークの枝渡り 4 
野茂み歩き 4 
探求者の従者 1 
翡翠光のレインジャー 4 
貪欲なチュパカブラ 2
真夜中の死神 2 
殺戮の暴君 2 
ハイドロイド混成体 3 
ビビアン・リード 3 
喪心 2 
ヴラスカの侮辱 2 
採取//最終 3 
サイドボード 
肉儀場の叫び 3 
最古再誕 2 
若葉のドライアド 1 
押し潰す梢 1 
ヴラスカの侮辱 1 
軽蔑的な一撃 1 
否認 2 
強迫 4


 前環境では、間違いなくゴルガリミッドレンジが王者でした。そして、BGはひとまず王座を明け渡すつもりはないようです。たった一つの変化は、このデッキが今は青をタッチしているということでしょう。『ハイドロイド混成体』には、その価値があります。そして『繁殖池』が、それを可能ならしめています。優勝トロフィーをもたらすことになったデッキで、Anthonyは8枚の青マナソースを採用しています。『繁殖池』4枚、『湿った墓』2枚、『水没した地下墓地』1枚、『島』1枚。対して、8位と11位に入賞したBUGでは青マナソースは10枚採られています──4枚の『繁殖池』、『水没した地下墓地』と『湿った墓』3枚ずつ、『島』は不採用です。全てのリストで『マーフォークの枝渡り』と『翡翠光のレインジャー』が4枚ずつ採られていますから、これら8枚をざっくり1枚の青マナカウントとして計算しますと、それぞれ9枚の青マナソースと11枚の青マナソースを採用したデッキ、と言えますね。さて、安定してハイドロイドをプレイするために必要な青マナソースの数とは、いったい何枚なのでしょうか? 

 この構築では緑マナの確保は問題たり得ない以上、9枚の青マナソースを含む60枚のデッキは順調に展開した場合、91.4%の確率で2UGのスペルを4ターン目にプレイすることができます。これは少いとは言いませんが、もう一声欲しいところです。11枚の青マナソースではこの確率は95.9%まで上昇しますが、これは過剰というものでしょう。付け加えておくと、この確率は先手が1マリガンしたあと、最低4枚の土地を引きその中に青マナソースが一つでも含まれている場合のものを算出しています。詳しくは私の過去の記事(https://www.channelfireball.com/articles/how-many-colored-mana-sources-do-you-need-to-consistently-cast-your-spells-a-guilds-of-ravnica-update/)を参照してください(リンク先は英語)。

 私の計算では、青マナソース10枚というのがちょうどいいように思えます。つまり9枚の青マナを出す土地と、8枚の探検クリーチャーたちですね。これならX=2のハイドロイドを4ターン目にキャストできる確率は94%ですし、X=4を6ターン目ならば98.4%に達します。もちろん、ハイドロイドのXを小さくするのは最高のプランではないでしょう──可能なら4以上で唱えたいに決まっています──ですが、ミニ・ハイドロイドを唱えるべきときにそうできない、という事態は避けるに越したことはないのです。Anthonyのデッキをこの計算に合わせるとしたら、『愚蒙の記念像』と『島』を1枚ずつ減らし、『湿った墓』と『水没した地下墓地』を1枚ずつ加えるのが良いでしょう。こうすることで、4ターン目にハイドロイドとチュパカブラのどちらをも唱えられる態勢を整えられる確率を上げつつ、初手に『島』を引いてしまうリスクを無くすこともできます。1GGと2BBを含むデッキにおいては、基本土地を採用するリスクに見合うリターンがあるとは思えません。『暗殺者の戦利品』や『廃墟の地』が幅を利かせている環境というわけでもないのですから。

Jonathan Hobbsのバントフラッシュ

森 1 
平地 1 
繁殖池 4 
氷河の城砦 4 
神聖なる泉 4 
内陸の湾港 3 
天才の記念像 1 
陽花弁の木立ち 4 
寺院の庭 4 

恩寵の天使 4 
エリマキ神秘家 4 
成長室の守護者 4 
豊穣の声、シャライ 1 

ドミナリアの英雄、テフェリー 2 
ベナリア史 4 
封じ込め 3 
一瞬 1 
薬術師の眼識 1 
解任//開展 2
大集団の行進 1 
残骸の漂着 2 
呪文貫き 2 
中略 2 
万全//番人 1 
サイドボード 
拘留代理人 1 
秋の騎士 3 
不可解な終焉 1 
押し潰す梢 2 
軽蔑的な一撃 2 
否認 2 
黎明をもたらす者ライラ 1 
豊穣の声、シャライ 1 
次元の浄化 1 
集団強制 1


『ベナリア史』と『エリマキ神秘家』を同じデッキに? 正気ですか? えー、この26枚のランドで白マナソースが17枚、青と緑マナはそれぞれ16枚確保できています。2枚採用されている『解任//開展』のドローを無視して──もっとも、これらはせいぜい土地0.5枚分程度にしかカウントできませんが──計算すると、3ターン目に『ベナリア史』を置ける確率は88.2%、4ターン目の『エリマキ神秘家』は81.2%しかありません。『平地』を4枚目の『内陸の湾港』に変えれば『ベナリア史』は84.7%、『エリマキ神秘家』は89.1%になります。これは総合的に見るとプラスでしょうが、私が最低限の安定性として求める90%には程遠い数字です。この構築はちょっと欲張りすぎと言わざるを得ません。おそらくは『ベナリア史』を外して、『秋の騎士』や『拘留代理人』を3マナ域として採用すべきでしょうね。

 とは言え、私は彼が作り上げたこのデッキが豊富なインスタントタイミングのアクションを有していること、それによって相手に揺さぶりをかけるというアプローチ自体はとても気に入っています。『エリマキ神秘家』に気が行って『恩寵の天使』にシャクられる、『残骸の漂着』をケアすれば『封じ込め』される、といったように。相手が手控えたなら、『成長室の守護者』を育てればいいだけです。この基本戦略は、とてもパワフルです。

白ウイニータッチ青 Max Magnuson

平地 13 
氷河の城砦 4 
神聖なる泉 4 

不屈の護衛 4 
追われる証人 4 
短角獣の歩哨 4 
癒し手の鷹 1 
徴税人 4 
ベナリアの軍司令 4 
拘留代理人 4 
敬慕されるロクソドン 4 

軍団の上陸 4 
ベナリア史 4 
議事会の裁き 1 
不敗の陣形 1 
サイドボード
トカートリの儀仗兵 3 
不可解な終焉 3 
否認 3 
呪文貫き 2 
暴君への敵対者、アジャニ 3 
島 1 


 前環境では、白ウイニーにタッチする色としては『英雄的援軍』と『実験の狂乱』を有する赤が主流でした。しかし『神聖なる泉』と『拘留代理人』の登場により、新しいオプションとして青が浮上しています。しかし、8枚の青マナソースというのは『拘留代理人』をタッチするのに十分と言えるのでしょうか?

 ご注意いただきたいのは、デッキ自体の土地の総数です。私がこの記事で用いる計算では"土地を3枚引いた場合に含まれる特定の色マナの数"が問題になるのですから、デッキ内の土地の数が少なければ少いほど、確率は上がるわけです。例として、24枚の土地に8枚の青マナソースが含まれる場合に3枚の土地から青マナが出る確率は33.3%なのに対し、土地21枚では38.1%まで上昇します。直感に反しますが、この計算方法ではそうなるのです。『軍団の上陸』もランドカウントに加えるべきだという意見も出てくるかもしれませんが、3ターン目に反転させるためには1マナクリーチャーが十分な枚数と、かつ相手が何もしてこないという条件が加わるので現実的とは思えません。

 なんであれ、青マナ8枚というのが不十分なことに疑問の余地はなさそうです。土地21枚のデッキでは、3ターン目に『拘留代理人』を唱えられる確率は85.8%に過ぎません。『平地』を1枚『島』に替えることで89.6%まで上昇しますが、それによって『ベナリアの軍司令』をキャストできる確率を100%から94.1%まで下げるのは避けるべきでしょう。それだけの価値があるとは思えませんから。それに、2ターン目に1マナ+1マナと動く際にも『島』は邪魔になってしまいます。『アゾリウスのギルド門』は選択肢ですが、確定タップインはこのように低いマナカーブのデッキではかなり弱いカードになってしまいます。

 結論として、3マナのカードを8枚のマナソースでタッチするのは4マナのカードをタッチするよりも遥かに難しい、と言わざるを得ないようです。『ゴブリンの鎖回し』を入れた赤単に『恐怖の劇場』だけをタッチするような構築も、避けたほうが無難でしょう。 もしも、サイドの『否認』や『呪文貫き』がどうしても必要だと感じ、かつ3ターン目に86%の確率で唱えられる『拘留代理人』が『アダントの先兵』や『議事会の裁き』よりも優れていると信じるのであれば、せめて『拘留代理人』の枚数は2枚か3枚に抑えておくべきです。こうすることで、
複数枚引いてしまうリスクを抑える方向に向かってください。そもそも、白ウイニーに3マナ域が12枚も必要だとは思えませんしね。

Nick Cowdenのエスパーコントロール

島 1 
平地 1 
沼 2 
水没した地下墓地 4 
氷河の城砦 4 
神無き祭殿 3 
神聖なる泉 4 
孤立した礼拝堂 4 
湿った墓 4 

変遷の龍、クロミウム 1 
ドミナリアの英雄、テフェリー 4 
吸収 4 
喪心 3 
薬術師の眼識 1 
渇望の時 1 
屈辱 2 
否認 1 
予知覚3 
中略 4 
ヴラスカの侮辱 4 
アズカンタの探索 2 
ケイヤの怒り 3 
サイドボード 
正気泥棒 3 
軽蔑的な一撃 1 
渇望の時 3
否認 1 
黎明をもたらす者ライラ 2 
肉儀場の叫び 1 
ケイヤの怒り 1 
思考消去 3


『ケイヤの怒り』と『吸収』はコントロールプレイヤーへの大きなボーナスでしたが、この二枚を同じデッキで運用するのはなかなかハードと言えます。Nick Cowdenの27枚のマナベースでは、白マナソースが16枚、黒と青が17枚ずつです。2枚のアズカンタを抜きにして考えると──これらは合わせて0.5マナソースくらいのカウントでしょうが──『吸収』を3ターン目にプレイできる確率はわずか82.6%、『ケイヤの怒り』も82.2%にとどまります。これらの数字は私が考える基準を大きく下回っています。もちろんギルド門を足すことで改善はされますが、それによってタップインという新たな問題も浮上します。

 私がこのデッキをいじるとすれば、サイドボードの『思考消去』3枚をメインボードへと移すでしょう。諜報で不要なカードを弾けるのは魅力的です。代わりに『島』、『喪心』、『中略』を1枚ずつ減らします。このマナベースと構築は7位入賞のエスパーコントロールのものに近くなります。それでもなお、『吸収』を3ターン目に唱えるのは簡単ではありませんから、おそらく3枚に減らすのがベストなのでしょうが、少なくとも『ケイヤの怒り』に関しては事態はかなり改善されます。

まとめ 
・BGに『ハイドロイド混成体』をタッチするなら、10枚は青マナソースを入れましょう。こうすることで、2UGのスペルとして唱えなければならない状況にも対応できます。 

・『ベナリア史』と『エリマキ神秘家』を同居させるのは、ショックランドとチェックランドをフル採用してもやはり欲張りであると言えます。CCDDサイクルのカードを安定してプレイするためには、各色のマナソースが17枚か18枚は必要(2CCや2DDのカードをキャストする際に必要な量を上回ります)なのですから、それらの色に対応しないマナしか産み出さない土地は採用するべきではないでしょう。『エリマキ神秘家』を採用するデッキからは平地を抜き、『ケイヤの怒り』を採用するデッキに島を入れるべきではないのです。 

・8枚しか色マナソースが無いデッキに3マナ域をタッチするのは危険です。 

・書き忘れていましたが、3色のミッドレンジを組もうとすうるならショックランド11枚、チェックランド9-10枚が目安の数字です。 

 私はこの記事内での計算を自分のシミュレーターで行いましたが、読者の皆さんも『mtgoncurve.com』(https://mtgoncurve.com/)というウェブサイトで簡単に行うことができます。これは素晴らしいツールでして、デッキリストを放り込むだけでデッキのそれぞれのカードをプレイできる確率を弾き出してくれます。ドローや諜報は考慮されないことにだけご注意を。私はこのサイトをRedditで知りました。マリガンとマリガン後の占術の取扱が少し違う都合で私の数字と
完全に一致はしませんが、誤差はごく微細な範囲に留まっており、問題になることは皆無でしょう。確率の計算はデッキ構築の根幹を成します。是非チェックしてみてください。

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以上です。内容には全く関係ありませんが、スタンダードのカード名が覚えられません。
【翻訳】PTラヴニカのギルド準優勝! CFB謹製の白ウィニーができるまで by Martin Juza
【翻訳】PTラヴニカのギルド準優勝! CFB謹製の白ウィニーができるまで by Martin Juza
 CFBより、LSVを準優勝まで導いた白ウィニーの構築に関する記事(https://www.channelfireball.com/articles/the-evolution-of-white-weenie-for-pro-tour-guilds-of-ravnica/)です。

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 これを書いているのはPTラヴニカのギルド直前の水曜日で、僕がそこへ持ち込むデッキは先週の時点で決定していた──長らく、そんなにはやく決まることはなかったのだが。

 調整の一環でMOリーグに潜っていた段階で、白ウィニーとよく当たることに気づいた。最初はその印象を気に留めることはなかった。デッキ全体で50tix強(これは現時点で殺戮の暴君2枚、再燃するフェニックス2枚、テフェリー1.5枚分に相当する)と安価で、かつ速く試合を消化できるメリットが有ることからグラインダーたちが効率を求めて持ち込んでいるのだろうと思っただけだ。
 だがあるとき、僕は数マッチ連続でそのデッキに敗れた。つまり、自分でも試す必要があると気づくべきタイミングだった。

まずは、GPニュージャージーでサイモン・ニールセンがTOP32に入ったバージョンをコピーするところから始めた。

平地*20

空渡りの野心家*3
不屈の護衛*3
追われる証人*2
短角獣の歩哨*4
アダントの先兵*4
善意の騎士*4
ベナリアの軍司令*4
敬慕されるロクソドン*4

軍団の上陸*4
ベナリア史*4
議事会の裁き*2
暴君の敵対者、アジャニ*2

サイドボード
暴君の敵対者、アジャニ*2
不可解な終焉*3
報奨密偵*2
議事会の裁き*2
征服者の誇り*2
トカートリの儀仗兵*4

初陣を3-2で終え、僕はノートに印象をメモした。

 敬慕されるロクソドンは好きじゃない。ブレ幅があるカードだ。最高のドローに恵まれたときは最強だが、+1/+1カウンターのためにアタックするチャンスをみすみす逃すことが許容される機会はそう多くない。ドローに恵まれない試合では最悪。殴り合うマッチアップで後手を引いたとき、ロクソドンを召集するために無防備になれば返しで待っているのは敗北だ。

 善意の騎士もそれほど強くない。唯一活躍するのがゴルガリとのマッチアップだが野茂み歩きに対して無力だし、サイド後は黄金の死でも煤の儀式でも死ぬ。

 1マナクリーチャーが多いのはいい。不屈の護衛はベナリアの軍司令を守ってくれるし、騎士だからベナリア史の3章でパンプできる。伝統的に白ウィニーの天敵といえばスイーパーだが、護衛とアダントの先兵のおかげでこのデッキは耐性がある。アダントの先兵はジェスカイコン相手には、封じ込めを引かれなければ単体で勝てるレベルに強いカードだ。

 ベナリアの軍司令以外にもう1つ、全体をパンプする手段が欲しかった。カードプールに目を凝らしてみると、征服者の誇りは良さそうな選択肢だった。確実に昇殿できるように、また軍団の上陸を3ターン目にフリップできる確率を上げるためにいくつかの変更を加えたのが、下のリストだ。(画像1を参照)

 納得の行かない箇所も何枚かあったが、この変更後11マッチを様々なデッキ相手に連取できた──何かをつかめたことは明らかだった。

この時点での印象メモ。

 このデッキは環境のどんなデッキよりも速い。環境の速度が未だ定義されていない、ということが何よりも追い風だ。プレイヤーたちはみんな、絶滅の星や殺戮の暴君、発展+発破のような重いカードを撃つまでの猶予があると思い込んでいる。

 イゼットフェニックスは現時点で一番メタに占める割合が多いアーキタイプだが、このデッキにとってはお客様と言える。序盤の2-3ターン、このデッキは戦場にコミットしない。4ターン目になにかデカブツが出てきても、こちらはただ議事会の裁きを当ててやればいいだけだ。サイド後は焦熱の連続砲撃が入ってくるだろうが、不屈の護衛、アダントの先兵、征服者の誇りは応じ手としてとても優秀だ。特に、相手がベナリア史のトークンをまとめて除去しようとしてこちらのターンにプレイしてきた場合には。
 
 ゴルガリは、特にサイド後は厳しい。殺戮の暴君のような何もしないカードが抜け、代わりにスイーパーが入ってくるからだ。何よりも、野茂み歩きが問題になる。トカートリがこのマッチアップでは輝く。しかし、イゼットがこれだけいる以上、ゴルガリはメタゲームから締め出されるはずだ。ここの不利はまあ許容できる。アジャニはコントロールに対して強いんだが、速度重視でイージーウィンを狙うデッキのメインボードに4マナカードを入れたくはない。このデッキ最強の動きは土地を2-3枚とクリーチャーを山ほど引き、征服者の誇りで締めることなのだから。軽量飛行クリーチャーは、ゴルガリだけを見るなら序盤の探検クリーチャーを無視できるという点で採用価値がある。銀嘴のグリフィンはそういった意味で、ゴルガリに勝つためだけならプレイアブルだ。

 アダントの先兵もまた、ライフにプレッシャーを掛けてこないコントロールとのマッチアップを支えてくれる。2回のクラリオン、2回の残骸の漂着を乗り越えてもなお、こちらにはボードを再構築するだけの時間がある。そして軍団の上陸がフリップしてしまえば、ほぼ負けはなくなるだろう。

 鎖回しは頭痛の種だが、赤単をPTに持ち込むプレイヤーは少ないだろう。ここの不利も許容範囲内だ。

 征服者の誇りはとても強いが、2枚は引きたくないカードの筆頭だ。おそらく、2枚と3枚の中間が適切な採用枚数なのだろう。通常はベナリア史と軍団の上陸のおかげで3-4ターン目にはだいたい昇殿できるが、パーマネントでない呪文を2枚以上引くのは致命的な遅れにつながる。

 議事会の裁きは素晴らしい。これだけ小型クリーチャーがいれば0マナでプレイするのは簡単だし、ターボフォグのようなデッキに対しては捲り目になる。しかし基本的には黎明をもたらすものライラのようなパーマネントへのリアクションカードである以上、本質的にはサイドカードだ。1ゲーム目はただただ最速の勝利を目指したい。

 不屈の護衛の能力は、ETBではないからトカートリがいても誘発する。

 ベナリアの軍司令は単色にこだわる大きな理由だ。クリーチャーで殴り合うマッチアップではこいつの存在が決め手になる。

 1マナ域の選定を煮詰める必要がある。フライヤーは必要だろうか? ハズダーの司法官のようなカードで、昇殿をもう少し推していくべきだろうか? 短角獣の歩哨は本当に採用に値するだろうか?

