CFBより、LSVを準優勝まで導いた白ウィニーの構築に関する記事(https://www.channelfireball.com/articles/the-evolution-of-white-weenie-for-pro-tour-guilds-of-ravnica/)です。
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これを書いているのはPTラヴニカのギルド直前の水曜日で、僕がそこへ持ち込むデッキは先週の時点で決定していた──長らく、そんなにはやく決まることはなかったのだが。
調整の一環でMOリーグに潜っていた段階で、白ウィニーとよく当たることに気づいた。最初はその印象を気に留めることはなかった。デッキ全体で50tix強(これは現時点で殺戮の暴君2枚、再燃するフェニックス2枚、テフェリー1.5枚分に相当する)と安価で、かつ速く試合を消化できるメリットが有ることからグラインダーたちが効率を求めて持ち込んでいるのだろうと思っただけだ。
だがあるとき、僕は数マッチ連続でそのデッキに敗れた。つまり、自分でも試す必要があると気づくべきタイミングだった。
まずは、GPニュージャージーでサイモン・ニールセンがTOP32に入ったバージョンをコピーするところから始めた。
平地*20
空渡りの野心家*3
不屈の護衛*3
追われる証人*2
短角獣の歩哨*4
アダントの先兵*4
善意の騎士*4
ベナリアの軍司令*4
敬慕されるロクソドン*4
軍団の上陸*4
ベナリア史*4
議事会の裁き*2
暴君の敵対者、アジャニ*2
サイドボード
暴君の敵対者、アジャニ*2
不可解な終焉*3
報奨密偵*2
議事会の裁き*2
征服者の誇り*2
トカートリの儀仗兵*4
初陣を3-2で終え、僕はノートに印象をメモした。
敬慕されるロクソドンは好きじゃない。ブレ幅があるカードだ。最高のドローに恵まれたときは最強だが、+1/+1カウンターのためにアタックするチャンスをみすみす逃すことが許容される機会はそう多くない。ドローに恵まれない試合では最悪。殴り合うマッチアップで後手を引いたとき、ロクソドンを召集するために無防備になれば返しで待っているのは敗北だ。
善意の騎士もそれほど強くない。唯一活躍するのがゴルガリとのマッチアップだが野茂み歩きに対して無力だし、サイド後は黄金の死でも煤の儀式でも死ぬ。
1マナクリーチャーが多いのはいい。不屈の護衛はベナリアの軍司令を守ってくれるし、騎士だからベナリア史の3章でパンプできる。伝統的に白ウィニーの天敵といえばスイーパーだが、護衛とアダントの先兵のおかげでこのデッキは耐性がある。アダントの先兵はジェスカイコン相手には、封じ込めを引かれなければ単体で勝てるレベルに強いカードだ。
ベナリアの軍司令以外にもう1つ、全体をパンプする手段が欲しかった。カードプールに目を凝らしてみると、征服者の誇りは良さそうな選択肢だった。確実に昇殿できるように、また軍団の上陸を3ターン目にフリップできる確率を上げるためにいくつかの変更を加えたのが、下のリストだ。(画像1を参照)
納得の行かない箇所も何枚かあったが、この変更後11マッチを様々なデッキ相手に連取できた──何かをつかめたことは明らかだった。
この時点での印象メモ。
このデッキは環境のどんなデッキよりも速い。環境の速度が未だ定義されていない、ということが何よりも追い風だ。プレイヤーたちはみんな、絶滅の星や殺戮の暴君、発展+発破のような重いカードを撃つまでの猶予があると思い込んでいる。
イゼットフェニックスは現時点で一番メタに占める割合が多いアーキタイプだが、このデッキにとってはお客様と言える。序盤の2-3ターン、このデッキは戦場にコミットしない。4ターン目になにかデカブツが出てきても、こちらはただ議事会の裁きを当ててやればいいだけだ。サイド後は焦熱の連続砲撃が入ってくるだろうが、不屈の護衛、アダントの先兵、征服者の誇りは応じ手としてとても優秀だ。特に、相手がベナリア史のトークンをまとめて除去しようとしてこちらのターンにプレイしてきた場合には。
