ドラフトリーグの問題点に反論する byMatt Sperling
2016年9月3日 翻訳CFBより、MOでのドラフトリーグ導入に関する記事の二つ目にして先の記事へのアンサーです。元記事(http://www.channelfireball.com/articles/draft-leagues-are-great/)もぜひ。
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MOで新しく始まるドラフトリーグは、ドラフトのいいところとリーグのいいところをカップリングしたものだ。リーグの利点はとどのつまり、1マッチだろうと3マッチだろうと、空いた時間にプレイできることに尽きる。従来の形式のドラフトも楽しかったが、タイミングの問題はいつもつきまとっていた。構築リーグの手軽さを知ってしまった人間としては、ドラフトリーグで最初のデッキをドラフトするのが待ちきれないよ。
さて、通常のブースタードラフトがもつ機微の全てが、リーグにも継承されているのかと問われれば、とても「そうだ」とは答えられない。同僚のサム=パーディはそのマイナス面に関する記事を書いている。だけど、多くのドラフトプレイヤーが見落としているのは、8人ドラフトだろうとリーグドラフトだろうと、デッキをドラフトするということは結局のところ協調する訓練が大部分なんだということだ。このことは、8人ドラフトでは直感に反しているし、ドラフトリーグというフォーマットでは極めて直感的だ。そしてこの(あくまで感覚的にすぎない)違いが、リーグ導入に関する以下のようなネガティブな反応を引き出している。
・パックの格差がどうしようもない
"ドラフトするパックそのものが弱いこともある。そんなときに強いパックからドラフトしたデッキとペアリングされるのは不公平だし、それはドラフトというよりシールドだ" こういう認識は事実にもとづいているとはいえない。ドラフトする際に目にするパックの強さの平均値(そして、色ごとの強さの平均値)は、ドラフトごとに必ず異なっている。たしかに弱いパックと呼ばれるものは存在するし、それによって卓全体のデッキのレベルが他の卓よりも低くなることだってある。でも、"パックの強さの差は存在する"という事実のみからは、結論は得られない。その強さの差が、ドラフトにどの程度影響するのかが争点だ。
僕の考えでは、パックの強さの影響というのは微々たるものだ。通常のドラフトでも、テーブルの片側のパックだけが強くて結果的にそちら側のプレイヤーのデッキの完成度が高くなる、ということはしょっちゅう起こる。8人ドラフトで反対側に座っていたプレイヤーと対峙したとき、もちろん二人は同じパックを見ているわけだけど、そのタイミングが違いすぎる。相手にとってのゴッドパックが自分にとってゴッドパックであるとは限らないわけだ。それなのに、1番席に座っていたプレイヤーと5番席に座っていたプレイヤーが対戦するとき、"シールド戦みたいに格差がある"というような言い方をする奴はいない。この点において、シールドリーグと通常のシールドには大きな違いはないんだ。
そもそもパックの強さというのはそれぞれ無関係で、独立したものだ。これは言葉の問題で、"このドラフトは弱かった"という言い方をすると、まるで強いドラフトとそうでないドラフトがあるかのような感覚に陥る。実際にはドラフトごとに数多くの(強さのまちまちな)ブースターが開封される以上、カードの質というのはそれほどの差異を生み出さない。
・ヘイトドラフトや、トリックの記憶が機能しない
ドラフト中に流したスイーパーやバットリを記憶するのが重要なスキルで、これがリーグでは役に立たない、というのは事実だ。また、リーグでは自分のデッキにとって致命的なカードをヘイトドラフトできない(しても意味がない)というのもその通り。そう、パックの強さの問題と同じく、これも影響があるのは間違いないんだ──では、その影響というのはどの程度のものなのだろうか?