 以下は、フライヤーをより重視し、昇殿にそれほどコミットしない別バージョンだ。(画像2)

 僕は上のメモ書きを調整チームのコミュニティにすべてポストした。PTに持ち込むデッキに課せられる条件はすべてクリアしていたし見通しは明るかったが、MOCSでなんと白ウィニーが5つも上位入賞してしまったのだ。8-0のリストに目を通してみると英雄的援軍のために赤が散らしてあった。理論上の最速を目指すには、これはいいアイディアのように思えた。しかし、何事もそう単純ではないものだ。

 まず、4ターン目に確実に赤マナを用意するために赤マナソース8枚というのは十分ではない。9も怪しい。10は必要だろう。だがベナリアの軍司令を4枚採用したデッキにただ山を突っ込むこともできない。2ターン目までに1マナクリーチャーを3枚プレイしたいデッキで、タップインランドを入れたいはずもなく──赤をタッチすれば当然デッキのランドカウントも上がるが、20枚1マナが入っているデッキに23枚のランドというのは多すぎる。

 検討を重ねた結果、僕は征服者の誇りが単純に英雄的援軍と同じ役割(相手を最速で倒す)を果たしてくれるし、このデッキではより優れていると結論を下した。ランドカウントを上げる必要はないし、色事故を起こす危険性ももちろんない。
 
 この頃ジョシュがチームに合流し、クリーチャーの選定段階に入った。最適解を導き出すのに、ジョシュには1時間あれば十分だった──いつもどおりに。僕たちが白ウィニーに与えた最大のイノベーションは、最初はジョークに過ぎなかった。MTGアリーナでもらえる構築済みデッキに白黒ライフゲインがあるのをご存知だろうか。巨大に膨れ上がったアジャニの群れ仲間に為す術もなく踏み潰されたご経験は? そう、アリーナスタンのみならずPTの舞台でもアジャニの群れ仲間はプレイアブルで、それどころか現在のメタゲームではとても強いことがわかったのだ。

 以下が、僕がPTに向けてレジストしようとしているデッキだ。サイドボードは未だ検討段階だが、60枚中59枚は確定といってもいい(変更するとすれば、どこかを削って議事会の裁きをあと1枚追加することになるだろう)。

平地*12
断崖の避難所*4
聖なる鋳造所*4

空渡の野心家*4
不屈の護衛*4
レオニンの先兵*4
癒やし手の鷹*4
アジャニの群れ仲間*4
アダントの先兵*4
ベナリアの軍司令*4

軍団の上陸*4
征服者の誇り*3
ベナリア史*4
議事会の裁き*1

サイドボード

トカートリの儀仗兵*4
不可解な終焉*2
議事会の裁き*3
実験の狂乱*3
苦悩火*2
山*1

(訳註──実際に入賞したLSVのリストではメインの野心家が1枚議事会の裁きに変更されており、サイドボードはオレリアがいたり残骸の漂着があったりと、わりと違っています)

 個人的には本当に赤を足す必要があるのかまだわかっていないが、現状チーム全体では必要だという方向でまとまっている。もし赤をたさないなら、サイドにはアジャニを用意しておくだろう。先に書いたようにリーグで調整していた段階ではアジャニで対コントロールを優位に進めることができたが、いまや白ウィニーは倒すべきデッキの一つになってしまっている以上、コントロールも対策を進めてきているはずだ。そうなれば実験の狂乱にアクセスしたい。もともと不利なゴルガリ相手にもサイドインできる。

 不採用にしたカードについて。

 追われる証人 単純にインパクト不足。飛んでいるわけでも、最初からライフゲインできるわけでもない。

 薄暮まといの空渡り 同上。飛んではいるがインパクト不足。こいつを入れるなら1/2飛行を優先したい。鎖回し耐性がつくし、軍司令がいれば連続砲撃にも耐えるようになるからだ。

 敬慕されるロクソドン ブレ幅が大きすぎる。なるべく安定する構築を模索はしたのだが、赤単やゴルガリ相手のサイドボード候補というところがせいぜいだった。そしてそのマッチアップではトカートリで十分だ。

 悔恨する僧侶 弾けるドレイクへの回答になると勘違いして一時期試していたが、よくよく読んで見れば追放領域も数えるということに気づき解雇。

 闘いの覚悟 MOで採用例をいくつか見たが、素直に征服者の誇りを採用すべきだ。

 ライラ 土地が23枚のバージョンでサイドに忍ばせるのはいい選択だ。だが土地20では無理。

 残骸の漂着 有利なときにプレイできないカードを入れるのは好きになれない。議事会の裁きのようなカードは有利でも不利でも活躍できる。勝つためにあと一手だけが必要なとき、残骸の漂着を引いてしまえば完璧な無駄ドローだ。また一般的な印象とは反対に、青赤や青単に対して有効なサイドとは言えない。そのマッチアップを残骸の漂着を構えるような展開にしたくはないからだ。

 報奨密偵 ライラへの専用対策カードとしてサイドに用意されているのを見かける。ライラがどんなデッキにも2-3枚積まれるようなメタになればそれもいいだろう。だが現時点ではサイドの枠を割くだけの説得力はない。しかも、召喚酔いが解除されて初めて仕事をするクリーチャーに過ぎない。ボロス天使はショック、連続砲撃、溶岩コイルで露払いをしてから、ライラをプレイするだろう。

 短角獣の歩哨、ハズダーの司法官 少しばかりブレ幅が大きい。それに、いまの1マナ域たちはどれも仕事をこなしている以上、変える必要性がない。護衛はスイーパーへの耐性を与え、レオニンの先兵と鷹と軍団の上陸はライフリンクで群れ仲間を育て、野心家は飛ぶ。

 要するに、このデッキの現状にとても満足できているということだ。苦手なゴルガリはイゼットが追い出してくれるだろう。赤単はTier1と呼ばれるには優秀な低マナ域が少し足りない。

 PT本戦ではイゼットと白アグロが最大勢力となると予想している。どちらも、この白ウィニーなら有利に戦える相手だ。英雄的援軍を採用しているバージョンは、自分が少し押されている状況から一気に捲りをかける能力にはこのデッキよりも長けているが、こちらのほうがライフリンクが多い直接対決においてはあまり有効な戦術ではない。25あるこちらのライフを5にするアタックは、返しで死ぬ状況ではできないからだ。また、育った群れ仲間を突破する手段が議事会の裁きしかない以上、相手はサイド後も議事会の裁きを残さざるを得ない。しかしウィニーのミラーにおいてそれは、マナ交換で損することを意味する。つまり、相手からすればあくまで平均的な働きしかしないカードをサイド後も残しドローすることにかけるか、もしくは群れ仲間1枚に完封されてしまうリスクを取るかの選択肢しかないわけだ。

 そして何よりも征服者の誇りの存在がある。英雄的援軍は4マナソーサリーでいつも同じ仕事しかできないが、こちらは2マナのインスタントでありコンバットで相手がどう動いたかを確認してからプレイできるわけだ。さらに、20枚の1マナを擁するこちらのほうが、相手よりも半歩速い。23枚ランドが入っている相手のほうが、どうしたってフラッドには弱くなる。

 緑をタッチすることも簡単なのだが、そうするだけの価値はないと思われる、ということにも触れておこう。ショックランドとコアランド、開花+華麗のおかげで森を1枚入れるだけで緑マナソースを十分確保するのは容易い。しかし実質ランドカウントである開花+華麗を採用すると土地を16-18枚まで切り詰める必要があり、しかも土地の代わりに開花+華麗を唯一のマナソースとして引いてしまった初手はマリガンせざるを得ない。また、コアランドと開花+華麗の組み合わせという初手もまた許容不可能だ。開花+華麗があっては、3ターン目に軍団の上陸をフリップさせることもできない。

 もしセレズニアをプレイするなら、全く違うデッキにする他ない。クロールの銛撃ちを採用し、アジャニと組み合わせることで弾けるドレイク、オレリア、ライラといったフライヤーたちを次々撃ち落としていくのは悪くない。秋の騎士も不可解な終焉や議事会の裁きといったエンチャント除去に対し素晴らしいサイドボードになりうるが、トカートリには無力だ。最初は魅力的に思えた議事会の騎兵も、溶岩コイルで溢れている今のメタでは活躍は期待できない。封じ込めに対しとても強いということは、覚えておく価値があるが。
 
 今は実験の狂乱がメインに入らないかどうか検討しているところだ。しかし、それをやってしまうと速度が落ち、有利マッチアップの勝率が若干下がってしまいそうに思える。調整中、僕たちはこのカードは前環境のハゾレトに近いな、と何度も言い合った。きっとPTで、僕たちが正しいのか間違っているのかわかるだろう。今のところ、コントロールに劇的に効くサイドボード、という立ち位置に僕個人としては満足だ。

 PTが終わり75枚が確定したらこのデッキのサイドボーディングについても書くつもり(訳註──https://www.channelfireball.com/articles/white-weenie-sideboarding-guide/)だ。GPミルウォーキーに参加するみんなが読めるようにね。

 ご精読をありがとう、そしてPTで僕たちがいい結果を残せますように!

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以上です。個人的にはサイドに残骸の漂着が入っているからこその、あのLSVのブラフにしびれました。

 Channel Fireballより、Brian DeMarsの記事です。原文はhttps://www.channelfireball.com/articles/the-deck-you-read-about-and-the-deck-you-played/。みんな、CFBで買い物しましょうね(僕もします)。
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 今が旬のデッキについてトッププロが記事を書き、きみはそれを読む。さらにそのデッキを実際に回している動画をチェックし、14世紀の修行僧がごとくに手で書き写したサイドボードガイドをお供に、火曜日の夜に地元の店でテストしてみる。そして待ちに待った土曜日には、4-3という結果がきみを待ち受けているという寸法だ。ご冥福をお祈りする。 
 
 今回のお題はギャップだ。ライターがデッキテクを投稿するタイミングと、読者がそれをRPTQやらGPに持ち込むタイミングのズレの話だ。ベストな75枚を準備して戦いに臨むためには、記事をどういうふうに利用すべきなんだろうな?

 マジック界隈には、記事を読むことでライバルに差をつけられるという神話が伝えられている。たしかに、記事を読んでいないやつに比べればそうだろうな。だがきみと同じレベルでマジックをプレイしている(たとえば、PT参加を目標としている)ライバルたちの95%までは間違いなく、同じ記事に目を通している。そうだとすれば、記事を読むだけで差がつく道理なんてあるわけもない。ネットで誰もが読むことができる記事の効能は、記事を読むことさえない大勢から抜け出す手助けにはなるが、逆に言えばその程度なのさ。

 おっと、ディスばっかりで読者をがっかりさせちまったかな。安心してくれ、ここからはちゃんと有益なことを書くつもりだ。すなわち、それじゃあ記事から実際に何を得るのか? と、その方法についてだ。

 さて、トーナメントへの準備の一環としてマジックの記事を読み漁ることは、『白鯨』が課題図書になっている文学講義に出席することに似ている。つまるところ、『白鯨』を読み通すのはあくまで前提条件であり、最終試験でクラスのトップに立つために十分とは言えない。もっとも、あの長い本を読むような真似をしたがらないやつや、ウィキペディアをざっと眺めて済ませるやつよりはいい成績を取れることは間違いないがね。そんな連中は落第が半ば決定づけられているわけで、"読む"だけで明確に成績に差をつけられるのは、せいぜいがそのレベルの相手にだけだ。"優"を取るためには、テキストに基づいて独自研究を行うことが不可欠となる。先行研究に目を通し、『白鯨』が成立するための文化的土壌や、後の作品に与えた影響なんかを考察してみたりな。

 わざわざ『白鯨』を引き合いに出したのは理由がある。『白鯨』とマジックのデッキには共通点──つまり、どちらも途方もないほどの期間、何度も議論や研究の対象になってきたという点──がある。新しい視点やアプローチを見つけ出す、その方法を考えるだけで頭がおかしくなってしまいそうなほどに幾度となく。とあるデッキについてどれだけ理解できているかは論文や試験ではなく、週末の大会にレジストするデッキとプレイで試される、という点は異なるがね。

 直近10年の競技マジックで一番変化したものはなにか? と問われれば、個人的には「平均的なプレイヤーが集められる情報の量だ」と応えたい。競技の場で勝ち残ることは年々難しくなってきている。どのプレイヤーも積極的に情報を仕入れ、週ごとにデッキをアップデートし、周到に準備してくるようになった。簡単には出し抜けない。

 マジックの記事について考え直すきっかけになったのは、数年前に友人のカイル(訳註──Kyle Boggemes。PTファイナリストであり、先日もリミテッドGPを準優勝していた強豪プレイヤー)と交わした会話だった。ハイライトはこうだ──カイル:「ブライアン、もっと記事を読んだほうがいいぜ」俺:「あまり有意義とも思えんがなあ」 正直、コントロールミラーで除去をサイドアウトする理由や『電解』でニコイチを取れる親和の小型クリーチャーを熱く語る記事に飽き飽きしていた頃だった。

 俺:「記事を10本読む時間で、デッキリストを50個は見比べられるだろ。そっちのほうがよっぽど勉強になる」カイルがこれに反論した言葉こそが、俺の考え方を変えたものだ。
カイル:「記事を読むのは自分の勉強のためじゃあない。次の週末、対戦相手がどんなデッキを使ってきて、どうサイドボードしてくるかを知っておくためだよ」

 もしも、「記事を読んで自分のデッキやサイドプラン、テクをアップデートする」ことが"その他大勢"から抜け出すための手段に過ぎないとすれば、次のステップは「記事から得られる知識を前提に次の週末相対することになるであろう対戦相手の手の内を推測し、それに適応する」ことだろう。

 実例を挙げよう。GPデトロイトで俺はジェスカイコンを使ったが、トロンとKCIに対するサイドプランでチームメイトと議論があった。前の週、サイドに『石のような静寂』を取っていないリストが勝っていた。青白コンがそもそも親和にガン有利である。かてて加えて、静寂は通常の親和はともかく、最近流行りの鱗親和に対してはそこまで劇的とは言えない。また、静寂を別のヘイトカード──『儀礼的拒否』、のような──に差し替えることは、トロンやKCIが山のようにサイドインしてくるであろう『自然の要求』を無駄牌に変えてくれる。
 多くの記事で、青白コンが『自然の要求』を躱すヘイトカードを選択したことは称賛されていた。また、トロンもそれに適合すべく『スラーグ牙』のようなカードを(置き物へのヘイトの代わりに)サイドに取るべきだ、という議論もあちこちで起こっていた。

 そんな記事を6~7本読んだあと、サイドプランは自ずから決まっていた。記事のアドバイスに従って『自然の要求』を減らしてくるであろうトロンやKCIの(平均的な)プレイヤーに対して置き物を山程サイドインし、それを『否認』で守るのだ。シークレットテクは記事として世に出された瞬間からシークレットではない。石のような静寂をサイドに取らないという選択は前週の大会では相手の度肝を抜いたかもしれないが、大会が終わりリストが出回って記事が書かれてしまったあとでは、メジャーなプランの1つ以上のものではない。大事なのは記事の情報に基づいて、新しい指針を得ることだ。

 記事も、そこに載っているリストも無価値だ、などと言うつもりはない。立ち位置が良さそうなアーキタイプの、よく練られたリストを探してくることは今日の競技マジックで勝ちたいなら極めて重要である。GPを勝ち残ってPTの参加権利を得るプレイヤーも、プロが直前の火曜日に記事をものした75枚をそのまま持ち込んでその栄冠を手にしていることがままある。だが勝ち続けているプレイヤーが使っているリストはどうか? もしくはGPのトップ8入賞リストを眺めてもらってもいいが、そこで勝っているリストは完全に定番の75枚だろうか。それとも使用者がひと手間加えているか? たぶん後者のほうが多いだろう、それこそが成功の秘訣だ、と俺は言いたい。

 記事という形で衆目の下に晒されることでデッキやテクがよりブラッシュアップされるという側面ももちろんあるんだが、それよりも知られてしまうというデメリットのほうが大きい。少し趣の異なる『観察者効果』(訳註──観察するという行為が観察される対象に影響を与えてしまう、という理論)とでも言おうか、とにかく一度記事になってしまうことの影響というのは果てしなく大きい。記事にデッキリストを載せてそれに大きな反響が返ってくるとき、あるいはトーナメントを席巻するデッキが登場するとき、その成功の大きな要因は知られていないことのアドバンテージだ。相手が何をしてくるか、ケアすべきカードは何か、どんなサイドプランで来るか──そのいずれにも答えが得られないのでは五里霧中と言うべきだろう。そして、その反対──PTのトップ8という華々しいデビューを飾ったデッキが、みんなが一斉に情報共有を行ったあとで鳴かず飛ばずのまま生涯を終える、ってのはよくある話だ。

 俺がデッキビルディングについて意味のあることを学んだのは、ヴィンテージに力を注いでいたころだった。もう何年も前の話になるが、そのころはヴィンテージの記事などほぼなく、情報共有の場はもっぱらフォーラムや掲示板だった。Tier1アーキのそれぞれに、理想の75枚を探し求める集団がいた。けちコンの75枚、精神隷属機コンの75枚、まるで数式を証明するみたいに「これこそがパーフェクトな75枚です」って答えがいずれ得られる、と思ってるみたいにな。
 マジックが素晴らしいのは常に変化するゲームであるからだ。今週の大会ではシークレットだったテクも、次週の大会では手垢が付いている。2週間後ともなれば、誰もがそれに対するカウンタープランを準備してくることだろう。「完璧な75枚」なんてお笑い草だ。記事にも同じことが言える。そこに書かれている内容はあくまで書かれた時点での最高の構築やデッキ選択、プランニングであって誰もがそれを知ってしまえば価値は減少する。

 ネットデッキングを批判したいわけじゃない。現実的に、ネットに転がっているデッキを拾いあげることは、今日の競技マジックの根底をなしている。完コピじゃない75枚を持ち込むプレイヤーの方が少ないだろう。肝に銘じておかなければならないのは、火曜日に世界最高のプロが太鼓判を押した構築も、土曜日には平均点以下の代物に成り果てているかもしれないということだ。記事の内容に問題があるわけではなく単純に、数日間という時間はプレイヤーたちが新しいメタゲームに適合するのに十分すぎるのだ。
 その75枚はすでに知られている。熱心なプレイヤーはその75枚に対し入念なプランを用意している。そんなに練習熱心じゃないプレイヤーも、その75枚に対してくらいは対策してきている。ベストデッキに勝てるデッキというだけで、他との相性差をあまり考慮せずそれを選択してくるプレイヤーは一定数いる。

 同時に、クリエイティブなプレイヤー、チューナーにとってこれは大きなチャンスでもある。75枚完コピが当たり前の時代、本当にライバルに差をつけられるのは独自のテクの発見であり、おなじみのプランへの対策であり、コピーデッカーのほうが独自構築を持ち込むプレイヤーよりも遥かに多いということへの知悉なのだから。次のレベルへの第一歩を踏み出すってのは、なにも銀河系から飛び出して誰も目にしたことがないものを見つけてくることじゃない。週末にプレイしようと考えているフォーマットについて今週書かれた記事を読むこと、そうして得られた知識からトレンドを予測してそれに適応していくことなんだ。

 要するに、記事を読んでリストをただコピーするんじゃなくて、そのリストが以前のものと比べてどう変わっているか、そうした理由はなぜか、メタの移り変わりかたが似たような時期はなかったか、まで考えてみることが重要なわけだ。情報収集によって少し先のトレンドを予測しそれに適応していく技術ってのが、現代マジックのトーナメントシーンでは一番求められているんじゃないか?
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以上です。コピーデッキの是非はときおりSNSなんかでも議論になったりしますが、マジックくらい相手に干渉する手段が豊富なゲームでは相応のリスクある選択ですし批判されるべきではないのかなーと思います。個人的にはデッキを考えるのが好きなので自分で考える派ですが、エターナルなんかはプールが広大すぎるので叩き台はよく拾ってきます。
 Channel Fireballより、Reid Dukeの記事です。原文はhttps://www.channelfireball.com/articles/how-to-smell-blood-and-level-up-your-game/。前回の記事(リード・デュークの思考法① 読みについてhttp://quadrophenia.diarynote.jp/201809031534354118/)をご覧になっていない方は、そちらを先にどうぞ。
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 先週、僕は読みについての記事を書いた。ゲーム中に得た情報から、相手の手札は何かを推測する。その方法とそこに潜む不確実性のこと、様々な状況において不確定な情報に基づいて決断することについての記事だ。

 たとえば劣勢のゲームでは、意識せずともそういう決断をしているというのは理解しやすい。負けそうなときは、巻き返すためにある程度割り切ったプレイが必要になるからね。反対に、自分が優勢なら選択肢は増えていく。その中からもっとも安全なものを選んでいくことが多いだろう。難しいのは競ったゲーム(もしくはどちらかがほんの少し有利なゲーム)で、かつどう転ぶかわからないリスキーなプレイを取る余地がある場合だ。

 相手が"光袖会の収集者"のような継続的にアドバンテージを生むクリーチャーをコントロールしている場合を考えてみよう。だがうまくやれば、相手が収集者をコントロールしている状態でアンタップすることはない。きみはヴラスカの侮辱を持っているからだ。もしくはもっとスマートに、グローリーブリンガーをプレイして督励することもできる。ネックなのは相手も手札とアンタップ状態の土地をもっていること、つまり仮にドラゴンを走らせて除去られればテンポ損は避けられないということだ。さて、どうプレイすべきだろうか。

 こういうとき、ノータイムでグローリーブリンガーをキャストするプレイヤーもいる。常に最大値を狙い、胸がすくようなビッグプレイの快感を愛する人たちだ。また違ったタイプのプレイヤー──トーナメント志向が強いプレイヤーに多いかもしれない──もいる。その人たちは常にリスクを意識しながらプレイして、大振りな呪文をキャストするのは、安全を確信できるときだけだ。さて今回の記事では、この2つの相反するスタイルを両方身につける方法、そして状況に応じた使い分けの方法を一緒に学んでいこう。

僕の失敗談

 長い間、僕はプレイヤーとして後者に属していた。"常に最悪に備えよ"、それが僕の信条だったんだ。安定を何よりも尊び、最優先するのは捲られ目を潰すこと。いつだって相手が何かを握っている想定でプレイしていたし、すべてをケアしていたんだ。
 僕がそういうスタイルを選んだのは、別に驚くようなことじゃない。はじめてPTの参加資格を得るまでに僕は15年マジックをプレイしていた──とりわけ権利を得る直前の4、5年はPTQジャンキーであり、MO廃人と化していた。
 これがどういうことかわかるかい? 率直に言うと、僕はそのころ相対することになった相手の誰よりもキャリアが長く、真剣にマジックに取り組んでいたってことさ。常に格下の相手と当たり続ける日々──安全を追い求めるプレイスタイルが育まれても無理はないだろ? 何しろ、実力勝負に持ち込めば勝てるとわかっているんだ。長いゲーム、均衡した展開になればなるほど腕の差は顕著に現れるもので、そうなれば僕に負けはほとんどなかった。

 そうやって積み重ねた努力が報われて、念願のPT参加権利を得た僕を、新たなる試練が待ち受けていた。最初の5回のPTは鳴かず飛ばずで、初めて参加したチーム・パンテオンのドラフト合宿では、12マッチ中1-11という悲惨な成績だった。どうなってるんだ? GPやMOCSでは相手を上回ることは簡単だった。しかしワンランク上のマジックでは、一つ勝つことさえものすごく困難に思えた。

 問題点はずばり、僕のプレイスタイルにあった。つまり、PTQの上位常連者に勝つためには最適なスタイルは、平均的なプロツアー参加者レベルのプレイヤーと戦うに際しては最悪の代物だってことだ。僕はできるだけ長いゲームをやろうとしていたが、PTでは勝つのは僕ではなく相手の方だった。僕はイージーウィンを拾う方法を知らなかった。アドバンテージを得ていても、それを相手へのプレッシャーに変えるという意識がなかった。どちらが優位に立っているかを見極める目を持っていなかったんだ。

例題:アズカンタの探索
 僕がウィリアム・ジェンセンとスタンダードのコントロールミラーを戦っていると想定してみてほしい。僕らのスキルはだいたい同じ(こんなことは、記事か夢の中ででもないと口が裂けても言えないけどね)くらいだ。後手で開始した2ターン目、僕のハンドは土地とスペルがちょうどいいバランスで、カウンターもあり、アズカンタの探索もありと充実している。
 この陣容なら順調に展開していくことができるし、長いゲームになれば55%くらいの確率で勝てるだろう、と僕は目算する(相手も同程度強いハンドの可能性はもちろんあるが、土地事故やそうでなくとも少し弱めの内容というのもありうるからだ)。