ゴルガリは、特にサイド後は厳しい。殺戮の暴君のような何もしないカードが抜け、代わりにスイーパーが入ってくるからだ。何よりも、野茂み歩きが問題になる。トカートリがこのマッチアップでは輝く。しかし、イゼットがこれだけいる以上、ゴルガリはメタゲームから締め出されるはずだ。ここの不利はまあ許容できる。アジャニはコントロールに対して強いんだが、速度重視でイージーウィンを狙うデッキのメインボードに4マナカードを入れたくはない。このデッキ最強の動きは土地を2-3枚とクリーチャーを山ほど引き、征服者の誇りで締めることなのだから。軽量飛行クリーチャーは、ゴルガリだけを見るなら序盤の探検クリーチャーを無視できるという点で採用価値がある。銀嘴のグリフィンはそういった意味で、ゴルガリに勝つためだけならプレイアブルだ。
アダントの先兵もまた、ライフにプレッシャーを掛けてこないコントロールとのマッチアップを支えてくれる。2回のクラリオン、2回の残骸の漂着を乗り越えてもなお、こちらにはボードを再構築するだけの時間がある。そして軍団の上陸がフリップしてしまえば、ほぼ負けはなくなるだろう。
鎖回しは頭痛の種だが、赤単をPTに持ち込むプレイヤーは少ないだろう。ここの不利も許容範囲内だ。
征服者の誇りはとても強いが、2枚は引きたくないカードの筆頭だ。おそらく、2枚と3枚の中間が適切な採用枚数なのだろう。通常はベナリア史と軍団の上陸のおかげで3-4ターン目にはだいたい昇殿できるが、パーマネントでない呪文を2枚以上引くのは致命的な遅れにつながる。
議事会の裁きは素晴らしい。これだけ小型クリーチャーがいれば0マナでプレイするのは簡単だし、ターボフォグのようなデッキに対しては捲り目になる。しかし基本的には黎明をもたらすものライラのようなパーマネントへのリアクションカードである以上、本質的にはサイドカードだ。1ゲーム目はただただ最速の勝利を目指したい。
不屈の護衛の能力は、ETBではないからトカートリがいても誘発する。
ベナリアの軍司令は単色にこだわる大きな理由だ。クリーチャーで殴り合うマッチアップではこいつの存在が決め手になる。
1マナ域の選定を煮詰める必要がある。フライヤーは必要だろうか? ハズダーの司法官のようなカードで、昇殿をもう少し推していくべきだろうか? 短角獣の歩哨は本当に採用に値するだろうか?
以下は、フライヤーをより重視し、昇殿にそれほどコミットしない別バージョンだ。(画像2)
僕は上のメモ書きを調整チームのコミュニティにすべてポストした。PTに持ち込むデッキに課せられる条件はすべてクリアしていたし見通しは明るかったが、MOCSでなんと白ウィニーが5つも上位入賞してしまったのだ。8-0のリストに目を通してみると英雄的援軍のために赤が散らしてあった。理論上の最速を目指すには、これはいいアイディアのように思えた。しかし、何事もそう単純ではないものだ。
まず、4ターン目に確実に赤マナを用意するために赤マナソース8枚というのは十分ではない。9も怪しい。10は必要だろう。だがベナリアの軍司令を4枚採用したデッキにただ山を突っ込むこともできない。2ターン目までに1マナクリーチャーを3枚プレイしたいデッキで、タップインランドを入れたいはずもなく──赤をタッチすれば当然デッキのランドカウントも上がるが、20枚1マナが入っているデッキに23枚のランドというのは多すぎる。
検討を重ねた結果、僕は征服者の誇りが単純に英雄的援軍と同じ役割(相手を最速で倒す)を果たしてくれるし、このデッキではより優れていると結論を下した。ランドカウントを上げる必要はないし、色事故を起こす危険性ももちろんない。