世界一のドラフトプレイヤーにとっては、記憶やヘイトによってアドバンテージを得る機会はとても多いだろうけど、それがドラフトの決め手になることはそう多くない。一般的なプレイヤーに至っては目に見える効果を得られることはまずないだろうし、あったとしてもほんの時折、労力に見合わないごく小さなアドバンテージが得られるだけだ。
通常のドラフトでヘイトドラフトが過大評価されていると思う理由は、要するにそれが機能するシチュエーションがごく限定されているからだ。何しろ、ヘイトしたカードが相手のデッキに採用され、そのプレイヤーとマッチングされ、相手がそれを引き、かつそのカードの価値がもうプレイされているカードよりも高いという場合においてのみ、ヘイトは機能する。そういう状況になる可能性は、同じ番目で自分にとって有効なカードを選んでそれが役に立つ可能性に比べればかなり低い。
・普通のドラフトでは協調しつつ完璧なデッキを組めば3-0は容易いが、リーグではそうはいかない
これも、通常のドラフトで過剰に捉えられ、ドラフトリーグについて考えている人々をつまずかせている問題だ。"完璧なデッキ"──シナジーに満ち、23枚のソリッドなスペルと理想のマナカーブ、こういうデッキは思ったよりも3-0しないもの。土地事故は常につきまとい、立ちはだかるのは自らの完璧なデッキを組み上げた対戦相手、ボムが理不尽にゲームを終わらせることだってある。これがリミテッドだ──何が起こるかわからない。
もし、「これから参加する全てのPT、GP2日目のドラフトで自分は常に卓の中で2番目に強いデッキを組むことができるが、代償として自分の下家が最強のデッキを組む」ことが提案されたとしたら、躊躇いなく、それを受け入れるだろう。
ドラフトの卓に着いたとき、僕はそれを目標としている(もちろん実際には、自分が最高のデッキを組み上げる可能性を排除する必要はないわけだけど)。本来、隣りに座っている人のデッキを強くしようとする義理はないが、ドラフトでは協調こそが全てだ。自分のデッキの質は、上下のデッキの質と当然相関する。色やアーキタイプを取り合いはお互いに不利益しか産み出さない。最高のデッキを組むことばかりに頭が行って、この協調と取り合いという視点を失ってしまうのは大きなミステイクだ。
ドラフトリーグでは、協調が大事だということは通常のドラフトよりも明確で、それを無視することのダメージもより大きそうに思えるが、上のレベルに行けば重要性というのは8人テーブルだろうとリーグだろうと変わらない。つまり、ここでもまた、リーグも従来のドラフトも変わらないって結論が導き出せるわけだ。
ドラフトリーグを諸手を挙げて歓迎しようじゃないか。リーグじゃいい練習はできないし、楽しくないなんて意見に耳を傾ける必要はない。そういうことを言う人間は、影響の大きさを計り間違えているんだ。
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以上です。読んでいただければわかると思いますが、この2つの記事は徹頭徹尾同じことしか書かれていません。リーグ制云々への興味よりもむしろ、このコインの表と裏のような記事の性格が面白くて、訳してみました。ドラフトの本質のようなものを理解する助けになれば幸いです。
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MOで新しく始まるドラフトリーグは、ドラフトのいいところとリーグのいいところをカップリングしたものだ。リーグの利点はとどのつまり、1マッチだろうと3マッチだろうと、空いた時間にプレイできることに尽きる。従来の形式のドラフトも楽しかったが、タイミングの問題はいつもつきまとっていた。構築リーグの手軽さを知ってしまった人間としては、ドラフトリーグで最初のデッキをドラフトするのが待ちきれないよ。
さて、通常のブースタードラフトがもつ機微の全てが、リーグにも継承されているのかと問われれば、とても「そうだ」とは答えられない。同僚のサム=パーディはそのマイナス面に関する記事を書いている。だけど、多くのドラフトプレイヤーが見落としているのは、8人ドラフトだろうとリーグドラフトだろうと、デッキをドラフトするということは結局のところ協調する訓練が大部分なんだということだ。このことは、8人ドラフトでは直感に反しているし、ドラフトリーグというフォーマットでは極めて直感的だ。そしてこの(あくまで感覚的にすぎない)違いが、リーグ導入に関する以下のようなネガティブな反応を引き出している。
・パックの格差がどうしようもない
"ドラフトするパックそのものが弱いこともある。そんなときに強いパックからドラフトしたデッキとペアリングされるのは不公平だし、それはドラフトというよりシールドだ" こういう認識は事実にもとづいているとはいえない。ドラフトする際に目にするパックの強さの平均値(そして、色ごとの強さの平均値)は、ドラフトごとに必ず異なっている。たしかに弱いパックと呼ばれるものは存在するし、それによって卓全体のデッキのレベルが他の卓よりも低くなることだってある。でも、"パックの強さの差は存在する"という事実のみからは、結論は得られない。その強さの差が、ドラフトにどの程度影響するのかが争点だ。
僕の考えでは、パックの強さの影響というのは微々たるものだ。通常のドラフトでも、テーブルの片側のパックだけが強くて結果的にそちら側のプレイヤーのデッキの完成度が高くなる、ということはしょっちゅう起こる。8人ドラフトで反対側に座っていたプレイヤーと対峙したとき、もちろん二人は同じパックを見ているわけだけど、そのタイミングが違いすぎる。相手にとってのゴッドパックが自分にとってゴッドパックであるとは限らないわけだ。それなのに、1番席に座っていたプレイヤーと5番席に座っていたプレイヤーが対戦するとき、"シールド戦みたいに格差がある"というような言い方をする奴はいない。この点において、シールドリーグと通常のシールドには大きな違いはないんだ。
そもそもパックの強さというのはそれぞれ無関係で、独立したものだ。これは言葉の問題で、"このドラフトは弱かった"という言い方をすると、まるで強いドラフトとそうでないドラフトがあるかのような感覚に陥る。実際にはドラフトごとに数多くの(強さのまちまちな)ブースターが開封される以上、カードの質というのはそれほどの差異を生み出さない。
・ヘイトドラフトや、トリックの記憶が機能しない
ドラフト中に流したスイーパーやバットリを記憶するのが重要なスキルで、これがリーグでは役に立たない、というのは事実だ。また、リーグでは自分のデッキにとって致命的なカードをヘイトドラフトできない(しても意味がない)というのもその通り。そう、パックの強さの問題と同じく、これも影響があるのは間違いないんだ──では、その影響というのはどの程度のものなのだろうか?