 しかし、もしここで強気にアズカンタを通していくことができれば僕の勝率は劇的に、もしかすると75%くらいにまで上がるだろう。
 ジェンセンは2マナをオープンしていて、さらにデッキには中略が入っていることもわかっている。もし僕がアズカンタをプレイして中略されればジェンセンはマナを有効活用し、僕は後々に取っておけばより安全に解決できたはずのアズカンタを失うことになる。さて再び、50:50というわけだ。

 以前の僕ならこういう場面ではアズカンタをプレイしなかっただろう──相手は中略を持っていると決め込んでね。このスタイルはたとえばデッキ選択の時点で自分が有利だと感じている、あるいは相手よりも自分のスキルが上回っているとか、とにかくゲームが長引けば自分が勝てると確信できる場合には、極めて有効だ。
 しかし今、眼の前に同格の相手が座っている事実、そして自分が導いた勝率とその変動予想に基づけば、アズカンタをここでプレイするのがベストなことに疑問の余地はない。もちろん、最悪の場合はアズカンタをカウンターされ、勝率は逆に減少するだろう。だが目を向けるべきなのは、そのプレイが同格の相手とのミラーマッチにおける50:50の均衡を破る貴重な機会であり、イージーウィンを拾うための最大のチャンスであるということなんだ。

 さて、僕とジェンセンが同じコントロールミラーを1000マッチやったとすればどうなるだろう? 僕らのデッキもスキルも同等である以上、勝率は五分五分になるはずだ。じゃあさらに一つ、条件を付け加えよう──上に書いたような状況に陥ったとき、僕は必ず安全な道を選んでアズカンタを温存し、ジェンセンは逆に、必ずアズカンタをプレイするんだ。さあ、勝率は一体どう変わるか?
 僕がアズカンタを持っている側だった場合。僕は2ターン目にそれをプレイせず、結果としてゲームは長引く。僕らはだいたい同じくらいの比率で勝ったり負けたりする。ジェンセンがアズカンタを持っている側だった場合。僕が中略を持っていれば、結果としてゲームは長引く。僕らはだいたい同じくらいの比率で勝ったり負けたりする。でも僕が中略を持っていなければ? ジェンセンはイージーウィンを拾うチャンスを得ることになる。この条件を加えて1000マッチをこなせば、ジェンセンの勝率は5割を確実に上回る。長いゲームになれば五分五分でも、ジェンセンだけは時々2ターン目アズカンタでイージーウィンを狙えるからだ。
 最初に書いたとおり、この実験では僕とジェンセンのプレイスキルは同等で、デッキとミラーマッチの習熟度も同じ程度だ。たった一つの違いは、時折訪れるチャンスをジェンセンは最大限に活用し、僕は自らフイにしているという点だけ。

 そして僕がPTに参加したてのころ勝てなかった原因も同じく、自分と同格かそれ以上の相手に相対した際にこういうチャンスを活かそうとしなかったことだったんだ。

嗅覚を研ぎ澄ませ!
 失敗を経て、僕は自分のプレイスタイルを一から見直し、血の匂いをかぎつけるために嗅覚を研ぎ澄ました。負傷した獲物が流した血の匂いを辿っていく肉食獣のように、対戦相手が身を護る術を持たないであろう瞬間を見逃さず、そういう好機にアドバンテージをプレッシャーとして押し付け、自分が有利な状況を最大限利用することを学習したんだ。

 だが、上の例でもあったように当然リスクはついて回る。ではいつが仕掛け時で、いつ自重するか。
 見分けるためには、以下の4つの問いを自分に投げかけてみることだ。

 まず、相手が"持っている"可能性はどのくらいか? さっきの例で言えば、中略を相手が持っている確率は、ということだ。これは前回の記事で書いた、読みと確率についての考え方と全く同じだ。相手の手札について、自分は何を知っている? もし相手がなにか対抗策を持っているなら、ここまでの展開でそれを使いそうな場面はあっただろうか? もしその"対抗策"が除去で、いま自分が盤面有利ならば相手はおそらく何も持ってはいないだろう。持っているなら盤面の不利を無視する理由は通常ない。つまるところ相手が今除去を引いたか、自分が盤面を読み違えて本当はそれほど有利でもないか、もしくは予想通り持っていないか、のいずれかだ。
 これも前回書いたけれど、あくまで可能性の話に過ぎないのも忘れずに。でも集められるだけ情報を集めれば、正しい判断を降すのはずっと簡単になるはずだ。

 次に、そのリスクをクリアできればどういう結果がもたらされるか? 通常、これは直接的な勝利かそのまま勝ちにつながるほどの大きなアドバンテージを得る、ということになるだろう。相手はカウンターを持っているかもしれないが、盤面有利な状態でハルマゲドンが解決されれば実質勝利だから仕掛ける──ということだ。

 第三の問いは、仕掛けが失敗したらどうなるか? だ。上の例の逆だね。ハルマゲドンはカウンターされてしまった。ちょっとムカつくし相手にマナを使われてしまったけれど、所詮は1:1交換にすぎないし盤面は自分が有利なままだ。でも、もっと高くつく状況もある──リーサルの全軍突撃をフォグで躱されて、返しで負ける、といったような。要はリスクとリターンのバランス取りで、自分が有利なときはリスクのほうがより重く感じられてくるだろう。

 最後に、仕掛けなかったらどうなるか? 結局、リスクを重視してハルマゲドンは待つことにした。それもいいだろう、勝つのが少し遅くなるだけだしね。でも、その少しの間に相手が神の怒りをトップしたら? もうハルマゲドンは何もしてくれない。築き上げたボードアドバンテージは露と消え、また五分の勝負に持ち込まれてしまう。

 先に書いたように、自分がスキルやデッキ選択で上回れている自信があるなら、慎重なプレイの方が良さそうに思えることが多い。でも競技のレベルが上がるにつれて、アドバンテージを活かすチャンスを逃さないことの重要性はあがっていく。

例題:栄光をもたらすもの

 以上を踏まえて、最初の問題に戻ろう。相手に"光袖会の収集者"がいて、自分はそいつに"ヴラスカの侮辱"で応えるか、グローリーブリンガーを叩きつけるか、という状況だったね。この状況をもう一度、4つの問いで再検討してみよう。

 まず、相手が除去を抱えている可能性はどのくらいあるだろう。グローリーブリンガーにインスタントスピードで対抗できる除去は何種類あっただろうか? 話をシンプルにするため、相手のデッキは黒単、かつ4マナはないと仮定しよう。さて、これで現実的に心配するのは"喪心"の存在だけだ。もし自分がここまで1枚もクリーチャーをプレイしていないのなら、相手が持っている可能性はある。反対に、自分が"光袖会の収集者"をプレイしていてそれが生き残っているとしたなら、相手が持っている確率は限りなく低い、と判断できる。これはかなりの部分が、ここまでのゲーム展開に左右される部分だ。

 リスクとリターンはどうだろう? リターンはかなり大きそうだ。何しろデカい飛行生物を着地させた上にほぼタダで相手のクリーチャーを処理できるわけだからね。相手はグローリーブリンガーへの回答を見つける必要があるうえ、こちらには"ヴラスカの侮辱"も温存してある。でも、リスクもまた大きい。"光袖会の収集者"が生き残るということは、1枚追加のカードを相手に与えてしまうということだ。競ったゲームでは、これは致命傷になりかねない。

 では自重した場合の勝率はどんなものか。盤面はどちらに傾いているか。自分は黒単とのマッチアップに自信を持っているか? ここで侮辱を使うプランを取る場合の最大の問題点だと僕が思うのは、侮辱を使ってしまうとこれから先、本当の(グローリーブリンガーでは触れられない)脅威が出てきたときに対処する手段が残らないということだ。

 結論として、次にこういう選択を迫られたときはどちらをプレイすべきか。残念ながら明確な答えはない。あまりにもケースバイケースだからね。この記事では結論よりも、2つのことを学んでほしかった。一つはこういう状況に陥ったとき、決断を迫られたときに有用な思考のプロセス。そしてもう一つは、こういうときは基本的に、グローリーブリンガーをプレイするようなプレイを選択するのがベストだ、という僕の思考だ。

 そう、ここまで読んでくれたみんなならお察しであろうとおり──少なくとも僕だったらケアすべきカードが"喪心"だけで、相手がそれを抱えている明確なサインもない状況なら、グローリーブリンガーに賭けるだろうね。

 マジックにリスクはつきもので、それと付き合う術を学ばなくてはならない。劣勢や接戦のときもさることながら、ときには有利な状況でも、リスクを取るべき場面は存在する。時たま訪れるイージーウィンの機会に目を向けることができれば、長期的には必ず勝率は上がっていくはずだ。
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以上です。長いですがとても有用な記事だと思います。どうでもいいですが、原文ではウィリアム・ジェンセンは"ウィリアム"と書かれています。日本では"ジェンセン"呼びが一般的なのでジェンセンと訳しておきました。
Channel Fireballより、Reid Dukeの記事です。原文はhttps://www.channelfireball.com/articles/getting-a-read-isnt-enough/

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 カバレージブースで過ごした時間には、多くの学びがあった。プレイヤーとして、あるいは単なる観戦者としての経験値なら少しはあるつもりだけれど、コメンテーターという立場で眺めるマジックのゲームには、また独自の味わいがある。普段とは違う立場から観戦することで全く新しい視点が産まれ、他のプレイヤーに見えていて自分にだけ見えていないもの──もしくは、その逆──に気づくきっかけになるんだ。

 僕が特に興味を惹かれたのは、プレイヤーたちが眼の前の対戦相手について集めようとする情報のことだった。手札、デッキ全体の構成、そこから導き出されるゲームプランなど、その情報は多岐にわたる。特に、一人のプレイヤーが相手の手札を「完璧に読み」切り、その見切りに身を委ねてプレイしたとしか思えないような──たとえば3/3に対してアタックしてきた2/2をジャイグロケアでスルーするとか、もちろんもっと複雑な状況もある──そういう瞬間は大会を通じて何度も見ることができたし、そこにこそカバレージスタッフとしてカバーすべき(そして簡単には伝えられない)ものがあるように思えた。

 実際のプレイの背後には、ゲーム中にプレイヤーが送りあい、受け取り合った無数のシグナルが複雑に絡み合っている。それを紐解いていく過程で僕が発見したのは、そのシグナルへの反応が一人ひとり異なる──かなり異なる──ということだった。判断力に優れた、実力あるプレイヤーでさえ、僕に言わせれば、いつも自らの能力を最大限発揮できているというわけではなさそうに思えた。

 「相手が2/2でアタックしてきた。ジャイグロを持ってそうだな」ここまではいい。ゲームに集中し、集めた情報を組み立て、相手の手札をほぼ推測することができているってわけだ。では、その情報をふまえたベストなプレイは? ここでつまづいてしまう人が多いんだ。

 さて今回は、こういうシチュエーションで僕がどう思考するか、を皆さんにお見せしよう。自分で言うのもなんだけど、いい思考法だと思う。これを知っておけば、ありがちなトラップを躱す手助けになる。そして、こっちのほうがもっと大切なんだけど、無駄にビビって勝つためのプレイから遠ざかってしまうようなこともなくなるはず。なにより、この思考法はプレイスキルに応じてかなり幅広い範囲に応用できる。つまり、昨日マジックを始めたばかりのひとでも使えるし、彼がもっともっと成長して僕よりはるかに上手いプレイヤーになったとしても依然として有用だろうってことだ。

・確実性について

 ふつう、マジックのゲーム中に相手の手札を見ることはできないが、それについての手がかりはゲームが進行とともに手に入る。たとえば、ゲーム開始から2,3ターンめに対戦相手が土地を置かなかったとしたら、手札が何であれ土地じゃないカードでいっぱいであることはわかる。またたとえば、対戦相手がやたらアグレッシブなプランをとってきたときは、相手はライフレースを終わらせるカードを握っているかもしれない、という推測が成り立つ。

 どこかの地点で、こういう手がかりやシグナルが組み合わさって、読みを形成するわけだ。たとえば、こんなふうに──「相手は序盤に1ターンだけ土地が止まったけれど、そこからハンドを1枚だけ残してクリーチャーを全展開して攻めてきている。もし"確実な一撃"みたいなバットリがあるなら前のターンがシャクる絶好のチャンスだった。でもそうしなかった──ってことは、あの残り1枚は"溶岩の斧"だ!」

 相手が1ターンめを山でスタートした瞬間から、"溶岩の斧"の可能性はずっとチラついていたかもしれない。ゲームの展開が可能性を少しずつ高めていく。そして相手が"確実な一撃"を前のターンにキャストしなかったことが、確信へと至らせる。さらに何ターンか経つうちに、相手が何度もライフメモをチェックしたりすれば、その確信はさらに深まるだろう。

 さてここまで書いてきて、僕は注意深くある言葉を避けてきた。"知る"、ということだ。ゲーム中、相手が"溶岩の斧"を持っている(あるいは持っていない)ことを"知る"ことができる瞬間はない。じゃあいったい、どの地点から"溶岩の斧"があるものとしてゲームを進めていくべきなのか? 自分が6/6、相手が2/2をコントロールしている場合ならどうだろう。この場合、ダメージレースをしてもいいものか、それともライフを守っていくべきか?

 難しいのは読み自体ではなく、読みに基づいて適切なゲームプランを採ることだ。一般論としては、容易いことに思える。たとえ自分のライフが9で相手が18だったとしても自分がパワー6で相手がパワー2なら殴り合いをするべきだ。アグレッシブな赤いデッキには火力が入っていること、ゆえにライフを5まで落としてしまうのは得策ではない、というのもこれまた簡単に判るね。でもこの2つの考えが絡み合ったとき、複雑で面白いシチュエーションが産まれるんだ。

・可能性について

 ぎりぎりの決断をするときの助けになるように、僕は相手の手札が何であり得るか、確率を割り振るようにしている。もちろんこの数字は、時々刻々と変わっていく。

 相手が1ターンめに山をおいてきた瞬間には、確率はシンプルだ(そして、そこまで重要じゃない)。「経験から言って、赤いデッキの30%は"溶岩の斧"を1枚デッキに入れている。相手は7/40枚のカードを引いているわけだから、手の内にある確率は5%くらいか」ターンが経過して、相手が"溶岩の斧"を持っていそうなプレイをする(加えて、もちろん相手が引いたカードの枚数も増えている)。僕が割り振る確率も、それにつれて上昇していく。気をつけてほしいのは、スタート地点である「30%の赤いデッキが"溶岩の斧"をプレイしている」という考えにとどまり続ける必要はないということだ。相手が実際のゲーム中に取った行動に基づいて、最初の計算はアップデートしていくべきだ(結果として30%を上回る場合も多々あるってこと)。

 しかし、限りなく近づいたとしてもその数字は100%にはならない。これが可能性に基づいてプレイすることのキモだ。神の目線では、相手の手札が不確定、ということはありえない。"溶岩の斧"を持っているか、いないかは確定している。そして完璧な世界でなら、いま相手が持っているのかどうかを解き明かすことがきっとできるのだろう。でも決断する人間の立場から見ると、相手が"溶岩の斧"を持っていることが確定するのは、相手がそれを自分に投げつけてきた瞬間だけだ。

 大切なのは、思い上がらないこと──いつも、自分が間違っているかもしれないと考えること。たしかに、同じフォーマットをプレイすればするほど経験値は溜まっていき、スキルは上がり、予測の正確性は増すだろう。でも少なくとも僕は、100%の確信なんて抱けたことがない。結局、相手は"溶岩の斧"を「引けたらいいな」と思いながらプレイしているのかもしれない。もしくは、ただ単に僕が状況を見誤っているのかもしれない。相手は置ききれない土地を握っているだけなのかもしれない。

 さてさて、相手が"溶岩の斧"を握っている可能性が75%くらいはありそうだと判断できたとしよう。相手のライフは18、僕は9。この状況、僕は6/6でアタックして相手の2/2とダメージレースをするべきだろうか。

 次のステップは、その場面に至るまでの文脈を読むことだ。見えていない火力をケアできる状況か否か? もしかしたら、僕はそのマッチアップを不利だと感じていて、多少のリスクは取るべきだと思っているかもしれない。 攻撃を自重した場合、どうなりそうか? もしかしたら、僕は自分のデッキとスキル的に、消耗戦に持ち込めば勝てるだけの自信はあるのかもしれない。はたまたそうではなく、僕は相手が飛行クリーチャーや追加の火力をドローすることを恐れるべきかもしれない。じゃあ反対にアタックしたらどうなる? 打撃は与えられるが、相手が速攻クリーチャーを引いたらどうする? そもそも僕の読みが間違っていて、相手が持っているのは火力じゃなくて速攻クリーチャーだとしたら?

 強いてこの状況に答えを与えるなら、僕は一度だけアタックしてそれからもう一度計算する。もしお互いが何も引けずに盤面が変わらなければ、僕は自分の読みを信じて今度はアタックしない。そして盤面に変化が起こせるのを待つだろうね。でもこの答え自体はどうでもいい。大事なのは考え方だ。

 この記事を書くきっかけになったカード──それは"残骸の漂着"だった。カバレージを取るうちに、スタンダードで交わされる攻防の多くで、このカードの存在が重要な役割を果たしているのが明らかになったからだ。

 例を挙げよう。

 僕はスタンダードのゲームをプレイしている。リソースは2体のグローリーブリンガーのみで、相手は忠誠度が5のテフェリーをコントロールしているうえに4マナオープン、ライフも潤沢にあるという状況だ。相手は"残骸の漂着"を構えていそうだ……さて、どうプレイすべきだろうか?

 答えに近づくために、まずは自分がXレイメガネを掛けていて、対戦相手の手札を正確に把握できていると仮定してみよう。

 そこに漂着がなければ、アグレッシブなプレイをすべきだ。すなわち、ドラゴン2体でテフェリーにアタックするのが最善手。
そこに漂着があれば、より慎重なプレイを選択することになる。全くアタックせずに強迫を引くまで待つか、もしくは1体だけでテフェリーにアタックして残骸の漂着を使わせるかだ。

 次のステップとして、「相手は残骸の漂着を構えている」と推測している、という状況が意味するのはどういうことか、そして残骸の漂着が実際に手の中にある確率、について考えてみよう。僕に使える情報はこんなところだ。
「青白コンは普通3枚残骸の漂着を採用している。そして、相手は結構な枚数のカードを引いているし、グローリーブリンガー2体に対してテフェリーを展開してきた。前のターンのプレイの仕方にも迷いが感じられなかった。練習のときにこういう状況は何度もあったが、そのとき対戦相手は漂着を握っていた」。
 うん、相手は残骸の漂着を持っている、僕はそう思う。

 でもそれは僕には知り得ないことだ。残骸の漂着はアズカンタでサーチされたわけではないし、ハンデスで確認してもいないし、相手がうっかりテーブルに落としたわけでもない。つまり不確定なままで僕は決断を強いられるということだ。そして、僕はいつも正しい判断をくだせるわけではない。もしかしたら、練習のときは相手が常にぶん回ってなんでも持ってる状態だったかもしれない。たとえば前の2ラウンドを負けたことで弱気になっていて、判断基準がブレたりすることだってあるだろう。相手の強気な態度はミスリードかもしれない。

 きみがこういう状況に陥ったときには、きみ自身の判断基準から独自の確率を導くことになるだろう。ほんの一例として僕の数字を挙げるならこの状況、9割がた相手は漂着を握っている、と言える。

 さて、ではその読みを念頭に置いて、どうプレイするべきだろう。もしもアグレッシブなプレイを選んで漂着がなければ、テフェリーを処理することができる。もし漂着があれば、このゲームはほぼ負けだろう。もし慎重なプレイを選べば、とりあえずその場で負けが確定するようなことはなくなるけれど、相手はテフェリーの忠誠度を残した状態でアンタップできることが保証される。さらに、もし漂着があるならば、それは依然として手のうちにある。

 このマッチアップでは経験上、相手にライフが潤沢にある状態でテフェリーが1ターン以上生存したゲームに勝ち目はほぼ(9割5分、とでもしておこう)ない。このケースでは、相手が漂着を持っていたら負けだ。慎重なプレイを選べば、持っていなくても負けることになる。

 結論として、ここで僕はアグレッシブなプレイを選択するし、読者もそうすべきだ。状況がいかに悪いかは数字が物語っている。僕に残された勝ちのチャンスはドラゴン2体をテフェリーに突っ込ませ、自分の読みが間違っていることを──相手が漂着を持っていないことを──祈るのみだ。

 ちょっと不自然だけれど、今回の例では自分の読みを裏切ることが最善手となるわけだ。こういう状況は、どう転んでも悲しい結末をもたらす。読みが合っていれば漂着を撃たれて負け。うまくアタックが成功してテフェリーを処理できたとしたら、自分の読みが間違っていたことが証明されるんだからね。

 もし僕がMOをプレイする動画を観てくれたことがあるなら、僕が相手の手札を一点読みする姿を目にしたことがあるかもしれないね。相手が"至高の評決"を持っていそう、と僕は疑い、その疑惑はゲームが進むに連れてどんどん深まる。よし、あの残り一枚のハンドは"至高の評決"以外ではありえない! こういう読みは当たっていることもたまにはあるけれど、相手がプレイした最後のカードはぜんぜん違うものだった──"至高の評決"なんて影も形もない──ことも多々ある。

 状況がどうあれ、勝つための最善手がクリーチャーを全展開することと確信できていれば、相手の手札をどう読んでいようと僕はそうプレイする。自分のマジックプレイヤーとしての価値は、相手の手札を見透かす能力にあるのではないと思っているからね。でももちろん、鋭い読みができれば嬉しいけど……ともかく、全プレイヤーが目指すべきゴールはすごくシンプルに言える。どんな不確定情報やゲームの状況の前でも、常に勝利への最善手を取り続けることだ。

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以上です。続きものと思っていなかったんですが、今週もデュークがCFBに記事を書いています。そちらも翻訳するつもりですのでタイトルに①をつけてみました。いつまでも②が上がらなかったら察してください。