この頃ジョシュがチームに合流し、クリーチャーの選定段階に入った。最適解を導き出すのに、ジョシュには1時間あれば十分だった──いつもどおりに。僕たちが白ウィニーに与えた最大のイノベーションは、最初はジョークに過ぎなかった。MTGアリーナでもらえる構築済みデッキに白黒ライフゲインがあるのをご存知だろうか。巨大に膨れ上がったアジャニの群れ仲間に為す術もなく踏み潰されたご経験は? そう、アリーナスタンのみならずPTの舞台でもアジャニの群れ仲間はプレイアブルで、それどころか現在のメタゲームではとても強いことがわかったのだ。
以下が、僕がPTに向けてレジストしようとしているデッキだ。サイドボードは未だ検討段階だが、60枚中59枚は確定といってもいい(変更するとすれば、どこかを削って議事会の裁きをあと1枚追加することになるだろう)。
平地*12
断崖の避難所*4
聖なる鋳造所*4
空渡の野心家*4
不屈の護衛*4
レオニンの先兵*4
癒やし手の鷹*4
アジャニの群れ仲間*4
アダントの先兵*4
ベナリアの軍司令*4
軍団の上陸*4
征服者の誇り*3
ベナリア史*4
議事会の裁き*1
サイドボード
トカートリの儀仗兵*4
不可解な終焉*2
議事会の裁き*3
実験の狂乱*3
苦悩火*2
山*1
(訳註──実際に入賞したLSVのリストではメインの野心家が1枚議事会の裁きに変更されており、サイドボードはオレリアがいたり残骸の漂着があったりと、わりと違っています)
個人的には本当に赤を足す必要があるのかまだわかっていないが、現状チーム全体では必要だという方向でまとまっている。もし赤をたさないなら、サイドにはアジャニを用意しておくだろう。先に書いたようにリーグで調整していた段階ではアジャニで対コントロールを優位に進めることができたが、いまや白ウィニーは倒すべきデッキの一つになってしまっている以上、コントロールも対策を進めてきているはずだ。そうなれば実験の狂乱にアクセスしたい。もともと不利なゴルガリ相手にもサイドインできる。
不採用にしたカードについて。
追われる証人 単純にインパクト不足。飛んでいるわけでも、最初からライフゲインできるわけでもない。
薄暮まといの空渡り 同上。飛んではいるがインパクト不足。こいつを入れるなら1/2飛行を優先したい。鎖回し耐性がつくし、軍司令がいれば連続砲撃にも耐えるようになるからだ。
敬慕されるロクソドン ブレ幅が大きすぎる。なるべく安定する構築を模索はしたのだが、赤単やゴルガリ相手のサイドボード候補というところがせいぜいだった。そしてそのマッチアップではトカートリで十分だ。
悔恨する僧侶 弾けるドレイクへの回答になると勘違いして一時期試していたが、よくよく読んで見れば追放領域も数えるということに気づき解雇。
闘いの覚悟 MOで採用例をいくつか見たが、素直に征服者の誇りを採用すべきだ。
ライラ 土地が23枚のバージョンでサイドに忍ばせるのはいい選択だ。だが土地20では無理。
残骸の漂着 有利なときにプレイできないカードを入れるのは好きになれない。議事会の裁きのようなカードは有利でも不利でも活躍できる。勝つためにあと一手だけが必要なとき、残骸の漂着を引いてしまえば完璧な無駄ドローだ。また一般的な印象とは反対に、青赤や青単に対して有効なサイドとは言えない。そのマッチアップを残骸の漂着を構えるような展開にしたくはないからだ。
報奨密偵 ライラへの専用対策カードとしてサイドに用意されているのを見かける。ライラがどんなデッキにも2-3枚積まれるようなメタになればそれもいいだろう。だが現時点ではサイドの枠を割くだけの説得力はない。しかも、召喚酔いが解除されて初めて仕事をするクリーチャーに過ぎない。ボロス天使はショック、連続砲撃、溶岩コイルで露払いをしてから、ライラをプレイするだろう。