世界一のドラフトプレイヤーにとっては、記憶やヘイトによってアドバンテージを得る機会はとても多いだろうけど、それがドラフトの決め手になることはそう多くない。一般的なプレイヤーに至っては目に見える効果を得られることはまずないだろうし、あったとしてもほんの時折、労力に見合わないごく小さなアドバンテージが得られるだけだ。
通常のドラフトでヘイトドラフトが過大評価されていると思う理由は、要するにそれが機能するシチュエーションがごく限定されているからだ。何しろ、ヘイトしたカードが相手のデッキに採用され、そのプレイヤーとマッチングされ、相手がそれを引き、かつそのカードの価値がもうプレイされているカードよりも高いという場合においてのみ、ヘイトは機能する。そういう状況になる可能性は、同じ番目で自分にとって有効なカードを選んでそれが役に立つ可能性に比べればかなり低い。
・普通のドラフトでは協調しつつ完璧なデッキを組めば3-0は容易いが、リーグではそうはいかない
これも、通常のドラフトで過剰に捉えられ、ドラフトリーグについて考えている人々をつまずかせている問題だ。"完璧なデッキ"──シナジーに満ち、23枚のソリッドなスペルと理想のマナカーブ、こういうデッキは思ったよりも3-0しないもの。土地事故は常につきまとい、立ちはだかるのは自らの完璧なデッキを組み上げた対戦相手、ボムが理不尽にゲームを終わらせることだってある。これがリミテッドだ──何が起こるかわからない。
もし、「これから参加する全てのPT、GP2日目のドラフトで自分は常に卓の中で2番目に強いデッキを組むことができるが、代償として自分の下家が最強のデッキを組む」ことが提案されたとしたら、躊躇いなく、それを受け入れるだろう。
ドラフトの卓に着いたとき、僕はそれを目標としている(もちろん実際には、自分が最高のデッキを組み上げる可能性を排除する必要はないわけだけど)。本来、隣りに座っている人のデッキを強くしようとする義理はないが、ドラフトでは協調こそが全てだ。自分のデッキの質は、上下のデッキの質と当然相関する。色やアーキタイプを取り合いはお互いに不利益しか産み出さない。最高のデッキを組むことばかりに頭が行って、この協調と取り合いという視点を失ってしまうのは大きなミステイクだ。
ドラフトリーグでは、協調が大事だということは通常のドラフトよりも明確で、それを無視することのダメージもより大きそうに思えるが、上のレベルに行けば重要性というのは8人テーブルだろうとリーグだろうと変わらない。つまり、ここでもまた、リーグも従来のドラフトも変わらないって結論が導き出せるわけだ。
ドラフトリーグを諸手を挙げて歓迎しようじゃないか。リーグじゃいい練習はできないし、楽しくないなんて意見に耳を傾ける必要はない。そういうことを言う人間は、影響の大きさを計り間違えているんだ。
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以上です。読んでいただければわかると思いますが、この2つの記事は徹頭徹尾同じことしか書かれていません。リーグ制云々への興味よりもむしろ、このコインの表と裏のような記事の性格が面白くて、訳してみました。ドラフトの本質のようなものを理解する助けになれば幸いです。
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