 TCGPlayerより、ウェスコー兄貴の記事(http://magic.tcgplayer.com/db/article.asp?ID=14495&writer=Craig+Wescoe&articledate=3-9-2018)の翻訳です。原文も御覧ください。

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 3月2日から4日にかけて、MOCS決勝が行われた。馴染みのない人のために噛み砕いて言うと、世界選手権のMOバージョンみたいなものだね。参加するのは今年が初めてだったけれど、9位という成績を残すことができた──トップ4まで、あと1勝という位置だった。

 持ち込むデッキを決めてから、そのデッキを100マッチ以上回して大会に臨んだ。モダンラウンドの成績は4-4で、トロンがまったくいなかった以外はほぼ予想通りのメタ分布だったね。これからのモダンGPはこの大会の結果よりもMOリーグの結果に近いメタになっていくはずだから、もし自分が参加するとしても今のリストから1枚たりとも変えたりはしない。普段は大会のあとで1枚くらいは入れ替えたくなってるものなんだけど、今回は例外。ジャンドのシェアが10%を上回りそうだっていうのなら話は別だけど。

青白デスアンドタックス
クレイグ・ウェスコ―

3 聖トラフトの霊
4 レオニンの裁き人
4 スレイベンの守護者、サリア
3 修復の天使
4 呪文捕らえ
3 ミラディンの十字軍
2 無私の霊魂
1 異端聖戦士、サリア

4 霊気の薬瓶
4 血清の幻視
4 流刑への道
1 清浄の名誉

4 神聖な泉
4 幽霊街
4 地平線の梢
4 金属海の沿岸
3 アダーカー荒原
1 廃墟の地
2 平地
1 島

4 ブレンタンの炉の世話人
1 聖トラフトの霊
1 墓掘りの檻
1 ミラディンの十字軍
1 反射魔道士
1 安らかなる眠り
3 石のような静寂
3 外科的摘出

構築中に最後まで迷ったのは、アダーカー荒原と地平線の梢のどちらを4枚にするかだった。結局、青マナは12枚で十分供給できるし、ジェイスや血編みデッキに対して後半リソースになってくれる地平線の梢を優先したわけだけど、この判断は正解だったと思う。

このリストを目にしたみんなの反応からして、血清の幻視が採用されている理由が一番理解が難しい部分のようだから、まずはそこを解説しておこう。このデッキはまず、レオニンの裁き人かサリアを2ターン目に着地させることを第一目標としている。それを達成させるためにベストなカードが、1ターン目の血清の幻視なんだ。アンタップインする青マナソースが12枚準備されていることを考えれば、初手にある血清の幻視を1ターン目にキャストできる確率は高い。また序盤以降、サリアが戦場にいる状態で血清の幻視をプレイするのは、クリーチャーを全てプレイしてしまってハンドが枯れているときだけだ。そのころには土地が余っているだろうし、それをリソースの確保に使うのはちょうど地平線の梢をサクるのと同じで、どのみちこのデッキがゲームのその段階でやりたいことだ。つまり、血清の幻視は最序盤にはセットアップの役に立ち、後半にはリソースを再供給してくれるというわけ。血清の幻視の存在が、青を足すことの大きな理由の一つだ。


呪文捕らえとトラフトの存在も、青を足す大きなあと押しになった。トラフとは青絡みの(神ジェイスを採用した)コントロールに対して強く、トロンやコンボデッキに対しては強烈なクロックを刻んでくれる。呪文捕らえは、太陽の王冠や忘却石、至高の評決といったカードに対する素晴らしい回答になる。清浄の名誉があれば、稲妻で落ちなくなるしね。

 青いパーツ以外はおなじみのデスタクパッケージだ。マナを縛ってスピードダウンさせながら、素早いクロックをかけていく。展開と妨害の両立を可能ならしめているのは、霊気の薬瓶だ。速攻を基本としているけれど、4枚ずつ採用された血清の幻視と地平線の梢のおかげで消耗戦もこなすことができる。クリーチャーたちはどれも単体でしっかりクロックを刻んでくれるし、除去を躱しブロッカーを飛び越えていくこともできる。防御にも攻撃にも使えるカードばかりだから、相手に合わせて立ち回れる柔軟性があるんだ。

個別マッチアップ/サイドボードガイド


4 ブレンタンの炉の世話人
 バーンにはもちろんのこと、稲妻や神々の憤怒をプレイしてくるすべての相手に対して強い。スケープシフト、バーン、ジャンド、親和(鞭打ち炎と感電破)、さらに稲妻を擁するジェイスコントロールデッキに対してサイドインする。

3 石のような静寂
 
 トロン、親和、ランタン、アイアンワークスコンボ、人間、マーフォークに対してサイドインする。その際、霊気の薬瓶は抜いておくこと。

3 外科的摘出
 スケープシフトやトロンに対して、土地破壊と組み合わせてキーとなる土地を根絶やしにするのに使う。ホロウワン、ドレッジ、リアニメイトなどの墓地デッキに対してももちろんサイドインする。

1 墓掘りの檻
 墓地デッキと集合した中隊デッキに。墓地デッキだけど、リビングエンド相手には入れてはいけない(止まらないからね)。もしもジャンドや死の影が増えて、ホロウワンや中隊が減ると読んだのなら、この枠は2枚めの安らかなる眠りに入れ替えても良いだろう。

1 安らかなる眠り
 墓地デッキと、タルモゴイフデッキ相手にもサイドインする。個人的にはグリクシスや渋面の溶岩使いをサイドインしてくるであろう相手にはサイドインしていいと思っている。バーンも含めてね(灼熱の血で本体ダメージを受けずに済むというボーナスもある)。

1 反射魔道士
 追加の除去が欲しいマッチアップで入れよう。修復の天使とのシナジーは最高だ。

1 ミラディンの十字軍
 ジャンド、ボーグル、ホロウワン、死の影、アブザンカンパニーといった緑か黒絡みの相手ならどんなときでも仕事をしてくれる。

1 聖トラフトの霊
 ジェイスコントロール、トロン、スペルを中心としたコンボデッキ相手に。先手ならあらゆるマッチアップで入れてもいいくらいだ。


 さて、それではよく発生するマッチアップについて、プレイ方針とサイドプランをみていこう。

・ジェイスコントロール

グリクシス

+4 ブレンタンの炉の世話人
+1 安らかなる眠り
+1 ミラディンの十字軍
+1 聖トラフトの霊

-4 霊気の薬瓶
-1 血清の幻視
-2 流刑への道

ジェスカイ

+4 ブレンタンの炉の世話人
+1 安らかなる眠り
+1 聖トラフトの霊

-1 血清の幻視
-2 流刑への道
-3 ミラディンの十字軍

青白コントロール

+1 聖トラフトの霊
+1 ミラディンの十字軍

-2 流刑への道

青赤コントロール

+1 聖トラフトの霊
+4 ブレンタンの炉の世話人

-3 ミラディンの十字軍
-1 異端聖戦士、サリア
-1 流刑への道 (氷の中の存在を採用していない相手の場合)

 グリクシス相手の場合、コラガンの命令がある以上霊気の薬瓶は他のコントロール相手のときよりも信頼度は下がる。それ以外のコントロール三種に対しては、薬瓶はデッキ最高のカードだ。カウンターを躱し、相手のエンドにクリーチャーを着地させ、毎ターン2回行動を取ることで莫大なマナアドバンテージを稼いでくれる。また、薬瓶がある限り更地でもジェイスにプレッシャーをかけられる。

 総じて、コントロール相手にはかなり有利といえる。テストでは、15マッチを通じて勝率は73%だった。本戦では1勝1敗。トラフトの呪禁と、無私の霊魂のスイーパーへの対応がこのマッチアップでは大きい。トラフトでアタックする際には瞬唱の魔道士に注意すること。また赤絡み相手には、清浄の名誉が呪文捕らえを稲妻や神々の憤怒の射程圏外へ逃してくれることを憶えておこう。

トロン

+3 外科的摘出
+3 石のような静寂
+1 反射魔道士
+1 聖トラフトの霊

-2 流刑への道
-1 清浄の名誉
-1 ミラディンの十字軍
-4 霊気の薬瓶

 テストを通じて、もっとも勝率が良かったマッチアップだ。11マッチやって勝率は91%。しょっちゅう接戦になるんだけれど、最後には勝っている。こちらはトロンを多角的に攻めることができる──ウルザ土地が集まることを防ぐ幽霊街と廃墟の地、レオニンの裁き人は単体でも探検の地図や森の占術を止めてくれるが土地破壊と組み合わさればゲームエンド級だ。呪文捕らえはクロックを追加しつつ土地サーチや忘却石を止めてくれる。トラフトは最速のクロックで、修復の天使はカーンに狙われたクリーチャーを守りつつ、返しでカーンを落とせる。両サリアはトロンを大きくスピードダウンさせ、無私の霊魂は忘却石を「カウンター」してくれる。流刑への道はワームとぐろエンジン、世界を壊すもの、ウラモグへの素晴らしい回答になる。

 サイド後は石のような静寂で忘却石と歩行バリスタを始めとする相手のアーティファクトをすべて無力化できる。土地破壊後の外科的摘出が決まれば、トロンランドが絶対に揃わない相手はフェアにプレイするしかない。フェアなゲームならば、こちらのほうが上回る。

ジャンド

+4 ブレンタンの炉の世話人
+1 安らかなる眠り
+1 聖トラフトの霊
+1 ミラディンの十字軍
+1 反射魔道士

-4 霊気の薬瓶
-4 呪文捕らえ

 環境トップに位置するデッキたちの中では、もっとも難しいマッチアップだろう。テストでは8マッチを通じて勝率はちょうど50%だったが、本戦では1度当たって敗れている。五分~微不利といったところかな。相性差を改善するならば無私の霊魂と3マナサリアを前兆の壁と入れ替えるのが良いんだけれど、そうするとコントロールやトロン相手には少し弱くなるのが難点。
 血編み髪のエルフに対してサリアが非常に良い働きをしてくれる。先制攻撃でアタックを防ぎ、続唱されたスペルがクリーチャーでなければ追加のマナを要求するのだ。ミラディンの十字軍は稲妻以外の全呪文に対して強い。ミラディンの十字軍を着地させる前に稲妻を使わせるか、無私の霊魂かブレンタンの炉の世話人で守れる形にしてから着地させたいところだ。呪文捕らえはだいたいプレイされたターンかその次には死ぬから、あまり仕事がない。素直にサイドアウトしよう。薬瓶もコラガンの命令で割られてしまうし、基本的に消耗戦になるこのマッチアップでトップデッキしてしまうと最悪なので抜いてしまう。清浄の名誉は(メイン戦では)呪文捕らえを稲妻圏外まで逃がし、サイド後はサリアや無私の霊魂を最後の望み、リリアナから、ミラディンの十字軍を渋面の溶岩使いから、そしてレオニンの裁き人をコラガンの命令から守ってくれる。だから決してサイドアウトしてはいけない──そうしたくなる気持ちもわかるけどね!

バーン

+4 ブレンタンの炉の世話人
+1 安らかなる眠り
+1 反射魔道士

-3 ミラディンの十字軍
-1 異端聖戦士、サリア
-1 地平線の梢
-1 修復の天使

 テストでは6マッチを通じて83%の勝率、本戦でも1度当たって勝利しているマッチアップ。数字ほどガン有利だという感じはしないけれど、有利には違いない。相手は土地を切り詰めていて半分はフェッチだから、レオニンの裁き人が色マナ(白マナ)を縛ってくれるだろうし、幽霊街を引けば相手は土地が1枚以下の状態で闘うことを強いられるだろう。同じ理由でサリアも強い。無私の霊魂、呪文捕らえ、修復の天使がこいつらを守ってくれる。流刑への道は大歓楽の幻霊を始めとしたクリーチャーたちへのいい回答になるだろう。

 サイド後は、ブレンタンの炉の世話人が最高に輝く。地上を止め、火力をカウンターしてと大活躍だ。軽減に対応しての頭蓋割りには気をつけておく必要があるが、そこでテンポを取れるのはどのみち大きい。


 ボーグル

+1 ミラディンの十字軍
+1 反射魔道士

-1 異端聖戦士、サリア
-1 清浄の名誉

 ボーグルに対してのプランを用意していた参加者は他にいなかったような気がしてならない。テストでは5マッチで勝率は60%、本戦では1度対峙して倒している。テスト段階で撹乱する群れを採用していた時期には1ターン目のぬめるボーグルをピッチで打ち消すことができて更に有利だったんだけれど、それなしでも概ね有利だろう。バーンと同じくスペルまみれで、バーンと同じく土地を切り詰めているボーグルはサリアに弱い。呪文捕らえはよく夜明けの宝冠を捕らえている。呪禁もちについてしまうと非常に対処が難しいこのカードを相手がプレイできるなら、呪文捕らえは常に構えていなければならない。霊気の薬瓶があれば構えつつ展開できるので、だいぶ楽になるだろう。

 ボーグルを狙い撃つサイドカードは用意していない。メインボードの構成的に十分有利だからね。ミラディンの十字軍のプロテクションは、ブロックが可能なうちは地上は止め続けられることを意味している。そして相手側は十字軍を止められない。除去を全て残し、反射魔道士をサイドインする理由は相手が呪禁クリーチャーを引けずにコーの精霊の踊り手にオールインするプランを採ってきたときに負けないようにするためだ。ドライアドの東屋には幽霊街でも対処できるが、踊り手には流刑か反射魔道士が必要なのだ。

ホロウワン

+4 ブレンタンの炉の世話人
+1 安らかなる眠り
+3 外科的摘出
+1 墓掘りの檻
+1 ミラディンの十字軍
+1 反射魔道士

-3 聖トラフトの霊
-3 修復の天使
-4 血清の幻視
-1 地平線の梢

 後手の場合は血清の幻視を残して薬瓶を抜いても良いと思うけれど、どちらが正しいか確信が持てずにいる。先手ならば薬瓶のほうが絶対に強い。

 テストでの勝率は5マッチを通じて40%、本戦では最終戦を落とした相手だ。正直当たりたくない相手だが、勝てないわけではない。BR型とRG型があるが、BRのほうがキツい。どちらの型が相手にせよ墓地対策は十分取ってあるし、ミラディンの十字軍も仕事はしてくれるだろう。フェッチ+ショック、通りの悪霊のサイクリングで相手はどんどんダメージを受けるから、実質こちらが削らなければならないライフは12点くらいであることが多い。先制攻撃がとても便利で、流刑への道が時間を稼いでくれるだろう。相手がベストドローをしてきたら、こちらがやれることは多くない。しかし90点くらいのドローであれば闘いようはある。また下振れも発生しうるデッキなので、サリアや裁き人がロックするパターンも含めれば、結構な勝ちを拾えるだろう。


死の影

+1 聖トラフトの霊
+1 安らかなる眠り
+1 反射魔道士
+1 ミラディンの十字軍

-4 血清の幻視

 本戦には死の影はいなかったけれど、テストでは5回当たって勝率は40%だった。五分のマッチアップといえる。最後の望み、リリアナやイゼットの静電術士避けに清浄の名誉は残しておく。ケアするべきなのはミラディンの十字軍をヴェールのリリアナで処理されないようにすること、そしてティムールの激闘だ。頑固な否認でカウンターされない呪文捕らえが鍵となる呪文を無効化できれば有利になる。問題は相手のハンデスでプランをズタズタにされてしまうことだけれど、デッキの構成上トップに有効牌がある可能性は高いのでまあなんとかなるだろう。特に先手ならば、レオニンの裁き人とサリアでゆっくりしたゲーム展開に持っていける。

 テストでは40種類近くのデッキと対戦した。その全てを個別に取り扱うことはできないけれど、負け越したものがなかったということだけは伝えておこう。
 
 ポンザ、トライバルズー、青緑のジェイス/タルモデッキに対しては67%、人間、赤緑エルドラージ、マーフォークとナヤには50%、そしてスケープシフト、リビングエンド、ドレッジ、マルドゥパイロ、エスパーオブゼダート、グリショールブランド、赤緑信心、8ラック、魂剥ぎ、感染、
エルドラージタックス、ゴブリン、黒単氷雪、スゥルタイには100%の勝率だった。
親和とはプレイしていなかったが、五分か少し有利程度の相性だろう。

 ほぼすべての相手に対して最低でも五分の勝負ができ、かつ対応しすぎないデッキを探しているのなら、このデッキがおすすめだ。これが現在のメタゲームにおいては、デスタクのバリエーションで一番優れていると、自信をもっているよ。

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以上です。このリストを目にしたPVがツイッターで思いっきり眉をひそめていて笑いました。でも面白そうなデッキなのでコピーして回してみたいです。
CFBより、MOでのドラフトリーグ導入に関する記事の二つ目にして先の記事へのアンサーです。元記事(http://www.channelfireball.com/articles/draft-leagues-are-great/)もぜひ。

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 MOで新しく始まるドラフトリーグは、ドラフトのいいところとリーグのいいところをカップリングしたものだ。リーグの利点はとどのつまり、1マッチだろうと3マッチだろうと、空いた時間にプレイできることに尽きる。従来の形式のドラフトも楽しかったが、タイミングの問題はいつもつきまとっていた。構築リーグの手軽さを知ってしまった人間としては、ドラフトリーグで最初のデッキをドラフトするのが待ちきれないよ。

 さて、通常のブースタードラフトがもつ機微の全てが、リーグにも継承されているのかと問われれば、とても「そうだ」とは答えられない。同僚のサム=パーディはそのマイナス面に関する記事を書いている。だけど、多くのドラフトプレイヤーが見落としているのは、8人ドラフトだろうとリーグドラフトだろうと、デッキをドラフトするということは結局のところ協調する訓練が大部分なんだということだ。このことは、8人ドラフトでは直感に反しているし、ドラフトリーグというフォーマットでは極めて直感的だ。そしてこの(あくまで感覚的にすぎない)違いが、リーグ導入に関する以下のようなネガティブな反応を引き出している。

・パックの格差がどうしようもない
 "ドラフトするパックそのものが弱いこともある。そんなときに強いパックからドラフトしたデッキとペアリングされるのは不公平だし、それはドラフトというよりシールドだ" こういう認識は事実にもとづいているとはいえない。ドラフトする際に目にするパックの強さの平均値(そして、色ごとの強さの平均値)は、ドラフトごとに必ず異なっている。たしかに弱いパックと呼ばれるものは存在するし、それによって卓全体のデッキのレベルが他の卓よりも低くなることだってある。でも、"パックの強さの差は存在する"という事実のみからは、結論は得られない。その強さの差が、ドラフトにどの程度影響するのかが争点だ。

 僕の考えでは、パックの強さの影響というのは微々たるものだ。通常のドラフトでも、テーブルの片側のパックだけが強くて結果的にそちら側のプレイヤーのデッキの完成度が高くなる、ということはしょっちゅう起こる。8人ドラフトで反対側に座っていたプレイヤーと対峙したとき、もちろん二人は同じパックを見ているわけだけど、そのタイミングが違いすぎる。相手にとってのゴッドパックが自分にとってゴッドパックであるとは限らないわけだ。それなのに、1番席に座っていたプレイヤーと5番席に座っていたプレイヤーが対戦するとき、"シールド戦みたいに格差がある"というような言い方をする奴はいない。この点において、シールドリーグと通常のシールドには大きな違いはないんだ。
 
 そもそもパックの強さというのはそれぞれ無関係で、独立したものだ。これは言葉の問題で、"このドラフトは弱かった"という言い方をすると、まるで強いドラフトとそうでないドラフトがあるかのような感覚に陥る。実際にはドラフトごとに数多くの(強さのまちまちな)ブースターが開封される以上、カードの質というのはそれほどの差異を生み出さない。

・ヘイトドラフトや、トリックの記憶が機能しない
 ドラフト中に流したスイーパーやバットリを記憶するのが重要なスキルで、これがリーグでは役に立たない、というのは事実だ。また、リーグでは自分のデッキにとって致命的なカードをヘイトドラフトできない(しても意味がない)というのもその通り。そう、パックの強さの問題と同じく、これも影響があるのは間違いないんだ──では、その影響というのはどの程度のものなのだろうか?