短角獣の歩哨、ハズダーの司法官 少しばかりブレ幅が大きい。それに、いまの1マナ域たちはどれも仕事をこなしている以上、変える必要性がない。護衛はスイーパーへの耐性を与え、レオニンの先兵と鷹と軍団の上陸はライフリンクで群れ仲間を育て、野心家は飛ぶ。
要するに、このデッキの現状にとても満足できているということだ。苦手なゴルガリはイゼットが追い出してくれるだろう。赤単はTier1と呼ばれるには優秀な低マナ域が少し足りない。
PT本戦ではイゼットと白アグロが最大勢力となると予想している。どちらも、この白ウィニーなら有利に戦える相手だ。英雄的援軍を採用しているバージョンは、自分が少し押されている状況から一気に捲りをかける能力にはこのデッキよりも長けているが、こちらのほうがライフリンクが多い直接対決においてはあまり有効な戦術ではない。25あるこちらのライフを5にするアタックは、返しで死ぬ状況ではできないからだ。また、育った群れ仲間を突破する手段が議事会の裁きしかない以上、相手はサイド後も議事会の裁きを残さざるを得ない。しかしウィニーのミラーにおいてそれは、マナ交換で損することを意味する。つまり、相手からすればあくまで平均的な働きしかしないカードをサイド後も残しドローすることにかけるか、もしくは群れ仲間1枚に完封されてしまうリスクを取るかの選択肢しかないわけだ。
そして何よりも征服者の誇りの存在がある。英雄的援軍は4マナソーサリーでいつも同じ仕事しかできないが、こちらは2マナのインスタントでありコンバットで相手がどう動いたかを確認してからプレイできるわけだ。さらに、20枚の1マナを擁するこちらのほうが、相手よりも半歩速い。23枚ランドが入っている相手のほうが、どうしたってフラッドには弱くなる。
緑をタッチすることも簡単なのだが、そうするだけの価値はないと思われる、ということにも触れておこう。ショックランドとコアランド、開花+華麗のおかげで森を1枚入れるだけで緑マナソースを十分確保するのは容易い。しかし実質ランドカウントである開花+華麗を採用すると土地を16-18枚まで切り詰める必要があり、しかも土地の代わりに開花+華麗を唯一のマナソースとして引いてしまった初手はマリガンせざるを得ない。また、コアランドと開花+華麗の組み合わせという初手もまた許容不可能だ。開花+華麗があっては、3ターン目に軍団の上陸をフリップさせることもできない。
もしセレズニアをプレイするなら、全く違うデッキにする他ない。クロールの銛撃ちを採用し、アジャニと組み合わせることで弾けるドレイク、オレリア、ライラといったフライヤーたちを次々撃ち落としていくのは悪くない。秋の騎士も不可解な終焉や議事会の裁きといったエンチャント除去に対し素晴らしいサイドボードになりうるが、トカートリには無力だ。最初は魅力的に思えた議事会の騎兵も、溶岩コイルで溢れている今のメタでは活躍は期待できない。封じ込めに対しとても強いということは、覚えておく価値があるが。
今は実験の狂乱がメインに入らないかどうか検討しているところだ。しかし、それをやってしまうと速度が落ち、有利マッチアップの勝率が若干下がってしまいそうに思える。調整中、僕たちはこのカードは前環境のハゾレトに近いな、と何度も言い合った。きっとPTで、僕たちが正しいのか間違っているのかわかるだろう。今のところ、コントロールに劇的に効くサイドボード、という立ち位置に僕個人としては満足だ。
PTが終わり75枚が確定したらこのデッキのサイドボーディングについても書くつもり(訳註──https://www.channelfireball.com/articles/white-weenie-sideboarding-guide/)だ。GPミルウォーキーに参加するみんなが読めるようにね。
ご精読をありがとう、そしてPTで僕たちがいい結果を残せますように!