 世界一のドラフトプレイヤーにとっては、記憶やヘイトによってアドバンテージを得る機会はとても多いだろうけど、それがドラフトの決め手になることはそう多くない。一般的なプレイヤーに至っては目に見える効果を得られることはまずないだろうし、あったとしてもほんの時折、労力に見合わないごく小さなアドバンテージが得られるだけだ。

 通常のドラフトでヘイトドラフトが過大評価されていると思う理由は、要するにそれが機能するシチュエーションがごく限定されているからだ。何しろ、ヘイトしたカードが相手のデッキに採用され、そのプレイヤーとマッチングされ、相手がそれを引き、かつそのカードの価値がもうプレイされているカードよりも高いという場合においてのみ、ヘイトは機能する。そういう状況になる可能性は、同じ番目で自分にとって有効なカードを選んでそれが役に立つ可能性に比べればかなり低い。

・普通のドラフトでは協調しつつ完璧なデッキを組めば3-0は容易いが、リーグではそうはいかない
 これも、通常のドラフトで過剰に捉えられ、ドラフトリーグについて考えている人々をつまずかせている問題だ。"完璧なデッキ"──シナジーに満ち、23枚のソリッドなスペルと理想のマナカーブ、こういうデッキは思ったよりも3-0しないもの。土地事故は常につきまとい、立ちはだかるのは自らの完璧なデッキを組み上げた対戦相手、ボムが理不尽にゲームを終わらせることだってある。これがリミテッドだ──何が起こるかわからない。

 もし、「これから参加する全てのPT、GP2日目のドラフトで自分は常に卓の中で2番目に強いデッキを組むことができるが、代償として自分の下家が最強のデッキを組む」ことが提案されたとしたら、躊躇いなく、それを受け入れるだろう。
 ドラフトの卓に着いたとき、僕はそれを目標としている(もちろん実際には、自分が最高のデッキを組み上げる可能性を排除する必要はないわけだけど)。本来、隣りに座っている人のデッキを強くしようとする義理はないが、ドラフトでは協調こそが全てだ。自分のデッキの質は、上下のデッキの質と当然相関する。色やアーキタイプを取り合いはお互いに不利益しか産み出さない。最高のデッキを組むことばかりに頭が行って、この協調と取り合いという視点を失ってしまうのは大きなミステイクだ。

 ドラフトリーグでは、協調が大事だということは通常のドラフトよりも明確で、それを無視することのダメージもより大きそうに思えるが、上のレベルに行けば重要性というのは8人テーブルだろうとリーグだろうと変わらない。つまり、ここでもまた、リーグも従来のドラフトも変わらないって結論が導き出せるわけだ。

 ドラフトリーグを諸手を挙げて歓迎しようじゃないか。リーグじゃいい練習はできないし、楽しくないなんて意見に耳を傾ける必要はない。そういうことを言う人間は、影響の大きさを計り間違えているんだ。
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以上です。読んでいただければわかると思いますが、この2つの記事は徹頭徹尾同じことしか書かれていません。リーグ制云々への興味よりもむしろ、このコインの表と裏のような記事の性格が面白くて、訳してみました。ドラフトの本質のようなものを理解する助けになれば幸いです。
 
 CFBより、MOでのドラフトリーグ導入に関する記事です。元記事(http://www.channelfireball.com/articles/the-trouble-with-draft-leagues/)もぜひ。

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 今はドラフトの決勝戦で、青白を駆る対戦相手は後攻の5ターン目をただ土地を置くだけで終了した。相手は先の2ターンも、クリーチャーをプレイしていない。ここで、ピックを思い返してみる──自分の2つ下家に座っていた相手は、何を持っているだろうか。3パック目では開封した罪人への急襲を下に流している。赤黒をやっていたからだ。月銀の一撃も同じく。それに、嵐乗りの精霊が遅くまでぐるぐる回っていた。というわけで、決断する。このターンは血統の呼び出しをプレイし、能力を起動してマウアー地所の双子をマッドネスできるだけのマナを立ててエンドするに留める。ハンドの炎刃の天使は温存するとしよう。相手の急襲は2-2交換に終わり、相手のボムを躱したことで勝利はぐっと近づくことになる。

 でも、言うまでもなく、卓を超えてのランダムペアリングが行われているなら話は別だ。相手のドラフトについて何のヒントもない状態で、神話レアを考慮しながら動くような真似ができるものだろうか? 相手はどんなカードだって持ってる可能性があるというのに! ランダムペアリングのドラフトは、従来のドラフトと全く違う成り立ちを持ち、全く異なるものをプレイヤーに要求する。そして、このペアリング方法は、出来る限り避けるべきだ。

・パックの強さの問題
 ドラフトのテーブルに着いたとき、目標とするのは卓内で一番強いデッキを組み上げることだ。卓内で、というところがポイントになる。というのもドラフト最大の美徳は、その卓に出回るカードのパワーレベルを気にする必要がほとんどない、という点にあるからだ。卓の全員が同じボートに乗り込んでいるわけで、ごく少ないファーストピックやボムレアを除けばパックの強い弱いは問題にならない。しかしランダムペアリングでは、パックの内容によってあっさりと勝敗が決まってしまうようなことも起こりうる。

 ミラディンの傷跡ブロックのドラフトを例に取ってみよう。新たなるファイレクシアのトップコモンは電位の負荷と不気味な苦悩だが、この2枚はソートが隣り合っている。つまり、片方が入っているパックにはもう片方も含まれている可能性がかなり高いのだ。この2枚が含まれたパックを4つ開封した卓と、1つも開封しなかった卓ではパワーレベルの平均に大きな差が生じてしまう。そしてこれらの卓の間でペアリングが成されるのは、アンラッキーな卓に座っていた人々にとっては甚だ不公平というものだろう。

・ヘイトドラフトの問題
 また、ランダムペアリングのもとではヘイトドラフトの被害も大きくなる。隣のプレイヤーが積極的にヘイトを仕掛けてきているというシチュエーションを思い浮かべてみよう。こういう場合、お互いのデッキが弱くなってしまうのが常だ──隣のプレイヤーは自分のデッキに入らないカードに手番を費やしているのだから。従来のドラフトでは、少なくとも3/7程度の確率で隣のプレイヤーの弱いデッキとペアリングされるという希望を持つことができる。しかしランダムペアリングでは相手になりうるプレイヤーの数はそれこそ無数で、隣のプレイヤーとたまたまペアリングされる可能性はもっともっと低い。

・キューブドラフトの問題
 ランダムペアリングの孕む問題は、キューブドラフトを考慮するとより大きくなる。キューブはシングルトンフォーマットだから、対戦相手が持っていそうなカードを予測するための情報量は普通のドラフトよりも多い。"目くらまし"をピックしたかい? それならたぶん、ハンド1枚でタップアウトしている対戦相手に全力の墓所のタイタンを叩きつけてオーケーだ。遅い順目で欠片の双子が流れているのを見ているなら、やっかい児をコントロールしている青赤相手には、流刑への道を構え続けるのが正解だろうな。

 こういうプレイができるのがキューブドラフトの良さであり、プレイヤーに相手を負かしてやったという満足感を与えてくれる要素でもある。そして、従来のキューブではヘイトドラフトの価値も他のドラフトより高い。デッキはより尖った構成になり、ヘイトカードの価値も相対的に高まるからだ。しかしランダムペアリングになれば丸い構成の多色デッキが増え、コーの火歩きや銀騎士のようなカードを見かけることは減るだろうし、たとえ使われていたとしても、従来のような制圧力はもはやないだろう。

・練習の問題
 またランダムペアリングでは、もっとも重要というわけではないが上のレベルを目指すのには不可欠なドラフトスキルを向上させるためにはまったく役に立たない。もはや開封したパックのパワーレベルの問題や、ヘイトドラフト、流したカードの記憶などの問題からは簡単に目をそらすことができる。しかし、プロツアーやGPの2日めのドラフトといったステージでは得られる限りの情報が必要で、普段からできる限りそれに近い状況で練習していれば、より良い結果を出せるだろう。遅い順目で流したコンバットトリックを誰が持っていそうか推測するにはスキルが必要で、そういう能力はそうするだけの動機が普段のドラフトからあれば自然に伸びていくものだが、ランダムペアリングはその機会を奪っているのだ。

・結論
 ランダムペアリングはドラフトするにはよくないというのが結論だ。パックの引き運による差を拡げ、相手のデッキを推測することで得られる達成感を失くし、ランダムペアリングが用いられないような高いレベルでのドラフトを練習するための役に立たない。しかしこれはもちろん、単なる僕個人の意見だ。きみはどう思う? ランダムペアリングのメリットは、デメリットを上回っているのだろうか?

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 以上です。同じCFBにドラフトリーグを歓迎する記事も出ていますので、そちらも訳してみようと思います。
 TCGPLAYER.COMより、セス・マンフィールドさんのエタマスリミテ記事です。元記事(http://magic.tcgplayer.com/db/article.asp?ID=13309&writer=Seth+Manfield&articledate=6-1-2016)もぜひ。

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 世界中のマジックコミュニティが、エタマスの話題で盛り上がっている。デッキに必要なカードを手に入れるのを別にすれば、このセットを一番楽しむ方法はドラフトすることだと思う。リミテ環境が、モダマスと似た感じだといいんだけど。モダマスのリミテは最高に楽しかったから。

 リストを眺める限りでは典型的な二色環境で、複雑な要素はそう多くない。これから10通りのアーキタイプと、それぞれのキーとなるカードを数枚ずつみていこう。レアについてはあまり触れない方向でいくつもりだ。レアは確かに強いけれど、ドラフトで目にする機会はコモンやアンコモンのほうが当然多いからね。それに、このセットのレアは大半が明らかなボムか、そうでなければ完全なアンプレイアブルだから、どのみち評価するのはそう難しくない。

赤白アグロ
キーカード: バリーノックの群勢, 農民の結集, 北風乗り, 熱血漢の聖戦士, 炎の稲妻, ケルドのチャンピオン, 炎の血族の盲信者

 リミテッドにおける赤白は、白の優秀なクリーチャーと赤の軽量除去を主軸とする、伝統あるアーキタイプだ。クリーチャーは基本的に頭でっかちで、ブロックする気はそんなにない。熱血漢の聖戦士やケルドのチャンピオンのようなテンポ重視の速攻持ちも複数存在している。
 白も赤も除去はプールに十分存在しているから、赤白をやるときはまず優秀な、最低でも軽いクリーチャーを十分確保するのが先決だ。そして除去は、質的に最高級のものだけを選びたい。先兵の精鋭のようなカードでも、ためらわずに採用しよう。何よりも重要なのは速さだ。

赤緑ファッティ
キーカード:密林の猿人,アヴァラックス,ギトゥの投石戦士, 火打ち蹄の猪, 皇帝クロコダイル, 歩哨蜘蛛, 血編み髪のエルフ


 この組み合わせは優秀なクリーチャーを多数擁している。中でも、密林の猿人、血編み髪のエルフ、火打ち蹄の猪の三体はこのアーキタイプでしか真価を発揮しないから、かなり安く取れるだろう。近代マジックではファッティデッキといえども必ず6~7マナのクリーチャーをプレイするわけではない。勝負を速やかに終わらせるファッティ、たとえば皇帝クロコダイルのようなカードをプレイするために、7ターン目を待つ必要などないのだ。
 序盤は赤の軽量除去で時間を稼ぐ。また、緑のバットリの何種類かは、採用するだけの価値はあるだろう。しかし何にもまして大事なのは土地を引くことで、このアーキタイプでは土地18も肯定される。フラッシュバックがある環境だから、伸ばした土地が無駄になることはほとんどない。

緑黒エルフ
キーカード: 病み土のドルイド,リス・アラナの傷刃, 眼腐りの終焉, 森林守りのエルフ,リス・アラナの狩りの達人傲慢な完全者(訳注──レアに格上げされてます),エルフの先兵


 ときには、いくつもの部族シナジーが詰め込まれたセットがある。エタマスでもっとも要注意な部族は、黒と緑にまたがって多数存在しているエルフだ。エルフには、デッキにエルフが多ければ多いほどパワーをいや増すものが多い。最も良く出来たシナジーデッキ、すなわちプールのエルフ全部をプレイできるエルフデッキを目指して、黒緑をやる時はエルフを高めにピックしていこう。

 うまくハマったエルフデッキはとても強いが、失敗ドラフトになったら1マッチだって獲るのは難しいだろう。エルフシナジーを重要視しないカードを集めた黒緑デッキだって存在しうるだろうが、そんなのはつまらない! 僕はやれるならこのアーキタイプをいつでも目指すつもりだが、卓に他にもエルフをやっていそうな気配があるなら話は別だ。パックの内容にもよるけれど、8人ドラフトでまともなエルフデッキを組めるのは卓一か、多くても二人までだろうね。

青黒コントロール
キーカード:綿密な分析,マーフォークの物あさり,象亀,グレイブディガー,ネクラタル,悲劇的な過ち


 エタマスでは、青はもっともコントロールっ気の強い色だ。超アグレッシブな青デッキなんてものには、なかなかお目にかかれないだろう。一方黒もコントロール向きのクリーチャーや除去を有しているから、この二色は相性バッチリだ。それと、ドローや回収が充実しているから、カードアドバンテージという点で青黒は圧倒的だ。
 序盤をどう凌ぐかがキーだから、象亀のようなカードが重要になってくる。黒の軽量ドローでライフを失うこともあって、パーマネントを使った防御が欲しくなるからだ。この組み合わせは単体で強いスペルの寄せ集めになりがちだが、やり過ぎには注意しよう。ボードに影響を与えるカードも、同じくらい大事なのだ。

青白飛行
キーカード: イーヴォ島の管理人, 幻影獣, 大クラゲ,前兆の壁, 北風乗り,集魂者

 青白のお家芸である飛行、エタマスではそれぞれの色にフライヤーをサポートするカードが多数収録されている。イーヴォ島の管理人や集魂者のようなカードはデッキに相当数のフライヤーがいないと意味を成さないが、今回は選びたい放題だ。フライヤーには除去、バウンス、地上を固めるブロッカーでのサポートが不可欠。前兆の壁のようなカードは、フライヤーの群れを展開するお膳立てとしては理想的だろう。
 相手の全フライヤーに回答を用意するのは現実的ではないから、青白相手にはレースを仕掛けるのが一番いい。北風乗りのような、最良のフライヤーはコモンだ。どんなデッキでも飛行デッキと渡り合えるように、僕は北風乗りを平和な心などの高品質な除去よりも高く見る(ドラフトの流れにもよるが)。

白緑アグロ
キーカード:信仰の足枷,考え直し,天空の先達,象の導き,森の力,熊人間,アルマジロの外套

ほとんどのリミテ環境で、僕が一番好むのが緑白だ。しかし今回は、緑と白の間にシナジーするカードはそう多くないようだ。白は除去を、緑はクリーチャーとバットリを担当することになる。個人的には多くの場合、このアーキタイプを積極的に狙いにいくということはなさそうだ。大切なのは、どのレベルのカードがそのアーキタイプに入るだけの価値を持っているかを判断することだ。ほぼすべて白緑がアグレッシブなものになるだろう。そして、最後の数点のダメージを通すために必要になってくるのは、森の力や怨恨、アルマジロの外套のようなカードたちだ。

青緑スレッショルド
キーカード:ワームの咆哮,熊人間,神々との融和,セファリッドの賢者.嘘か真か,金切り声のスカーブ

青と緑のカードを眺めて頭に浮かぶのは、「この二色を他の組み合わせより上回らせるのはどんなシナジーだろう?」という疑問だ。ドラフトではこの二色はあまり人気がない。強く主張する戦略がなく、ぼやけたようなデッキになってしまいがちだからだ。しかし今回は違う。スレッショルドとフラッシュバックを活かすのに最適な組み合わせが、青緑なのだ。なにしろ青も緑もスレッショルドやフラッシュバックを持ったカードで満ち満ちていて、カードを墓地に落とす手段も豊富に用意されている。

 金切り声のスカーブは単体で強いカードとはとても言えないが、青緑においては重要なパーツと化す。自分の山を削るのはスレッショルド達成にベストな方法で、フラッシュバックスペルを落とせる可能性もある。マーフォークの物あさりや嘘か真かのようなアンコモンが墓地を充実させるのには一番だが、狙って探せるものでもない。エタマスで青緑をドラフトするには思い切りが必要になってくるだろうが、それだけの価値が見込めるアーキタイプだといえる。

青赤スペル
キーカード:綿密な分析, ,風見の本殿, 激憤の本殿, ギトゥの投石戦士, 甲虫背の酋長,若き紅蓮術士,放蕩魔術師


おそらく、青赤がエタマスリミテ最強のアーキタイプだろう。 捨て身の狂乱や小柄な竜装者は青赤に入るのに十分なカードたちだが、こいつらのために青赤をやりたいというわけではない。むしろ、目指す戦略にかかわらず色のどのカードも十分に仕事させることができ、しかも一枚一枚がパワフルであるというのが、青赤の最強たる所以だ。青赤デッキはカードアドバンテージと軽量除去で溢れ、反比例してクリーチャーは少なくなる。だからこそ、本殿パッケージや甲虫背の酋長がキーパーツになってくるのだ。

 バーンスペルが除去を行うことになるだろう。ドローと軽量バーンの相性は最高だ。若き紅蓮術士がいれば、さながら構築デッキのような動きも可能になる。

赤黒トークン
キーカード:モグの戦争司令官,甲虫背の酋長, 魂魄流, ファイレクシアの憤怒鬼, 屍肉喰らい, 血の芸術家


 さあ、パッと見ではかなり弱そうに見える組み合わせの出番だ。除去は言うまでもなく優秀なのだが、クリーチャーが絶対的に足りていない。しかし、そんななかにもとあるテーマが隠されているのを見落としてはいけない。サクリ台と、小型クリーチャーの組み合わせだ。屍肉喰らいや血の芸術家といった軽量クリーチャーに後押しされた小型の群れは、無視できない存在だ。

 このアーキタイプではアグレッシブに行くのが鉄則だ。コントロールしようとしてはいけない。軽量の攻め手を除去でバックアップする、その程度で十分なのだ。モグの戦争司令官と甲虫背の酋長が、プランの構築では重要な役割を果たす。

黒白グッドスタッフ
キーカード: カルシダーム,白たてがみのライオン,魂のフィールド,心優しきボディガード,卑屈な幽霊,犠牲,盲信的迫害


 黒白は、赤黒と似たテーマ、生け贄シナジーを中心にしているように思える。魂のフィールドは回りだすと手に負えず、一枚でゲームを終わらせるだけのパワーを秘めている。黒白は強力なエンチャントをいくつかと、優秀な除去を有しているが、これらがエタマスのリミテで最高の戦略とは言いがたい。もしそうするだけの価値があるクリーチャーに出会えたなら、リアニメイトテーマに行くこともできる。また、クリーチャーについて一言。白たてがみのライオンや微光角の鹿で、ファイレクシアの憤怒鬼のようなCIP能力持ちクリーチャーをもっとも強く使える組み合わせが、白黒だ。

 読んでくれでありがとう。

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以上です。プレミアパックでも、ドラフトできる。そう、MOならね。
SOIリミテッドでもっとも過小評価されている10枚 By Pascal Maynard
 CFBより、SOIリミテッドの記事です。元記事(http://www.channelfireball.com/articles/the-10-most-underrated-cards-in-shadows-over-innistrad-limited/)もぜひ。
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 プレリリースが開催された週末にかけて、新環境のドラフトを3回行うことができた。シールドのデッキは2度ともアグレッシブな赤白で、勝てはしたものの面白みには欠けていたからこれはラッキーだった。
 自分の経験だけから評価はしないつもりだが、今のところ白をよくやっているから、この記事の内容がそれを反映していることには注意してほしい。

1.グリフの加護
 先輩の飛行付与系オーラと比較されがちだが、性質は全く違う。まず、いつでも墓地から舞い戻る以上、2対1交換をとられる心配がまずない。さらに、こいつはたった1マナでパワーを上げてくれる!
 相手がどれだけ除去を抱えていようとも、グリフの加護があれば常に回避持ちでプレッシャーをかけ続けられる。月銀の拘束や金縛りには気をつけて──敬虔な福音者や天使の粛清で"凍った"クリーチャーをサクることで、オーラを再び生き返らせることができるのを忘れずに。

 グリフの加護は白のベストカードの1枚だ。

2. ウルヴェンワルドの謎
 調査デッキでしか役に立たないように見えるかもしれないが、騙されるな! これは単体で完結したエンジンで、相討ち以上を取れる生物を多めに搭載したデッキでは必ず活躍してくれる。
 個人的に、このカードはかなり高く見ている。

3. スレイベンの検査官
 リミテッド目線でセット全体を評価したとき、調査は2マナが重すぎて使いものにならないのではないかと思っていた。しかし実際にプレイしてみると、インスタントと変身カードとの兼ね合いから、テンポ損なしで調査するのは簡単だと判った。だから、スレイベンの検査官は強化されたエルフの幻想家といえる──キャスティングコストが1マナ軽く、ドローに2マナかかるものの、先述の通り、使いみちのないマナを費やす分には0マナも同じなのだ。

4. 町のゴシップ屋
 アタックを強制される生物は、生物の平均サイズがすぐに上昇していく普通のドラフト環境において、着地から数ターン後にはチャンプアタックする運命から逃れられないのが常だった。
 しかし今環境では生物のサイズが全体的に小さい。それに、たとえ相手が大きかろうとも、裏返ったゴシップ屋は火吹き能力を持っているから、最悪でもマナ費やせば相討ちはもらえる。
 アグレッシブな戦略にはぴったりの1枚だ。

5. 呪われた魔女
 呪われた魔女は素晴らしい。中堅サイズの相手と相討ちしつつ、避けがたい呪いに変身する。サクリ先としても最適だ。なぜ評価されていないのかわからないレベルだ。

6. ナヒリの策謀
 初めてテキストを読んだとき、"おいおい、目をつぶって選んだ単語を1枚に詰め込んでみましたって感じだな"と思った。見慣れないタイプのテキストだが、弱いということでは決してない。このカードは防御的な相手に強烈なムチを与え、アグレッシブなデッキにはアメをくれる。
 効果を単純に表現してほしいかい? たぶんこうなるだろうな:"あなたがコントロールするクリーチャーはブロックされない"。

7. 皮膚への侵入
 これも新しいタイプのテキストで、過小評価されてしまいがちなたぐいの1枚だ。たしかに状況依存するカードだが、コストを考えれば腐るリスクは許容範囲内だろう。理想的に運べば、1マナで相手のクリーチャーを殺しつつ3/4が手に入る。
 アグレッシブなデッキでは、エンチャントされたクリーチャーをうまく討ち取るブロッカーを用意し続けるのは簡単ではないだろう。しかし逆に、相手のブロッカーを殴らせてこっちが殴り返すこともできるわけだ。

8. 悪意ある動機
 最初はパワー不足だと思ったが、環境にインスタント除去がそう多くないのが追い風になっている。何もせずにターンを渡して狼男を変身させ、それからこれを相手のターンにつけるのが理想だ。

9. 未知との対決
 まず、僕は1マナバットリ大好き人間であることを自白しておこう。バイアスがかかっているかもしれないが、しかし1マナで+1/+1か+2/+2しつつカードを引けるというのは、かなり強く思える。青緑の調査デッキが組めたのなら、こいつはさしずめ火の玉だ。
 パンプは軽んじられがちだが、全体的に生物のサイズが小さいこの環境で、構えやすい1マナであるこいつは強い場面が必ずあるだろう。

10. 枝細工の魔女
うん、こいつがそこまでのものじゃないのはわかってるから誤解しないでほしい──だが、このカードの昂揚への貢献度を軽んじてはいけない。最新のドラフトで、僕は2マナ3/1よりもこいつを優先した。キャスティングコストがそれほど重要じゃない状況というのは存在する。そのドラフトでは2マナ域は充実していたし、ぜひとも昂揚を達成したい強力な2枚(偏執的な皮剥ぎ人)があった。

おまけ:ドラフトでの白黒

 とりあえず現状では、どんな色の組み合わせもやれそうだ──ただし白黒を除く。
 白黒は生け贄テーマになるのだろうが、サクリ台は4種しかなく、2種はアンコモンでうち1種は甘やかす貴種(白には合わない)だ。療養所の骸骨は厳格な巡邏官と組めば強いが、単体ではどちらも力不足だ。

 もし白黒に活路を見出した人がいるなら、ぜひコメントで教えてほしい!

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 以上です。この記事が気になったのはウルヴェンワルドの謎が言及されているから。プレリで使ったのですが、このカード、とにかく強いです。問題は緑そのものが間違いなく最強色であろうことくらいでしょうか。というか緑はアンコモンの陣容からしてヤバい……
【翻訳】Be You by Craig Wescoe ~後半~
 前編(http://quadrophenia.diarynote.jp/201603161742171623/)の続き。明らかに文量の配分を間違えた……
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 このデッキはETB能力を中心に構成されている。ニッサの誓いで見つけてきたクリーチャーを霊気の薬瓶でノーコスト、かつインスタントタイミングで展開して能力のシナジーを最大限に伸ばすんだ。たとえば悪鬼の狩人の追放能力をスタックに積んでから、ちらつき鬼火か修復の天使でブリンクすることで二体のクリーチャーを追放できる。ちらつき鬼火とコーの空漁師で、ニッサの誓いを再利用するのもいい。スラーグ牙をブリンクすればライフとトークンを得られるし、進化の飛躍は2:1交換を際限なく行い続けてくれる。動き自体が面白いし、ジャスティンと僕はこのデッキを──エルドラージに支配された世界においてさえ──十分戦えるレベルまで仕上げられたと思う。

 大会の始まる前に、僕はマーシャル・サトクリフとデッキテクを披露した(訳注──元記事に動画が埋め込まれています)。

 ブライアン・デヴィッド・マーシャルとMOでマッチもした。何度かフィーチャーマッチの映像が入ってくるけど、対戦の模様はこの動画で見られるよ(訳注──同上)。

 4:46から試合開始。5:44で映像が戻ってくる。またフィーチャーが間に挟まってくるけど、7:17に再開。
 デッキテクを見ればデッキのことをよくわかってもらえるだろうし、マッチの映像は実際何ができるのかをよく物語っていると思うよ。
 デッキを見てもらうのは楽しい──自分の作品を他のみんなと共有するのは、僕にとって必要なことでもある。競技レベルかつ面白みのある、そして今あるどれにも似ていないデッキを作るため僕は全力を注ぎ込んだし、実際プレイしていてめちゃくちゃ楽しかった。この新しいデッキを誰もが作りプレイを楽しめるように、みんなと情報を共有したかったんだ。

 さて、奇妙なめぐり合わせで、僕とジャスティンはラウンド13にてミラーマッチを行うことになった。2000人以上が犇めく会場でこのデッキを使っているのは僕たちだけだっていうのにね。ゲーム1は、ジャスティンが1ターン目の霊気の薬瓶から進化の飛躍とつなげてクリーチャーを展開し続けて取った。2ゲーム目は、ジャスティンの貴族の教主に悪鬼の狩人を叩きつけ続け、マナを伸ばさせずに僕が勝利。3ゲーム目はスラ牙祭りで、長い戦いになった。お互い進化の飛躍エンジンを回していて、スラーグ牙をちらつかせてライフを安全圏に保ち続けていたのだ。結局平らな場のままでラウンド終了のアナウンスを聞くことになった。僕らは二人とも4敗していて、賞金をもらえる目はない。同乗者が帰りたがっていたのもあって、ジャスティンは喜んで勝ちを譲ってくれ、僕にプロポイントを獲るチャンスをくれた(そして、僕はそのチャンスをものにすることができた!)。
 まあ要点を言えば、どんなにユニークなデッキを使っていても、ミラーマッチの可能性はあるってことだね。

 大会終了後、僕はたまたまデヴィッド・グリーンに会った。デヴィッドは11-4で大会を終えていて、対エルドラージでは5-0していた。 彼の緑白ヘイトベアーはミシュラランドを5枚(活発な野生林を4枚、樹上の村1枚)採っているのみならず、サイドに四肢切断と勇敢な姿勢を2枚ずつ備えていたんだ。サイド後はこれで十分エルドラージを倒せるよ、とデヴィッドは語った。彼こそ"アンチ・エルドラージ賞"に相応しいね。お互いのデッキを並べて見比べながら、僕はデヴィッドにデッキの写真(訳注──画像参照)をツイッターにアップして、僕へツイートしてくれるようお願いした。エルドラージに勝てるヘイトベアーはどうやって作り上げられたかを、フォロワーのみんなに知ってもらうためだ。

帰りながら、ジャスティンとメッセージでデッキの改良点と目指すべき方向について話し合った。まずはこういう方向に向かってみた↓

W/G Trigger Happy v2 by Craig Wescoe
Creatures 24
2 永遠の証人
4 悪鬼の狩人
4 ちらつき鬼火
4 貴族の教主
4 修復の天使
2 スラーグ牙
4 復活の声
Spells 14
4 霊気の薬瓶
2 進化の飛躍
4 ニッサの誓い
4 流刑への道
Lands 22
2 森
3 幽霊街
3 地平線の梢
2 平地
4 剃刀境の茂み
4 寺院の庭
4 吹きさらしの荒野

Sideboard
2 永遠の証人
3 ガドック・ティーグ
1 幽霊街
2 漁る軟泥
3 石のような静寂
1 太陽の槍
3 崇拝


 御霊の復讐デッキと2戦した結果、漁る軟泥抜きではこのマッチアップはかなり厳しいと思った。だからサイドに採ってある。また、一度当たって勝利したものの、ボーグルに対してもっと効果的なプランが欲しかったので崇拝を採用した。これはボーグルのみならず色々なデッキ(エルドラージ、バーンなどなど)に刺さる。それと、禍汰奇は石のような静寂に戻した。静寂のほうが、トロンやランタンコントロールに効くからだ。

 ルーンの光輪とコーの空漁師は良いカードなんだけど、永遠の証人と4枚めのニッサの誓いのために空けるスロットがそこしかなくて、泣く泣く削った。それから、墨蛾の生息地とウルザトロンから身を守るための幽霊街も追加してある。このデッキの感触は上々だね。永遠の証人がちらつき鬼火や修復の天使で回り始めれば、相手は帰りたくなること請け合いだ。

 数枚のキーカードのために黒を足してみるのも検討してみている↓

Abzan Trigger Happy by Craig Wescoe
Creatures 26
4 極楽鳥
2 永遠の証人
4 悪鬼の狩人
4 ちらつき鬼火
4 修復の天使
2 叫び大口
2 スラーグ牙
4 復活の声
Spells 12
4 霊気の薬瓶
2 進化の飛躍
2 ニッサの誓い
4 流刑への道
Lands 22
2 森
2 幽霊街
1 神なき祭殿
2 湿地の干潟
1 草むした墓
2 平地
4 剃刀境の茂み
2 寺院の庭
2 新緑の地下墓地
4 吹きさらしの荒野


こういうカードも採用候補だった↓

潮の虚ろの漕ぎ手
盲信的迫害
雲打ち
勇敢な姿勢


 黒を足す大きな理由は叫び大口だ。このデッキのブリンク効果との相性がとにかく最高だからね。想起でプレイした叫び大口を霊気の薬瓶からちらつき鬼火でブリンクすれば、2体のクリーチャーを殺しつつ3/2畏怖が戦場に残る。鬼火じゃなくて修復の天使でもいい。メインから4枚採っていない理由はたったひとつ、"アーティファクトでない"という一文が親和に対して致命的だからだ。
 それから、未練ある魂を採れるのも嬉しい。空中生成エルドラージや生息地二種、それに相手の未練ある魂といった小型フライヤーへの耐性が増す。進化の飛躍との相性が良いのも見過ごせない。エサのスピリットを供給して、欲しいクリーチャーを見つける手助けをしてくれるのだ。

 それから。MOのマッチをTwitchで見返していると、どうしても動画と一緒にチャットも目に入ってくる。エルドラージではなくオリジナルデッキを使っていることで、僕を称賛するのではなくむしろけなすようなコメントばかりだ。相手はリビングエンドで、僕はこのデッキで相対したことはなかった。でもプレイ中、進化の飛躍で墓地を肥やせばこちらのETB効果を死せる生で逆用できることに気づき、相手の複数の死せる生をかいくぐって勝利することができた。立派な競技レベルのデッキを、墓地対策ではなく自分のデッキができることをやって倒したんだ。それでもチャットでは僕のデッキは弱いと決めつけられていたし、僕の見た目をあざ笑うようなコメントでいっぱいだった。これには僕もがっかりしたし、こうツイートをせざるを得なかった。

  Twitchに寄せられたコメントを読んだ。PSAは間違ってもそんなバカな真似をしないことだ。

 最初のほうで話したとおり、僕はいつも思ったことを口にしてしまうタイプの人間だ。自分を隠しはしない。そしてこういう生き方をしていると、もちろん批判されやすくなる。何年もかけて、僕は軽口や嘲りを平然と受け流すための厚い皮膚を身にまとうように努力してきたけれど、それでも誰かが石を投げ始めると無反省にそれに追随してしまう名もない人々の在りようを見るとがっかりしてしまう。もちろん僕のデッキが何を目指しているかを理解してくれている、そしてお互いに腕をふるいがいのある好ゲームが行われていると理解ってくれているコメントもいくつかあった。でもそれらは、長髪というだけで僕をケイトリン・ジェンナーと比べたり、僕のデッキが目新しいというだけでとても実用できない酷い屑だと決めつける、中学生レベルのコメントに飲み込まれてしまっていた。

 本当はこんなことを書くつもりはぜんぜんなくて、これはただジャスティンと僕がGPデトロイトのために作ったデッキのためだけの記事だった。でも言及する価値はあると思った──だって僕は、こういうコメントやそれに結びついている群衆のメンタリティーのせいでマジックから遠ざかったり、トーナメントから身を引いたりした人々を大勢知っているのだ。これはまさに、マジックの抱えるガンだ。問題の核心は、"みんなと違う"ことへの恐怖だ。
 みんなに個性がある。特にマジックは、個性的な人を惹きつける傾向にある。多くの人々が、マジックを通して自分を表現している。大きなトーナメントのためであれ、仲間内のEDHのためであれ、あるいはただ組みたいからであれ、自分のデッキは自分の延長上にある。他所からきたアイディアでも、プレイするときには自分のものになっているんだ。アイディアってのはみんな、どこかからくるものさ。思い当たったときからそれは自分のものになって、無意識のうちに自分らしく改造されていく。誰かの作品に自分なりの手を加えることもあれば、ゼロから自分で作り上げることもある。いずれにせよ、デッキは僕たち自身について雄弁に語ってくれるんだ。僕たちは"他人と違う"ということをもっと誇り、"自分と違う誰か"を尊重しなければならない。
 僕は絶対に自分自身であることから逃げない。僕は世界一のプレイヤーではないだろうし、自分自身であることで何かと不便を被ることはあるだろうけれど、大きな視点から見れば、それは僅かな代償にすぎない。

 世の中を変えたければ、模範を示し続けるしかない。これを読んでいるきみも、自分自身の個性を慈しみ、そういう姿勢を見せることで周囲のみんなにも伝染させていってほしい。エルドラージを使いたくなければ使わなければいい。使いたいものを使おうじゃないか。周りが何を期待しているかなんて考えなくていい。代わりに、自分の内なる声に耳を傾けること。自分を信じよう。自分の潜在能力を一番知っているのは自分自身だ。スリヴァーを使いたいならスリヴァーを使おう。変身デッキを使いたいなら変身を。エルドラージならエルドラージを。もしあらゆるフォーマットで白ウイニーを使いたいのなら、自分を偽らなくても世界を相手に回して立派に戦えるってところを見せてやろうじゃないか。

 自分自身であれ。
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 以上です。少し長い記事ですが、全力で訳しました。何をするにせよ、信念を持ちたいものですね。

 TCGPLAYER.COMより、白スキーのヒーロー、ウェスコ―さんの記事です。元記事(http://magic.tcgplayer.com/db/article.asp?ID=13165&writer=Craig+Wescoe&articledate=3-11-2016)には動画なんかもありますのでぜひご参照ください。
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 みんな、色んな動機でマジックをやっている。メタゲームや盤面を完全に読み切り、それを攻略する戦略ゲームとして、あるいは週末やランチタイムに友だちと楽しい時を過ごすための遊びとして。僕もこれまで、一人の人間がマジックをプレイする様々な理由についての記事を書いてきた。

 僕がマジックをプレイし続けている理由のうちで大きなウェイトを占めているのは、自己表現だ。デッキを組むこと、記事を書くこと、トーナメントに参加すること、マジックのすべてを通して僕は自分自身を知る。そうして、自分の一部を世界のみんなと共有する。誰もが触れられ、利益を得られるようなやりかたで。まあ要するに、僕にとってマジックは個性を注ぎこみ、それを世界と分け合えるものだってこと。だからこそマジックは僕の人生で大事な役割を担っているし、20年前にアイスエイジのスターターを初めて開けた瞬間と同じくらい、今でも僕をわくわくさせ続けてくれている。

 僕は僕だ。それ以外にはなれない。これを読んでいるきみも、誰しもそうだ。僕らはみんな、自分自身でしかありえない。もちろん成長はするし、学習だってする。冒険し、想像し、いろいろな経験を通じてもっと自分のことを理解していく。でもやはり、自分以上ではいられない。僕と個人的に付き合いのある人は、僕が思っていることをすぐ口にしてしまいがちなことを知っている。僕は信じるもののために戦うし、自分を実際より良く見せたいとは思わない。

 デッキを自作するのは、いつだってとても楽しい。デッキを組み、見直し、テストし、次の大会に向けてチューン・アップしていくのって、マジックを実際にプレイするのと同じくらい大好きだ。僕は自分のスタイルを磨き続けてきた──デッキリストを一目見ただけで僕が手を入れたものだってわかってもらえるくらい、独特なスタイル。「お前のデッキはいつも白ウィニーじゃないか」とよくからかわれるけれど、それは僕の築き上げてきたものだし、喜んで受け入れている。こんなふうに自分を理解して、それを受け入れてやれる人が、いったいどれくらいいるだろうか?

 もしマジックが楽しくなくなったら、やめてしまうと思う。いつも変わり続けているというのが、マジックの楽しい部分の一つだ。メタが変わった? 新しいデッキが結果を出したって? 僕にとっては挑戦の機会だ。エルドラージ強すぎ、他のデッキを使うのがバカらしいって? こういうとき、WotCに抗議して規制を呼びかけるプレイヤーもいれば、規制されるまで"最強のデッキ"を使い続ける人もいる。後者を取れば、僕の勝率はあがるだろうか? たぶんそうなるだろう、でもその代償は高くつく。それは僕がタオルを投げ入れたってことにほかならないからだ。自分には現在のシーンでの使用に堪えうるデッキを作ることができないと、認めてしまうことになるからだ。多くのプレイヤーにとって、これは小さな譲歩なのだろうが、僕にとってはマジックをプレイする意味の大部分を奪われてしまうことを意味する。時には"最強のデッキ"を使うこともあるけれど、そのデッキがどんなに手に馴染んだとしても、会場で自分だけが使っているデッキで勝利したときのあの満足感を与えてはくれないんだ。

 GPデトロイトでエルドラージを握るのはあまり気が進まなかった。アグロ志向で対話型っていうデッキの性格は好みなんだけどね。それでGPヒューストンみたいにデトロイトもパスしかけていた矢先、ジャスティン・ヘイリグがメッセージを送ってきた──足が見つかったからGPデトロイトに参加するっていうんだ。ジャスティンとは好きなデッキのスタイルが似ている。だから僕はデトロイトで闘う心を決めて、ジャスティンと一緒にMOでテストを始めた。そして、僕らはエルドラージを倒す方法を見出した!  僕らはバット・シグナル(訳注──バットマンのシンボルマークのアレ)を光らせ、何人かの青白エルドラージ使いを見つけ出した。僕らはスカイプを通じて一緒にプレイし、リプレイを観ながらデッキをさらに進化させていった。デッキが完成する頃には、僕らはエルドラージを手当たり次第に叩きのめしていた──二人の作品を世界に見せつけてやる時が来たって感じだったね。

 これが、GPデトロイトで10-5した僕のデッキだ。

Creatures 24
4 悪鬼の狩人
4 ちらつき鬼火
2 コーの空漁師
4 貴族の教主
4 修復の天使
2 スラーグ牙
4 復活の声
Spells 15
4 霊気の薬瓶
2 進化の飛躍
3 ニッサの誓い
4 流刑への道
2 ルーンの光輪
Lands 21
2 森
1 ガヴォニーの居住区
4 地平線の梢
2 平地
4 剃刀境の茂み
4 寺院の庭
4 吹きさらしの荒野

サイドボード
3 ブレンタンの炉の世話人
1 進化の飛躍
3 ガドック・ティーグ
1 未達への旅
3 戦争の報い、禍汰奇
1 レオニンの遺物囲い
1 再利用の賢者
2 太陽の槍


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 前半は以上です。後半へ続く。
 CFBより。元記事(http://www.channelfireball.com/articles/week-in-review-gp-houston/)も読もうね!
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 まずは、古豪やPT常連たちの犇めくトップ8をラリーで泳ぎ切ったオーウェンの勝利を讃えたい。さて、これでオーウェンの伝説にまた新たな1ページが加わったわけだから、そんな彼が使った以上しばらく安泰であろうラリーの話は置いておいて、今回はトップ8に入賞した残りのデッキのうち興味深いものを取り上げようと思う。トップ8にラリー使いはたった二人で、中隊というカード自体も12枚しか使われていない。つまり、ヒューストンは緑のデッキに完全に"踏み荒らし"されたわけではないのだ。実際、全く新しいアーキタイプも顔を見せている。

・鷹匠は舞い降りた

 おとぎ話の主人公のように、硬化した鱗が艱難辛苦の果てにその真価を現した。せいぜいFNMで見かけたり、日本のプロが時折使用している程度のニッチな存在が、突如GPヒューストンで台風の目となったのだ。マット・ナスとサム・パーディーの先導によってそのデッキはFtFとCFBの大勢に広められ、ついにマーク・ジェイコブをトップ4に送り込むに至った。
 では、具体的には何が、緑白のゴミデッキを完全なるビートダウンマシーンへと変えたのだろうか?

 ガヴォニーの居住区効果を有しつつ、自分自身も攻め手段となって相手に早急な対処を迫る。これこそ鱗がもっとも求めていたものだ。ゼンディカーの代弁者、ニッサはクリーチャーをタップしたりマナを消費することなしに、鱗デッキの愛すべき落ちこぼれ部隊を相手領地へ攻め入るに十分なサイズまで成長させてくれる。もしニッサの前に鱗が着地していたなら、この効果はプチ踏み荒らしに近くなり、ゲームは2ターン以内に終わるだろう(アブザンの鷹匠がいればそのターンの内にケリが付く)。態勢が整ってしまえば、ラリーやバント中隊のようなデッキはうまくこちらに攻め入ることができない──唯一の回答たる、反射魔道士以外では。よくできたドラフトデッキのようにシンプルに、クリーチャーのサイズをデカくして敵の灰色熊や2/3の群れを蹴散らしてやろう。

 鱗デッキはマナカーブに沿った動きを理想とする関係上引き依存が強い。これはOGW以前からそうだったが、ニッサの登場で強い引きのパターンは倍になった。環境的に、数で押すデッキが強いのも追い風だ。

 鱗デッキは小さな攻め手段を素早く展開することを主眼としており、生物はどれも相手がテンポをロスしてまで除去するのを躊躇う程度のサイズとコストだ。また、スロットはクリーチャーで埋め尽くされているがその実戦闘は苦手、というデッキも現環境には多い。つまり、徐々に成長していく1/1や2/2を並べ立てる、という戦略は理に適っているのだ。似た戦略を採るアタルカトークンは6~7体の1/1を並べて1体の包囲サイやラリーの軍勢に対するが、鱗デッキでは4体の生物を並べ、そいつらを3/3やそれ以上に成長させることで相手を倒す。ベストな回り方をすれば、アブザンの鷹匠を含む4体をパワー5以上に成長させ、相手を一撃で屠ることすらあるのだ。成長手段の都合上アタルカの命令のように奇襲性はないが、そのぶん効果は永続する。

 要するに、スイープ手段を有するデッキが少なく、盤面を制圧するのに時間のかかる生物が多かったことが、鱗デッキの道を切り開いた要因なわけだ。これがスタンダードの大きな魅力の一つ。一旦着外となったデッキも、新セットの発売でマスターピースを得られればレースに復帰できる──長続きするかはともかくとして。ともかく鱗デッキは認知されてしまったわけだから、これからはその存在そのものが、スイーパーを増やす理由になる。わからん殺しはもうない。そしてその理由だけでも、鱗を諦めてもっとサイズ重視の緑デッキをプレイするのに十分なのだ。

・ダークジェスカイ
Lands 26
4 血染めのぬかるみ
4 溢れかえる岸辺
1 島
1 山
2 鋭い突端
1 平地
4 汚染された三角州
2 大草原の川
2 乱脈な気孔
2 燻る湿地
2 窪み渓谷
1 沼
Creatures 14
4 ヴリンの神童、ジェイス
1 黄金牙、タシグル
2 ゲトの裏切り者、カリタス
4 カマキリの乗り手
3 魂火の大導師
Spells 20
2 軽蔑的な一撃
1 強迫
3 焦熱の衝動
2 焙り焼き
4 はじける破滅
4 苦い真理
2 時を越えた探索
2 ゼンディカーの同盟者、ギデオン

Sideboard
2 アラシンの僧侶
1 軽蔑的な一撃
2 強迫
1 影響力の行使
1 焦熱の衝動
1 コラガンの命令
1 否認
1 灯の再覚醒、オブ・ニクシリス
2 光輝の炎
1 焙り焼き
2 精神背信