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以上です。個人的にはサイドに残骸の漂着が入っているからこその、あのLSVのブラフにしびれました。
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これを書いているのはPTラヴニカのギルド直前の水曜日で、僕がそこへ持ち込むデッキは先週の時点で決定していた──長らく、そんなにはやく決まることはなかったのだが。
調整の一環でMOリーグに潜っていた段階で、白ウィニーとよく当たることに気づいた。最初はその印象を気に留めることはなかった。デッキ全体で50tix強(これは現時点で殺戮の暴君2枚、再燃するフェニックス2枚、テフェリー1.5枚分に相当する)と安価で、かつ速く試合を消化できるメリットが有ることからグラインダーたちが効率を求めて持ち込んでいるのだろうと思っただけだ。
だがあるとき、僕は数マッチ連続でそのデッキに敗れた。つまり、自分でも試す必要があると気づくべきタイミングだった。
まずは、GPニュージャージーでサイモン・ニールセンがTOP32に入ったバージョンをコピーするところから始めた。
平地*20
空渡りの野心家*3
不屈の護衛*3
追われる証人*2
短角獣の歩哨*4
アダントの先兵*4
善意の騎士*4
ベナリアの軍司令*4
敬慕されるロクソドン*4
軍団の上陸*4
ベナリア史*4
議事会の裁き*2
暴君の敵対者、アジャニ*2
サイドボード
暴君の敵対者、アジャニ*2
不可解な終焉*3
報奨密偵*2
議事会の裁き*2
征服者の誇り*2
トカートリの儀仗兵*4
初陣を3-2で終え、僕はノートに印象をメモした。
敬慕されるロクソドンは好きじゃない。ブレ幅があるカードだ。最高のドローに恵まれたときは最強だが、+1/+1カウンターのためにアタックするチャンスをみすみす逃すことが許容される機会はそう多くない。ドローに恵まれない試合では最悪。殴り合うマッチアップで後手を引いたとき、ロクソドンを召集するために無防備になれば返しで待っているのは敗北だ。
善意の騎士もそれほど強くない。唯一活躍するのがゴルガリとのマッチアップだが野茂み歩きに対して無力だし、サイド後は黄金の死でも煤の儀式でも死ぬ。
1マナクリーチャーが多いのはいい。不屈の護衛はベナリアの軍司令を守ってくれるし、騎士だからベナリア史の3章でパンプできる。伝統的に白ウィニーの天敵といえばスイーパーだが、護衛とアダントの先兵のおかげでこのデッキは耐性がある。アダントの先兵はジェスカイコン相手には、封じ込めを引かれなければ単体で勝てるレベルに強いカードだ。
ベナリアの軍司令以外にもう1つ、全体をパンプする手段が欲しかった。カードプールに目を凝らしてみると、征服者の誇りは良さそうな選択肢だった。確実に昇殿できるように、また軍団の上陸を3ターン目にフリップできる確率を上げるためにいくつかの変更を加えたのが、下のリストだ。(画像1を参照)
納得の行かない箇所も何枚かあったが、この変更後11マッチを様々なデッキ相手に連取できた──何かをつかめたことは明らかだった。
この時点での印象メモ。
このデッキは環境のどんなデッキよりも速い。環境の速度が未だ定義されていない、ということが何よりも追い風だ。プレイヤーたちはみんな、絶滅の星や殺戮の暴君、発展+発破のような重いカードを撃つまでの猶予があると思い込んでいる。
イゼットフェニックスは現時点で一番メタに占める割合が多いアーキタイプだが、このデッキにとってはお客様と言える。序盤の2-3ターン、このデッキは戦場にコミットしない。4ターン目になにかデカブツが出てきても、こちらはただ議事会の裁きを当ててやればいいだけだ。サイド後は焦熱の連続砲撃が入ってくるだろうが、不屈の護衛、アダントの先兵、征服者の誇りは応じ手としてとても優秀だ。特に、相手がベナリア史のトークンをまとめて除去しようとしてこちらのターンにプレイしてきた場合には。
ゴルガリは、特にサイド後は厳しい。殺戮の暴君のような何もしないカードが抜け、代わりにスイーパーが入ってくるからだ。何よりも、野茂み歩きが問題になる。トカートリがこのマッチアップでは輝く。しかし、イゼットがこれだけいる以上、ゴルガリはメタゲームから締め出されるはずだ。ここの不利はまあ許容できる。アジャニはコントロールに対して強いんだが、速度重視でイージーウィンを狙うデッキのメインボードに4マナカードを入れたくはない。このデッキ最強の動きは土地を2-3枚とクリーチャーを山ほど引き、征服者の誇りで締めることなのだから。軽量飛行クリーチャーは、ゴルガリだけを見るなら序盤の探検クリーチャーを無視できるという点で採用価値がある。銀嘴のグリフィンはそういった意味で、ゴルガリに勝つためだけならプレイアブルだ。
アダントの先兵もまた、ライフにプレッシャーを掛けてこないコントロールとのマッチアップを支えてくれる。2回のクラリオン、2回の残骸の漂着を乗り越えてもなお、こちらにはボードを再構築するだけの時間がある。そして軍団の上陸がフリップしてしまえば、ほぼ負けはなくなるだろう。
鎖回しは頭痛の種だが、赤単をPTに持ち込むプレイヤーは少ないだろう。ここの不利も許容範囲内だ。
征服者の誇りはとても強いが、2枚は引きたくないカードの筆頭だ。おそらく、2枚と3枚の中間が適切な採用枚数なのだろう。通常はベナリア史と軍団の上陸のおかげで3-4ターン目にはだいたい昇殿できるが、パーマネントでない呪文を2枚以上引くのは致命的な遅れにつながる。
議事会の裁きは素晴らしい。これだけ小型クリーチャーがいれば0マナでプレイするのは簡単だし、ターボフォグのようなデッキに対しては捲り目になる。しかし基本的には黎明をもたらすものライラのようなパーマネントへのリアクションカードである以上、本質的にはサイドカードだ。1ゲーム目はただただ最速の勝利を目指したい。
不屈の護衛の能力は、ETBではないからトカートリがいても誘発する。
ベナリアの軍司令は単色にこだわる大きな理由だ。クリーチャーで殴り合うマッチアップではこいつの存在が決め手になる。
1マナ域の選定を煮詰める必要がある。フライヤーは必要だろうか? ハズダーの司法官のようなカードで、昇殿をもう少し推していくべきだろうか? 短角獣の歩哨は本当に採用に値するだろうか?
以下は、フライヤーをより重視し、昇殿にそれほどコミットしない別バージョンだ。(画像2)
僕は上のメモ書きを調整チームのコミュニティにすべてポストした。PTに持ち込むデッキに課せられる条件はすべてクリアしていたし見通しは明るかったが、MOCSでなんと白ウィニーが5つも上位入賞してしまったのだ。8-0のリストに目を通してみると英雄的援軍のために赤が散らしてあった。理論上の最速を目指すには、これはいいアイディアのように思えた。しかし、何事もそう単純ではないものだ。
まず、4ターン目に確実に赤マナを用意するために赤マナソース8枚というのは十分ではない。9も怪しい。10は必要だろう。だがベナリアの軍司令を4枚採用したデッキにただ山を突っ込むこともできない。2ターン目までに1マナクリーチャーを3枚プレイしたいデッキで、タップインランドを入れたいはずもなく──赤をタッチすれば当然デッキのランドカウントも上がるが、20枚1マナが入っているデッキに23枚のランドというのは多すぎる。
検討を重ねた結果、僕は征服者の誇りが単純に英雄的援軍と同じ役割(相手を最速で倒す)を果たしてくれるし、このデッキではより優れていると結論を下した。ランドカウントを上げる必要はないし、色事故を起こす危険性ももちろんない。