 私のジェスカイへの深い愛についてはもう何度も触れてきたし、クネオのバージョンも例外ではない。私が長期戦を見据えて龍詞の咆哮と雷破の執政を採用したのに対し、クネオは一般的なジェイス+時を越えた探索に加え4枚の苦い真理を投入した。これだけドロー手段があればガス欠はほぼありえないし、カリタスとギデオンは場に残り続ける限りその脅威をいや増していく。

 注目は、私がその必要性についていささか懐疑的な焦熱の衝動を、彼が3枚採っていることだ。チャピンはダークジェスカイでの焦熱の衝動には大いに不満を覚えているし、私も現状では、龍詞の咆哮よりも優先する理由を見つけられていない。ドラゴンボーナスを抜きにしても、ラリーやバント中隊を前に一手間かけなければ仕事をしないカードよりは、ちょっと弱めの灼熱の槍のほうがまだしもいい。衝動がアンプレイアブルなわけではないが、ダークジェスカイの安いスペルといえば払拭や軽蔑的な一撃といった不確定カウンターくらいなもので、早いターンでのジェイス以外に速やかに魔巧を達成する手段はないに等しい。

 一方で、軽量ハンデスのパッケージは迅速な魔巧達成を可能にしてくれる。また、特に後手の場合だが、自分の展開を阻害することなく1マナかつインスタントタイミングで相手のジェイスに対応できる点はナイスだ。焙り焼きは代わりの利かないカードとして、また魂火の大導師と組み合わせた時のライフゲイン手段として重宝されている。追加のはじける破滅を求めるとき、2マナで用意されているものはそう多くない。

 コントロールに寄せるなら、MOCSで結果を出したドラゴン型よりもこの構築がよさそうだ。追加のドローはやはり大きい。あとは炎呼び、チャンドラさえいれば完璧だろう。追加のフィニッシャーとして、あるいは全体除去として、チャンドラは絶対に外せないパーツだ。チャンドラ以外では巻き返せないという状況が存在するし、何よりもマルドゥグリーンとの長期戦で最高の1枚だ。

 よりアグレッシブにいきたいなら、まずジェスカイドラゴンを組んでみて、そこから苦い真理とはじける破滅のために4色めを足すかどうか検討することを勧める。先週末、私は嵐追いの魔道士入りのジェスカイにミラーマッチで敗れた。魔道士は追加のカマキリとして、地上戦力に止められることなくゲーム終盤まで仕事をしてくれる。スペルでゲームプランを推し進めつつ2、3点のダメージを叩き出すターンを作れるし、そうでなくとも安い除去は当たらない1点クロックというのは悪くない。

 このデッキをプレイする上でもっとも重要なことは、今ある状況から2-3ターンで勝利する道を探し続けることだ。すぐにライフを削りきるのが不可能なら、盤面を制圧するのにもっともいい方法を模索しよう。相手エンドのジェスカイチャーム、アンタップしてジェスカイチャームをフラッシュバック、からのカマキリや火力、といったプレイで勝てる試合も多い。

 さて、今週は以上──鱗が隆盛するか、それとも流星のごとく消え去るか、それも来週になればわかる。ああ、それとベイエリア(※訳注──サンフランシスコやオークランド近郊、サンフランシスコ湾岸地域のことらしいです)在住の読者は、鱗にとって相性が最悪な赤緑ランプをプレイしないでくれ。他の地域の諸君には、赤緑ランプを勧める──このデッキの7マナ帯とスイーパーは環境にマッチしているからね。もっとも、プレイに自信がなかったり、使うデッキが決まってるのなら話は別だけど。

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 以上です。最後の段落は、シルヴェストリさんがベイエリア在住で鱗を使うつもりだからの発言なのでしょうか? そのつもりで訳しましたが正直良くわかりませんでした。
 
 現スタンもあとひと月足らずですね。多くの人にとって、宝船や探索を公式大会でプレイする最後の機会になるのではないでしょうか。ぜひとも探査しまくりましょう。
 CFBより。元記事(http://www.channelfireball.com/articles/going-wide/)もぜひご一読を。
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 マジックの世界には、あるデッキが採る戦略を一言で表すスラングが存在する。たとえば、相手が持つ最大値を上回る脅威を内蔵し、とにかくマナを伸ばしてそいつを叩きつけることを目標とするデッキは"ランプ"と呼ばれる。"アグロ"デッキの多くは最大値と平均コストを低く設定し、敵が追いつけないくらいの速さを武器にする。
 どんな相手も純粋なカードパワーで叩き潰そうとする、アブザンのようなデッキは対戦相手を"スルー"するデッキだ。包囲サイの強さはごくシンプルなのだ。また、コントロール手段や強力なシステムを備えた"ロング"デッキは、自らの勝ち手段が回り始めるまでゲームを長引かせることを目標とする。

 そしてもう一つ、忘れてはいけない戦略がある。先の4つほど普遍的で馴染み深いわけではないが、闇の隆盛で未練ある魂が刷られて以来、私の心を捉えて離さない戦略だ。その名は"ワイド"。小さなトークンとクリーチャーで盤面を埋め尽くし、そいつらをまとめてパンプするのだ。相手がサイズで上回っていても気にしない。戦闘でこちらの手勢が何体かやられようとも、残りで押しつぶしてしまえばいいのだ。絶え間ない飢餓、ウラモグはでっかいお友達だが、一度にブロックできるゴブリントークンの数は、やはり1体でしかないのだ。

 現スタンダードの"ワイド"戦略はここから始まった:

Atarka Tokens Josh Utter-Leyton, 9th place in a MOCS a week ago

Lands 23
4 血染めのぬかるみ
2 燃えがらの林間地
1 森
11山
1 吹きさらしの荒野
4 樹木茂る山麓
Creatures 18
4 ケラル砦の修道院長
4 僧院の早槍
3 ピア・ナラーとキラン・ナラー
4 無謀な奇襲隊
3 鐘突きのズルゴ
Spells 19
4 ドラゴンの餌
4 軍属童の突発
4 アタルカの命令
4 焦熱の衝動
3 多勢

Sideboard
1 燃えがらの林間地
3 吹きさらしの荒野
2 弧状の稲妻
3 棲み家の防御者
4 ゼンディカーの代弁者、ニッサ
2 龍爪のヤソヴァ


 一見してノーマルなアタルカレッドだが、その実態は驚くべき選択に満ちている。土地を足してピア・ナラーとキラン・ナラーを採用しているというのがその一つだ。これによって、長期戦への対応力が増している。地上が止められてしまっても、飛行機械トークンで上から攻めることができるのだ。ナラー夫妻はアタルカの命令や無謀な奇襲隊とも強力なシナジーを構成する。
 さらにサイド後からは、ゼンディカーの代弁者、ニッサで相手の予期せぬ角度から攻められる。

 そして、ここからこの傑作が生まれ出た:

Atarka Tokens  Cloute24, 5-0 in a Magic Online League
Lands 23
4 血染めのぬかるみ
3 燃えがらの林間地
1 森
7 山
4 吹きさらしの荒野
4 樹木茂る山麓
Creatures 14
4 ケラル砦の修道院長
4 僧院の早槍
2 ピア・ナラーとキラン・ナラー
2 無謀な奇襲隊
2 鐘突きのズルゴ
Spells 23
4 ゼンディカーの代弁者、ニッサ
4 ドラゴンの餌
4 軍属童の突発
4 アタルカの命令
4 焦熱の衝動
3 多勢

Sideboard
2 弧状の稲妻
2 沸き立つ大地
4 棲み家の防御者
2 前哨地の包囲
4 焙り焼き
1 龍爪のヤソヴァ


 このリストはJoshのデッキの優れたところをすべて取り入れ、さらにメインボードに昇格させている。このリストを何度かテストしてみたが、たった数マッチで虜になってしまった。

現在私が使っているリスト
Lands 23
4 血染めのぬかるみ
3 燃えがらの林間地
2 森
6 山
4 吹きさらしの荒野
4 樹木茂る山麓
Creatures 14
4 ケラル砦の修道院長
4 僧院の早槍
2 ピア・ナラーとキラン・ナラー
2 無謀な奇襲隊
2 鐘突きのズルゴ
Spells 23
4 ゼンディカーの代弁者、ニッサ
4 ドラゴンの餌
4 軍属童の突発
4 アタルカの命令
4 焦熱の衝動
3 多勢

Sideboard
2 弧状の稲妻
2 ゴブリンの闇住まい
3 雷破の執政
2 無謀な奇襲隊
4 焙り焼き
1 精霊龍の安息地
1 龍語りのサルカン


 このデッキのニッサは壊れだ。Joshのデッキではサイドに過ぎなかったこのカードがいまやメインから4枚採られているのみならず、デッキ最高の1枚の座を勝ち取っているのだ。ぱっと見でその強さに気づくことは難しいが、一度プレイすれば(私がそうだったように)疑問など吹っ飛んでしまうだろう。
 -2能力は果敢クリーチャーやトークン製造機と露骨に相性がいい。だがそれほどあからさまではないのは──私も最初はそれに気づかなかった──、+1能力の強さであり、奥義への到達しやすさなのだ。

 マルドゥやマルドゥグリーン、ジェスカイブラックといったデッキは、毎ターン生成される植物トークンを乗り越えるのに一苦労する。一度に少数のクリーチャーしか展開しないことがほとんどで、場合によっては1体かまったく展開しないということもあり得るからだ。時にはそういう戦略に対して腰を据えて防御策を考えなければならないだろうが、その役割を担ってくれるのがニッサというわけだ。
 終わりなき植物トークンの群れが乱脈な気孔を押しとどめ、ニッサの忠誠度が7まで到達する時間を稼ぐ。そこからは大量のカードとライフを得たこちらが攻める番だ。

 はじける破滅を有するデッキ相手には特に、ニッサの忠誠度を徹底的に上げ続けることにしている。奥義到達を防ぐためにリソースを割かせ、その間に他のカードで勝利するためだ。忠誠度を下げてカウンターを乗せたとしても、一度ニッサがはじける破滅で処理されてしまえば、ライフゲインと除去をふんだんに持った相手に対して2/2のゴブリントークン数体はゲームエンドをもたらすには非力すぎる。

 多くの場合、ニッサは他の何者にも優先して3ターン目にプレイする。どうしてもダメージレースしなければいけないマッチアップを除いては、軍属童の突発よりも優先だ。またそんなマッチアップでも、3ターン目ニッサのほうが強い動きであることに変わりはない。1度忠誠度を上げてトークンを生成し、そこから-2を連打すれば多大なダメージを叩き出せる──アタルカの命令や無謀な奇襲隊があれば尚更だ。

 サイド後は、より大きいデッキに変身できる。ナラー夫妻を抜いて24枚めの土地を入れ、雷破の執政、龍語りのサルカン、そしてゴブリンの闇住まいといったデカブツたちを投入すればいいのだ。闇住まいと焙り焼きのコンボはアブザンに対し劇的に効果がある。サイのロースト焼きほどうまいものはこの世にないね。
 闇住まいはただ強だ。マジで。どのスペルをフラッシュバックしても強い。軍属童の突発でボードを再構築するも良し、焙り焼きするも良し、焦熱の衝動や多勢、はたまたアタルカの命令でも良い。

 このデッキの一番好きなところは、組み込まれたサプライズ要素だ。1ゲーム目をささっと取ったあと、2ゲーム目ではアラシンの僧侶や光輝の炎を山ほど目にするだろう。もちろんそいつらもある程度は効くんだけど、雷破の執政や闇住まいに対しては有効打にはならない。とあるゲームでは、魂火の大導師と光輝の炎のコンボで相手のライフが40以上まで膨れ上がった。でもその試合も、ニッサと闇住まいでシンプルに勝つことができた。このデッキはアグレッシブというよりミッドレンジ寄りなのだ。速く勝つこともできるというだけだ。強くて、速くて、リカバリーも簡単だ。
 
 そして何より、プレイしてて単純に楽しいんだ。

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 以上です。いまいち活躍の場がなかったニッサですが、アタルカトークンの登場でにわかに脚光を浴びてますね。カリタスに続く出世頭となるのか?
PT参加者の日記~Top8編~ By Pascal Maynard
PT参加者の日記~Top8編~ By Pascal Maynard
 CFBより。元記事(http://www.channelfireball.com/articles/the-diary-of-a-pro-player-top-8-at-pro-tour-oath-of-the-gatewatch/)もぜひご一読を。
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 ようやく、だ。

 先週の土曜日から、どんな気持ちかと訊かれても口をついて出るのはそれだけだった。これまで13回もPTに参加してきたが、結果を出せたことは一度もなかった──勝率は50%を切っていて、賞金を得たのも4年前の、3、4回だけだった。
 今回、私は一つの目標を定めて会場入りした。マネーフィニッシュ。
 2度めのドラフトを終えて成績は8-3、ここに至って私は考えた。よし、目標達成まではまだ3回も負けられるじゃないか。トップ8の目があることは無論承知していたが、できるとは到底思えなかった。なにしろトップ50にも入ったことがないのだから──いきなりトップ8というのは、不相応なスタートに思えた。

 でもどうやら、私のスタート地点はトップ8ということらしい。そして新しい目標はトップ4だ。

・デッキの選択

 PTの約2週間前に親和に思い至った。チームメイトにAlex MajlatonとRicky Chinという親和のエキスパートがいたから、少なくとも親和を握るという択を残せるようにしておこうと考えたのだ。それから、毎日がマジックに費やされた調整期間の中で無数のデッキを試したが、実を結んだのはプロツアーを目前にした月曜日のことだった。 選択肢はアブザン、親和、そして青赤エルドラージに絞られていた。アブザンはその丸さから、バックアッププランとしておいた。Ben WeitzとJC Tao(今PTの優勝者だ)が原型を作り上げた青赤エルドラージはチーム謹製のデッキだ。様々な色の組み合わせをテストしたが、青赤のタイプがもっとも好感触だったのだ。
 その月曜日、私は空中生成エルドラージをキャストしながら(いや、ドラフトしてたわけじゃないよ)こう考えていた──「これはやっぱりないわ」。私は青赤エルドラージを切り捨て、代わりにMOで親和を延々と回しはじめた。
 で、石のような静寂にやられ続けたというわけだ。こんなバカな話があるか。PTのまさしく前夜、私は自問した。明日戦う相手は、MOの奴らみたいにどんなデッキにでも石のような静寂をありったけぶち込むような真似をしてくるだろうか、ってね。寝る前にはイカれちまってたみたいで、ジェスカイカラーの広がりゆく海デッキに鞍替えして、カードをスリーブに入れてデッキリストを書くところまで行った(心配ご無用、そのデッキのビデオはちゃんと撮ってある)。それから寝た。
 悪夢を見続けてなかなかぐっすり眠れず、7時45分には目覚めた。そして、やっぱり親和を握ることにした。脳内でシミュレートしてみたが、ジェスカイ広がりゆく海を使った経験がなさすぎて、どうしたら良いかわからない状況が多すぎた。結局、その週の間回し続けた以下の75枚を登録した。石のような静寂? 来るなら来いよ。でもなるべくなら来るな。

Lands 17
4 ちらつき蛾の生息地
4 ダークスティールの城塞
3 空僻地
4 墨蛾の生息地
1 島
1 山
Creatures 27
4 電結の荒廃者
4 エーテリウムの達人
3 メムナイト
4 羽ばたき飛行機械
4 信号の邪魔者
4 鋼の監視者
4 大霊堂のスカージ
Spells 16
2 頑固な否認
4 頭蓋囲い
4 オパールのモックス
4 バネ葉の太鼓
2 溶接の壺
Sideboard
2 古の遺恨
3 刻まれた勇者
1 ギラプールの霊気格子
1 墓掘りの檻
1 はらわた撃ち
1 天啓の光
1 大祖始の遺産
1 海門の残骸
2 思考囲い
1 倦怠の宝珠
1 鞭打ち炎

 メインデッキに入っている頑固な否認は、4投しているエーテリウムの達人を守るのが仕事だ。ダメージレースが重視されるメタゲーム下で、達人は重要な役割を果たす。実戦では感電破と入れ替えることが多かったけれど。

・初日ドラフト

 これ(訳注──画像1を参照してください)は理想的に組めたデッキとは言いがたい。1パック目からはリンヴァーラを引いたが、上家がCraig Wescoeだから白は空いてない。だが他の色も事情が同じだった。シグナルというものが見つからなかったのだ。1パック目を終えた時点で、何のまとまりもないカードたちが手元にあった。2パック目では巨人の陥落を引き,色を決めるというよりも単にボムだからという理由でこれをピックした。この時点で、私が手にしたカードでもっとも強力なのはどうみても1枚の神話レアと1枚のレアだった。この2枚に託すことに決めた。何枚か数合わせのカードを含めて、"おなじみの"白赤無色コントロールが完成した。

 このドラフトは2-1で、デッキの出来から考えれば良い結果だろう。もちろん、2枚のボムが勝たせてくれた試合は数多い。

・2日目ドラフト

 さあ、このデッキ(訳注──画像2)はだいぶマシな代物だ。これだけマナシンクと再利用手段があれば、長期戦ではまず負けなし。このデッキは順調に相手を撃破し続けた──渡辺雄也という壁にぶち当たるまでは。 彼のデッキは対峙したくないと思っていた、まさにそのものだった:。武器の教練者2枚, 岩屋の装備役, 装備品と飛行を満載した赤白アグロだ。

 これも結果は2-1。

・構築

 本当のところ、↓以上に言うべきことはない。

 オパールのモックスは手に吸い付いた。
 石のような静寂はまったく見なかった。

 トーナメントの間ずっと引きが強く、対策にもほとんど出会わなかった。スイスで喫した唯一の負けはアドストームに対してで、 ファイレクシアの非生とサイドからのハーキルでまあ微不利なマッチアップだ。

 そして、トップ8でみんな大好きLSVに負けた。けれど今でも、親和対無色エルドラージは親和が有利だと思っている。オールインデッキ同士のマッチアップにおいては、猿人の指導霊を使っての四肢切断のタイミングやΦマナでのはらわた撃ちには難しい判断が必要になりミスがつきものだ。初手はどれも良かったが、オパールのモックスには一度も出会えなかった。接戦になったが、制したのはLSVだ。

 日曜日以来、どうしていきなりこんな結果を出せたのか、自問し続けている。答えは"経験"だ。手に馴染んだデッキを使える、モダンというフォーマットが大きな要因なのだ。でもモダンPTだけでは満足できない──スタンダードのPTは年3回あるのだから。マドリードから、私にとって新しい挑戦が始まる。デッキ探しに時間をかける替わりに早い段階でデッキを決めて、それを今まで以上の精度で使い込むつもりだ。

 ああ、そうそう、一応書いておくけどたぶんPT優勝デッキを握るチャンスがありながらそうしなかったのはミスなんだろうね。でも賞金1万ドルとプロポイント18点ってのは、そのミスを埋め合わせるのには十分すぎるくらいだよ。

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 以上です。メイナードさんについてびっくりしたのは、22歳という年齢です。なぜか年上だと思い込んでいましたので放送を見ていて愕然としました。ともあれ、訳し続けてきたこの日記シリーズはほとんど最高の形で終えることができたのではないでしょうか。スタンでの活躍にも期待です。
 CFBより。例によってカード画像はオミットされているので元記事(http://www.channelfireball.com/articles/eldrazi-sideboard-guide/)を参照しながらお読みください。
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 さあサイドボードの時間だ──主要なアーキタイプに対するサイドプランを見ていこう。

・対親和

先手の場合

Out 
猿人の指導霊 4
呪文滑り 2
作り変えるもの 1

In
はらわた撃ち 3
漸増爆弾 1
真髄の針 2
歪める嘆き 1

後手の場合

Out
虚空の杯 4
呪文滑り 2
作り変えるもの 1

In
同上   


 歪める嘆きは遅すぎるという意見があるかもしれないが、とにかく一つでも多くの鋼の監視者への対抗策が必要なのだ。真髄の針では頭蓋囲い、電結の荒廃者、鋼の監視者を刺す選択肢がある。ときには、どれを刺すのがベストか見極めるために待つことも必要だ。
 虚空の杯X=0は先手の際には極めて有効だが、後手の際にはほぼ意味がない。相手は0マナのパーマネントを展開し終えているだろうからね。もしゲーム中盤で杯をドローしてしまった場合は、PTの準決勝でイヴァンがディックマンにやったように、X=0で置くのがおすすめだ。こちらの手にも、プレイしたい1マナや2マナがあるだろうからね。
 先手の場合、猿人の指導霊は輝かない──初手に欲しいのはゴリラじゃなくてダメージレースに貢献するクリーチャーだ。先手ならスピードはそこまで求められない。

 ともかく、このマッチアップは五分だ。ダイスがモノを言う。相手が親和だとわかっていれば杯X=0でいいのだが、GPではそれも難しい。
 私個人は、親和に2勝1敗だった。チーム全体で言えば勝率はもっといい。

・対無色エルドラージ

Out 
虚空の杯 4
漸増爆弾 2

In
はらわた撃ち 3
忘却蒔き 3


 これは私がマイク・シグリストとのマッチで実際に行ったサイドボーディングだが、このマッチアップでのインアウトにはチーム内でも様々な意見が交わされた。ヘインは作り変えるものをブロックできて四肢切断の避雷針になる呪文滑りを好み、あるいは果てしなくデカくなった果てしなきものを処理できる唯一の札、漸増爆弾を残すべきだという意見もあり、はたまたはらわた撃ちをインしない──テンポはいいが有効な対象が少なすぎる──という見解もあった。
 しかし、虚空の杯のサイドアウトは共通見解だった。

・対青赤エルドラージ

Out 
虚空の杯 4
漸増爆弾 2
呪文滑り 2

In
はらわた撃ち 3
忘却蒔き 3
大祖始の遺産 2


 このマッチアップでははらわた撃ちが必須となる。ミミックに加えて、空中生成エルドラージという当てどころがあるからだ。作り変えるものが相手のデッキにおらず、四肢切断も枚数が少なめなので呪文滑りは完全に不要牌となる。
 3マナ域が複数とられているので漸増爆弾は有効にも思えるが、やはり遅すぎる。幽霊街で割った土地を追放してくれる大祖始の遺産は、忘却蒔きのお膳立てをしてくれるだろう。

 これはキツいマッチアップになる。速攻が唯一の勝ち筋である以上、怪しいハンドは積極的にマリガンするべきだ。

・対バーン

Out 
漸増爆弾 2

In
呪文滑り 1
歪める嘆き 1


 ガン有利なマッチアップ。まったく無傷で勝てることすらある。虚空の杯X=1でほぼ詰み、難題の予見者は神。負けるほうが難しい。


・対感染

Out 
作り変えるもの 4

In
呪文滑り 1
はらわた撃ち 3


 これも楽なマッチアップ。そして、杯をX=1で唱える前提ながらはらわた撃ちをサイドインする唯一のマッチアップでもある。私がやらかしたように、杯が自分のスペルもカウンターすることを忘れないように!