この頃ジョシュがチームに合流し、クリーチャーの選定段階に入った。最適解を導き出すのに、ジョシュには1時間あれば十分だった──いつもどおりに。僕たちが白ウィニーに与えた最大のイノベーションは、最初はジョークに過ぎなかった。MTGアリーナでもらえる構築済みデッキに白黒ライフゲインがあるのをご存知だろうか。巨大に膨れ上がったアジャニの群れ仲間に為す術もなく踏み潰されたご経験は? そう、アリーナスタンのみならずPTの舞台でもアジャニの群れ仲間はプレイアブルで、それどころか現在のメタゲームではとても強いことがわかったのだ。
以下が、僕がPTに向けてレジストしようとしているデッキだ。サイドボードは未だ検討段階だが、60枚中59枚は確定といってもいい(変更するとすれば、どこかを削って議事会の裁きをあと1枚追加することになるだろう)。
平地*12
断崖の避難所*4
聖なる鋳造所*4
空渡の野心家*4
不屈の護衛*4
レオニンの先兵*4
癒やし手の鷹*4
アジャニの群れ仲間*4
アダントの先兵*4
ベナリアの軍司令*4
軍団の上陸*4
征服者の誇り*3
ベナリア史*4
議事会の裁き*1
サイドボード
トカートリの儀仗兵*4
不可解な終焉*2
議事会の裁き*3
実験の狂乱*3
苦悩火*2
山*1
(訳註──実際に入賞したLSVのリストではメインの野心家が1枚議事会の裁きに変更されており、サイドボードはオレリアがいたり残骸の漂着があったりと、わりと違っています)
個人的には本当に赤を足す必要があるのかまだわかっていないが、現状チーム全体では必要だという方向でまとまっている。もし赤をたさないなら、サイドにはアジャニを用意しておくだろう。先に書いたようにリーグで調整していた段階ではアジャニで対コントロールを優位に進めることができたが、いまや白ウィニーは倒すべきデッキの一つになってしまっている以上、コントロールも対策を進めてきているはずだ。そうなれば実験の狂乱にアクセスしたい。もともと不利なゴルガリ相手にもサイドインできる。
不採用にしたカードについて。
追われる証人 単純にインパクト不足。飛んでいるわけでも、最初からライフゲインできるわけでもない。
薄暮まといの空渡り 同上。飛んではいるがインパクト不足。こいつを入れるなら1/2飛行を優先したい。鎖回し耐性がつくし、軍司令がいれば連続砲撃にも耐えるようになるからだ。
敬慕されるロクソドン ブレ幅が大きすぎる。なるべく安定する構築を模索はしたのだが、赤単やゴルガリ相手のサイドボード候補というところがせいぜいだった。そしてそのマッチアップではトカートリで十分だ。
悔恨する僧侶 弾けるドレイクへの回答になると勘違いして一時期試していたが、よくよく読んで見れば追放領域も数えるということに気づき解雇。
闘いの覚悟 MOで採用例をいくつか見たが、素直に征服者の誇りを採用すべきだ。
ライラ 土地が23枚のバージョンでサイドに忍ばせるのはいい選択だ。だが土地20では無理。
残骸の漂着 有利なときにプレイできないカードを入れるのは好きになれない。議事会の裁きのようなカードは有利でも不利でも活躍できる。勝つためにあと一手だけが必要なとき、残骸の漂着を引いてしまえば完璧な無駄ドローだ。また一般的な印象とは反対に、青赤や青単に対して有効なサイドとは言えない。そのマッチアップを残骸の漂着を構えるような展開にしたくはないからだ。
報奨密偵 ライラへの専用対策カードとしてサイドに用意されているのを見かける。ライラがどんなデッキにも2-3枚積まれるようなメタになればそれもいいだろう。だが現時点ではサイドの枠を割くだけの説得力はない。しかも、召喚酔いが解除されて初めて仕事をするクリーチャーに過ぎない。ボロス天使はショック、連続砲撃、溶岩コイルで露払いをしてから、ライラをプレイするだろう。
短角獣の歩哨、ハズダーの司法官 少しばかりブレ幅が大きい。それに、いまの1マナ域たちはどれも仕事をこなしている以上、変える必要性がない。護衛はスイーパーへの耐性を与え、レオニンの先兵と鷹と軍団の上陸はライフリンクで群れ仲間を育て、野心家は飛ぶ。