・対BG系──ジャンド

Out 
猿人の指導霊 4
虚空の杯 4
呪文滑り 1

In
漸増爆弾 1
忘却蒔き 3
大祖始の遺産4
歪める嘆き 1

・アブザン
Out 
猿人の指導霊 4
虚空の杯 4

In
漸増爆弾 1
忘却蒔き 3
大祖始の遺産4
 

 このマッチアップは五分。1ゲーム目は自分がアグロだが、2ゲーム目は基本的に遺産と忘却蒔きでコントロールプランを採ることになる。このプランでは、相手から奪った土地でウギンの目を回し始めるのがゴールだ。

 漸増爆弾は5/6になったタルモゴイフへの唯一の回答であり、またちらつき蛾で睨みを効かせられていない場合、スピリットトークンを一掃することもできる。

・対トロン

Out 
呪文滑り 2
漸増爆弾 2
四肢切断 2

In
真髄の針 2
忘却蒔き 3
歪める嘆き 1


 こちらのスピードと妨害手段──幽霊街と難題の予見者の存在──で、ガン有利なマッチアップだ。また、忘却石のスイープに怯えずに展開できるクロックとして、変わり谷も重要な役割を果たす。

 ワームとぐろエンジンは、もし着地してしまった場合対処不能だ。全軍突撃してブロックされた自分のクリーチャーを四肢切断するくらいしか、6点ゲインを防ぐ方法がないのだ。ワムコに対抗するために攻撃的な行動をサイドするという選択肢もあって一度議論の俎上に上ったのだが、モダンという広いフォーマットにおいて一つのデッキにしか効かないカードをサイドすることはできない、という結論に至った。

 さて、これで主要なマッチアップは見てきたと思うが──もっと知りたいことがあればコメントしてくれ、喜んで応えるよ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 以上です。サイドボーディングの記事は同時にメタ読みの記事でもあって非常に面白いんですが、個人的には御霊に全く触れられてないのが悲しいです。でも納得もできます。これダイス負けた時点で、バーンとか感染並みに終わってるマッチアップなのでは……。



 
 CFBより。元記事(http://www.channelfireball.com/articles/breaking-eldrazi/)を参照しながらお読みください。
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 このPTの準備をCFB及びFtFGの面々と協力してやれたのは幸運だった。我々はPT
一週間前にバンクーバーで合流し、ノンストップでモダンやドラフトの練習を始めた。
 モダンでは、メンバーの一人一人が二つデッキを選び、それに注力した。私はアドストームとバーンを選んだ。あの便利な2枚コンボの消滅によって青が梯子から落っこちていたので、アドストームは良い選択に思えた──しかし親和と感染に相性が悪く、"難題の予見者"の存在でエルドラージにも不利だった。バーンはバーンで良いデッキなのだが、なにしろ高速コンボと親和がガンで、BG系がサイドから投入してくるであろう"部族養い"や"ファイレクシアの非生"のようなカードに弱いのも難点だった。

・エルドラージ発見

 チームで色々なタイプのエルドラージデッキを試してみた:"未練ある魂"を投入した白黒型はイマイチで、昇華者をフィーチャーした黒単型もさほど良くなかった。そこで登場したのが"エルドラージのミミック"、"作り変えるもの"、"果てしなきもの"をフル投入した歪んだアグロというアイディアで、最初これは"古きものの活性"入りの黒緑で試されたのだが、ジェイコブ・ウィルソンが"猿人の指導霊"と"虚空の杯"を採用した無色バージョンを提案した。初めは、デッキに8枚投入されている"古えの墳墓"を引けなければイマイチなデッキに思えた。しかし、デッキが確かな地力を有していてバーンと感染に対して有利だということに気づくまでに、長くはかからなかった。

・カードチョイス
4 エルドラージのミミック
4 作り変えるもの
4 難題の予見者
4 現実を砕くもの
4 果てしなきもの
4 猿人の指導霊
4 虚空の杯
4 四肢切断
4 ウギンの目
4 エルドラージの寺院
16 他の土地
4 x ???


 4枚の空きスロットをどうするかはPT前夜まで謎のままで、そこに入るであろう"漸増爆弾"、"呪文滑り"、"忘却蒔き"の枚数についてみんなが納得する意見は出なかった。結局爆弾と滑りを2枚ずつ入れることになった。忘却蒔きが真価を発揮するのは、"大祖始の遺産"がボードにうまく定着した時だけだ。爆弾と滑りはそれぞれ活躍するマッチアップとそうでないマッチアップがある。こいつらは明らかにデッキ最弱のカードたちだが、まあしょうがなかった。

・ボツ案


次元の歪曲

 2マナ払って+3/-3というのは重いし、"タルモゴイフ"や"難題の予見者"といったクリーチャーに当たらない。ピン除去は4枚の"四肢切断"で十分だった。

歪める嘆き

 多芸なんだが、メインに入れるほどではない。サイドカードとしては、サイドアウトせざるを得ない役立たずのカードに代わって多くのマッチアップで投入できる優秀なカードだ。

・マナベース

 必須パーツでほとんど埋まってしまうので、マナベースを構築するのは簡単だった。"ちらつき蛾の生息地"はベストなミシュランだ──回避能力を持っていて、ブロックする時は2/2になり、"変わり谷"をパンプできる。"変わり谷"も同じくらい強いのだが、枠がなくて4枚フル投入できなかった。私は25枚めの土地を入れたくてたまらなかったのだが、チームメイトの誰も同意してくれなかった。
 4枚の"幽霊街"は絶対に必要だった。トロンは我々の仮想敵の最大勢力の一つで、トロンに対しクリーチャーを展開できさえすれば、"幽霊街"1枚でゲームが終わってしまう。
 環境に"幽霊街"が溢れかえっているため、2枚の荒地を採ることに決めた。5マナ6マナが多く含まれるデッキでは、マナベースに基本土地が含まれることは重要だ。また、荒地なしでは"血染めの月"の影響下で12枚ものクリーチャーがプレイできなくなってしまう。

・ボツ案


宝石の洞窟

 1ターン目から3マナ出せるというのは魅力的だし、初手になくてもこのデッキならそれほどがっかりすることもない。けれど、特に色マナがほしいわけでもないこのデッキには無用の長物だった。

地盤の際

 個人的にはあまり好きではなかったが、ジェイコブ・ウィルソンが推していた。私としてはゲームの初期段階で勝敗が決まるのが理想で、ミシュランのほうが安定して戦力になってくれた。

海門の残骸

 4マナで1枚引くというのはいささか遅く、このデッキには不要だった。

魂の洞窟

 たまくつは、我々が"希望を溺れさせるもの"や"塵の中を忍び寄るもの"入りの有色バージョンをテストしていたときにはメイン投入されていた。しかし、無色バージョンに至って特にこれをプレイする理由がなくなった。現状、打ち消し呪文はほとんど見かけないからだ。

 こうして最終的なリストが完成し、そのリストはPTOGWでイカれた勝率をあげ、トップ8に3人、トップ50に10人以上を送り込んだ。

Lands 24
2 荒れ地
4 エルドラージの寺院
4 ウギンの目
4 ちらつき蛾の生息地
3 変わり谷
3 ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
4 幽霊街

Creatures 26
4 エルドラージのミミック
4 作り変えるもの
4 難題の予見者
4 現実を砕くもの
4 果てしなきもの
4 猿人の指導霊
2 呪文滑り

Spells 10
4 虚空の杯
4 四肢切断
2 漸増爆弾

Sideboard
1 漸増爆弾
1 呪文滑り
3 忘却蒔き
4 大祖始の遺産
3 はらわた撃ち
2 真髄の針
1 歪める嘆き

 さて、このデッキは親戚の青赤エルドラージよりも強いのだろうか?

1)青赤エルドラージは無色タイプに対して有利だ。"希望を溺れさせるもの"はこのマッチアップでは最高のクリーチャーで、"空中生成エルドラージ"はほぼ2対1交換を取っていく。大会3日目、ジェイチェン・タオはそれを証明した──トップ8に進んだ我がチームメイト、75枚そっくり同じデッキを共有した中村、LSV、イヴァンの3人を倒すことによって。

2)青赤エルドラージは無色よりも親和に対して分が悪い。"虚空の杯"や"漸増爆弾"はサイドからだし、"ちらつき蛾"もない。加えて、無色が採用している"猿人の指導霊"は親和と速さ比べすることを可能にしている。これも3日目に証明された。無色は親和を2度負かしたが、青赤はパトリック・ディックマンの親和相手に瞬く間に0-3したのだ。

3)"希望を溺れさせるもの"のような重いカードが入っていないので、コンボデッキに対しては無色の方が強い。1ターン目"虚空の杯"X=1はバーンや感染、そして1マナキャントリップを大量投入したデッキを機能不全に陥らせる。"変わり谷"の存在でクロックも速い。

4)ミッドレンジに対しては、対処不能に近い"希望を溺れさせるもの"の存在で青赤のほうが有利だ。末裔トークンのおかげで、"ウギンの目"が回り出すのも速い。

5)プロツアーでは、グランプリと違って誰がどんなデッキをプレイしているのか知るのは容易い。これによって"虚空の杯"をX=0で置くかそれとも1ターン待ってX=1で置くかといった判断に迷うことが少なくなり、親和との相性がより良くなる。

 とまあ、ここまで見てきてもどちらが強いのかは判らない。プロツアーという舞台においては無色のほうが優れていたと自負しているが、もっと大規模なトーナメントでは事情が異なるかもしれない。

 サイドボードガイドは今週末までにはお届けできると思うが、こんなマッチアップではどうする、なんて質問があったら気軽にコメントしてくれ!
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 以上です。CFB信者としてはかなり楽しいPTでした。メモの字を見間違えて幽霊街起動してしまって負けた中村さんとか、LSVのトップはらわた撃ちとか、LSVのトップリアリティスマッシャーとか、コンバットで難題の予見者を守るために四肢切断を撃ったのになぜかコンバット終了時に難題の予見者を墓地に置くLSVとか見れましたし。多様性? なんのこったよ(すっとぼけ)。
 CFBより。ランキング部分は画像ありのほうが断然見やすいです。元記事(http://www.channelfireball.com/articles/the-diary-of-a-pro-player-final-limited-rankings/)を参照しながらお読みください。
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 月曜日にメキシコから戻ってきて、今はアトランタでマジック漬けの日々を過ごしている──プロツアーはもう目前だ。メキシコ行きの前後に、私はジョン・スターンと共にDecked Drafterと名付けられたアプリのためにリミテッド向けにカードのランキング付けを行った。その作業は弱いカードをも一枚一枚丁寧に解説するという苦行を私に強いたが、客観的な目線を与える手助けになってくれた。

 グランプリでは期待したほどいい結果を残せなかった。初日のシールドで組めたのは10点中5点くらいの平凡なデッキだった。青黒コントロールなのだが、完全除去が"忘却の一撃"だけで──残りはバウンスだった──テンポゲーをやるハメになったのだ。バウンスのうち2枚は"掃き飛ばし"で、これは当初よりもだいぶ評価を下げたカードだ。3マナかけて"時の引き潮"か"送還"どちらかの効果ってのは、あまり魅力的じゃあない。なんとか初日を6-3で終え、2日目に進んだ──それからの成績もひどいものだったが、まあ少なくとも2回タダでドラフトをやれたわけだ。やったね。

 その2回とも、白緑をドラフトした。最初の方は"鞍背ラガーク"3枚、"救援隊長"1枚、"戮力協心"1枚を含んだ素直な支援デッキで、決め手として"鼓舞する突撃"を用意していた。2回めの時はそれほど直線的ではなく、"ニッサの裁き"と"真っ逆さま"を2枚ずつと"エメリアの天使"を採用したもう少し長期戦向きのデッキだった。愛しの"鞍背ラガーク"はデッキにいたが、マナカーブはもう少し高かった。

 そして結果はどちらも1-2で、これには失望したなどというレベルではなかった。それでも私は、自分がたまたまその日ツイてなかっただけだと信じているし、緑白が勝てるアーキタイプだという意見にも変わりはない。

 グランプリやそれ以前のドラフト経験、それからDecked Drafterでの作業も合わせて、以前より自信を持って各カードを評価することができるようになった。まずは色別に、コモン/アンコモンの評価からご覧いただこう。

・色別コモン/アンコモンランキング

・白

孤立領域
救援隊長
鑽火の輝き
同盟者の援軍
オンドゥの戦僧侶
草原の滑空獣
復興の壁
探検の猛禽
コーの空登り
戮力協心
落とし子縛りの魔道士
コーの鎌使い
焼尽の光
マキンディの飛空士
抗戦
アーファの守護者
力強い跳躍
まばゆい反射
イオナの祝福
石鍛冶の見習い

・青

水脈の乱動
竜巻の種父
目潰しドローン
思考刈り
乱動の握撃
ジュワー島の報復者
封止の被膜
ウマーラの絡め捕り
掃き飛ばし
重力に逆らうもの
空間の擦り抜け
耕作ドローン
歪みの預言者
比較分析
一致団結
虚空の粉砕
古代ガニ
難解な干渉
否認
牙の贈り物

・黒

忘却の一撃
闇の掌握
本質を蝕むもの
惨状蒔き
殺戮ドローン
吸血鬼の特使
コジレックの叫び手
マラキールの占い師
コジレックの組み換え
異常な忍耐
空の探索者
搾取ドローン
粗暴な幻視
タールの罠
ズーラポートの鎖魔道士
鞭打つ触手
虚身呼び
終末の目撃
屍体の攪拌
荒々しい渇望

・赤

巨岩投下
怒りの具象化
食い荒らす炎
現実の流出
制止エルドラージ
ザダの猛士
無謀な奇襲隊
ゴブリンの自在駆け
コジレックの大口
抑圧的支配
アクームの炎探し
溶滓のへリオン
促進
攻性エルドラージ
カズールの徴収者
凶暴な力
ヴァラクートの涙
火花魔道士の計略
紅蓮術師の突撃
破壊的陥没孔

・緑

ニッサの裁き
種子の守護者
末裔招き
鞍背ラガーク
忍び寄りドローン
ベイロスの仔
模範提示
タジュールの道守
洞察の具象化
産み落とす巨体
壌土の幼生
イトグモの蔦
網投げ蜘蛛
収穫トロール
ムラーサの胎動
残された廃墟
梢喰らい
大自然の反撃
自然のままに
死すべき定め

・多色

反射魔道士
岸壁安息所の吸血鬼
鞭打ちドローン
武器の教練者
執拗な狩人
ジョラーガの援軍
嵐追いの魔道士
ベイロスの虚身
精神溶かし
虚空を継ぐもの

・神話&レア トップ15

保護者、リンヴァーラ
ゼンディカーの代弁者、ニッサ
炎呼び、チャンドラ
ゲトの裏切り者、カリタス
現実を砕くもの
終末を招くもの
ムンダの先兵
ゴブリンの闇住まい
変位エルドラージ
難題の予見者
巨人の陥落
押し潰す触手
遺跡潜り、ジョリー・エン
作り変えるもの
静寂を担うもの



 ゆくゆくは、これらのレアのうち、どこからが下に挙げるトップコモン/アンコモンに優先されるかもランク付けする予定だ。

・コモン/アンコモントップ15

忘却の一撃
孤立領域
闇の掌握
ニッサの裁き
巨岩投下
救援隊長
本質を蝕むもの
鑽火の輝き
怒りの具象化
食い荒らす炎
反射魔道士
岸壁安息所の吸血鬼
鞭打ちドローン
次元の歪曲
水脈の乱動

 そして、お待ちかねの……

・色の強さランキング

1.白
2.黒
3.赤
4.緑
5.青


 概して、この環境では早期に盤面を触れないデッキは生き残れない。アグレッシブにテンポ勝ちを狙ってくるアーキタイプがいくつも存在している──少なくとも、白絡みと赤絡みの組み合わせは全部そうだ。白黒は"アーファの守護者"と"吸血鬼の特使"で盤面を膠着させられるので少し事情が異なるが、しかしこのアーキタイプでも高速展開した同盟者で一気に相手を飲み込む戦略を取れる。2マナ生物の多くが十分なパワーを有していて、3マナの平均的生物を乗り越えられるか、相討ちを取れる──"忍び寄りドローン"や"殺戮ドローン"が浮かんでくるね。たとえそうできなくても、後半腐らない能力を持っている("ザダの猛士"や、"オンドゥの戦僧侶"が良い例だ)。支援カードや豊富に用意されたバットリも、2マナ生物を後半まで活かすための良い手段だ。

 現状では、こういうアグレッシブな戦術を何より再優先したい──黒緑ミッドレンジを別にすれば、自分の生物を素早く曲げ続けたいのだ。

 このランキングは、プロツアー前夜に行われるチームの最終ミーティングで少し変わるかもしれない。何が私の心を変えてくれるのか、それを知るのが楽しみだ!

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  以上です。このランキングには色々と思う所ありますが、長くなってしまっているので次回にでも書きましょう。青さん可哀想なのです。
スタンダードのギデオンの誓い By Reid Duke
 CFBより、Reid Duke兄貴の記事です。ぜひ元記事(http://www.channelfireball.com/articles/gideons-oath-in-standard/)も読んでみてください。
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 プレリリースの時期には、色んなものをよく観るようにしている。"見る"んじゃなく、"観る"。生物のコストがより低く、パワーはより高くなっていたり、過去の呪文の上位互換が登場している場合なんかは、誰でもそれにすぐ気づく。評価するのが難しいのは、ふだん僕たちが従っているルールを変えてしまうカードだ。ギデオンの誓いも、そんな一枚だ。

 PWに追加の忠誠度カウンターを与える効果は、実際どのくらい強いんだろうか。まあもちろん、PWの種類によるね──そのPWをプレイして、まずどの能力を起動するか? それに対し、相手はどう応ずるか? そんなセオリー次第だ。もしこのカードの存在によってPWが、普通は死ぬだろう場面を生き残ったり、新しい使い方を見出されるとしたら、ギデオンの誓いは素晴らしいカードになる可能性を秘めてるってことになる。

 ギデオンの誓いとゼンディカーの同盟者、ギデオンを組み合わせるってのはまあ誰でも思いつくだろう。ギデオンはスタン最強のPWで、誓いと同じ色で、誓ってる本人でもある。誓いがあればギデオンは即紋章を出しても生き残る。そして誓いが与えてくれるトークンが、ギデオンの身を守ってこのプレイを後押ししてくれる。

 ゼンディカーの代弁者、ニッサも、トークン戦略や追加の忠誠度カウンターに噛み合った存在だ。ニッサに弱点があるとすれば+1能力がそれほど強くない点だが、4つの忠誠度カウンターは、着地した瞬間から-2を連打させてくれるのだ。もちろん、2倍栄光の頌歌ではなく、+1から入ることもできる。この柔軟性は大きな魅力だ。

 ギデオンの誓いが与えてくれる2体のトークンはPWを護る壁となり、トークンで戦場を埋め尽くす戦略をプッシュする。出てくるトークンが同盟者で、結集や盟友と相性が良いのもポイントだ。スタンで活躍すること請け合いのPW2体にこんなボーナスを与えてくれるギデオンの誓いだが、オリジンの変身PWたちに追加カウンターを載せることももちろん可能だ(変身するために一度追放されて、それから場に出るからね)。ついでに、ドロモカの命令に対するデコイとしても機能することもある。"命令"は白がよく使うエンチャント除去、絹包みや隔離の場の天敵だ。そんなこんなを全部ひっくるめて、ギデオンの誓いはGWトークンにとって有力な新戦力と言えそうだ。

Lands 25
4 吹きさらしの荒野
4 溢れかえる岸辺
4 樹木茂る山麓
3 地平線の梢
4 平地
5 森
1 領事の鋳造所

Creatures 15
4 始まりの木の管理人
4 搭載歩行機械
2 棲み家の防御者
1 巨森の予見者、ニッサ
4 風番いのロック

Spells 20
3 ゼンディカーの代弁者、ニッサ
4 ゼンディカーの同盟者、ギデオン
3 ギデオンの誓い
2 荒野の確保
4 絹包み
2 勇敢な姿勢
2 ドロモカの命令

Sideboard
4 アラシンの僧侶
2 勇敢な姿勢
4 神聖な月光
2 正義のうねり
1 隔離の場
2 ドロモカの命令

 このレシピはアブザンアグロやGW大変異の強みを大部分そのままに残している。2色のマナベースはよりスムーズかつ粘り強く戦うことを可能にしている。コントロールに対してはいろいろな角度を一度に突くことができ、かつPWの存在感はスタン1だ。相手がPWに対して投げつけてくる脅威には、軽くて効率のいい除去が回答してくれる。

 ここまで書いてきたのは、ギデオンの誓いの活用法の一つにすぎない。古いフォーマットでも活躍の目はある──追加の忠誠度カウンターがあれば、野生語りのガラクやエルズペス・ティレル、テゼレット2種は場に出たターンに奥義を使えるようになるからね。

 ギデオンの誓いは、マジックの歴史上唯一無二の効果を持っている。そういうカードは、よーく観ておくに越したことはないね。

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 以上です。ギデオンの誓いは気になってるカードの一枚ですね。4マナ域には強いPWが多いですし。個人的には真面目な訪問者、ソリンとの咬み合いが素晴らしく好きです。モダンのBWトークンで試してみたい。

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