要するに、このデッキの現状にとても満足できているということだ。苦手なゴルガリはイゼットが追い出してくれるだろう。赤単はTier1と呼ばれるには優秀な低マナ域が少し足りない。
PT本戦ではイゼットと白アグロが最大勢力となると予想している。どちらも、この白ウィニーなら有利に戦える相手だ。英雄的援軍を採用しているバージョンは、自分が少し押されている状況から一気に捲りをかける能力にはこのデッキよりも長けているが、こちらのほうがライフリンクが多い直接対決においてはあまり有効な戦術ではない。25あるこちらのライフを5にするアタックは、返しで死ぬ状況ではできないからだ。また、育った群れ仲間を突破する手段が議事会の裁きしかない以上、相手はサイド後も議事会の裁きを残さざるを得ない。しかしウィニーのミラーにおいてそれは、マナ交換で損することを意味する。つまり、相手からすればあくまで平均的な働きしかしないカードをサイド後も残しドローすることにかけるか、もしくは群れ仲間1枚に完封されてしまうリスクを取るかの選択肢しかないわけだ。
そして何よりも征服者の誇りの存在がある。英雄的援軍は4マナソーサリーでいつも同じ仕事しかできないが、こちらは2マナのインスタントでありコンバットで相手がどう動いたかを確認してからプレイできるわけだ。さらに、20枚の1マナを擁するこちらのほうが、相手よりも半歩速い。23枚ランドが入っている相手のほうが、どうしたってフラッドには弱くなる。
緑をタッチすることも簡単なのだが、そうするだけの価値はないと思われる、ということにも触れておこう。ショックランドとコアランド、開花+華麗のおかげで森を1枚入れるだけで緑マナソースを十分確保するのは容易い。しかし実質ランドカウントである開花+華麗を採用すると土地を16-18枚まで切り詰める必要があり、しかも土地の代わりに開花+華麗を唯一のマナソースとして引いてしまった初手はマリガンせざるを得ない。また、コアランドと開花+華麗の組み合わせという初手もまた許容不可能だ。開花+華麗があっては、3ターン目に軍団の上陸をフリップさせることもできない。
もしセレズニアをプレイするなら、全く違うデッキにする他ない。クロールの銛撃ちを採用し、アジャニと組み合わせることで弾けるドレイク、オレリア、ライラといったフライヤーたちを次々撃ち落としていくのは悪くない。秋の騎士も不可解な終焉や議事会の裁きといったエンチャント除去に対し素晴らしいサイドボードになりうるが、トカートリには無力だ。最初は魅力的に思えた議事会の騎兵も、溶岩コイルで溢れている今のメタでは活躍は期待できない。封じ込めに対しとても強いということは、覚えておく価値があるが。
今は実験の狂乱がメインに入らないかどうか検討しているところだ。しかし、それをやってしまうと速度が落ち、有利マッチアップの勝率が若干下がってしまいそうに思える。調整中、僕たちはこのカードは前環境のハゾレトに近いな、と何度も言い合った。きっとPTで、僕たちが正しいのか間違っているのかわかるだろう。今のところ、コントロールに劇的に効くサイドボード、という立ち位置に僕個人としては満足だ。
PTが終わり75枚が確定したらこのデッキのサイドボーディングについても書くつもり(訳註──https://www.channelfireball.com/articles/white-weenie-sideboarding-guide/)だ。GPミルウォーキーに参加するみんなが読めるようにね。
ご精読をありがとう、そしてPTで僕たちがいい結果を残せますように!
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以上です。個人的にはサイドに残骸の漂着が入っているからこその、あのLSVのブラフにしびれました。
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