ワイドに行こうぜ By Brian Braun-Duin
2016年2月23日 翻訳 CFBより。元記事(http://www.channelfireball.com/articles/going-wide/)もぜひご一読を。
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マジックの世界には、あるデッキが採る戦略を一言で表すスラングが存在する。たとえば、相手が持つ最大値を上回る脅威を内蔵し、とにかくマナを伸ばしてそいつを叩きつけることを目標とするデッキは"ランプ"と呼ばれる。"アグロ"デッキの多くは最大値と平均コストを低く設定し、敵が追いつけないくらいの速さを武器にする。
どんな相手も純粋なカードパワーで叩き潰そうとする、アブザンのようなデッキは対戦相手を"スルー"するデッキだ。包囲サイの強さはごくシンプルなのだ。また、コントロール手段や強力なシステムを備えた"ロング"デッキは、自らの勝ち手段が回り始めるまでゲームを長引かせることを目標とする。
そしてもう一つ、忘れてはいけない戦略がある。先の4つほど普遍的で馴染み深いわけではないが、闇の隆盛で未練ある魂が刷られて以来、私の心を捉えて離さない戦略だ。その名は"ワイド"。小さなトークンとクリーチャーで盤面を埋め尽くし、そいつらをまとめてパンプするのだ。相手がサイズで上回っていても気にしない。戦闘でこちらの手勢が何体かやられようとも、残りで押しつぶしてしまえばいいのだ。絶え間ない飢餓、ウラモグはでっかいお友達だが、一度にブロックできるゴブリントークンの数は、やはり1体でしかないのだ。
現スタンダードの"ワイド"戦略はここから始まった:
Atarka Tokens Josh Utter-Leyton, 9th place in a MOCS a week ago
Lands 23
4 血染めのぬかるみ
2 燃えがらの林間地
1 森
11山
1 吹きさらしの荒野
4 樹木茂る山麓
Creatures 18
4 ケラル砦の修道院長
4 僧院の早槍
3 ピア・ナラーとキラン・ナラー
4 無謀な奇襲隊
3 鐘突きのズルゴ
Spells 19
4 ドラゴンの餌
4 軍属童の突発
4 アタルカの命令
4 焦熱の衝動
3 多勢
Sideboard
1 燃えがらの林間地
3 吹きさらしの荒野
2 弧状の稲妻
3 棲み家の防御者
4 ゼンディカーの代弁者、ニッサ
2 龍爪のヤソヴァ
一見してノーマルなアタルカレッドだが、その実態は驚くべき選択に満ちている。土地を足してピア・ナラーとキラン・ナラーを採用しているというのがその一つだ。これによって、長期戦への対応力が増している。地上が止められてしまっても、飛行機械トークンで上から攻めることができるのだ。ナラー夫妻はアタルカの命令や無謀な奇襲隊とも強力なシナジーを構成する。
さらにサイド後からは、ゼンディカーの代弁者、ニッサで相手の予期せぬ角度から攻められる。
そして、ここからこの傑作が生まれ出た:
Atarka Tokens Cloute24, 5-0 in a Magic Online League
Lands 23
4 血染めのぬかるみ
3 燃えがらの林間地
1 森
7 山
4 吹きさらしの荒野
4 樹木茂る山麓
Creatures 14
4 ケラル砦の修道院長
4 僧院の早槍
2 ピア・ナラーとキラン・ナラー
2 無謀な奇襲隊
2 鐘突きのズルゴ
Spells 23
4 ゼンディカーの代弁者、ニッサ
4 ドラゴンの餌
4 軍属童の突発
4 アタルカの命令
4 焦熱の衝動
3 多勢
Sideboard
2 弧状の稲妻
2 沸き立つ大地
4 棲み家の防御者
2 前哨地の包囲
4 焙り焼き
1 龍爪のヤソヴァ
このリストはJoshのデッキの優れたところをすべて取り入れ、さらにメインボードに昇格させている。このリストを何度かテストしてみたが、たった数マッチで虜になってしまった。
現在私が使っているリスト
Lands 23
4 血染めのぬかるみ
3 燃えがらの林間地
2 森
6 山
4 吹きさらしの荒野
4 樹木茂る山麓
Creatures 14
4 ケラル砦の修道院長
4 僧院の早槍
2 ピア・ナラーとキラン・ナラー
2 無謀な奇襲隊
2 鐘突きのズルゴ
Spells 23
4 ゼンディカーの代弁者、ニッサ
4 ドラゴンの餌
4 軍属童の突発
4 アタルカの命令
4 焦熱の衝動
3 多勢
Sideboard
2 弧状の稲妻
2 ゴブリンの闇住まい
3 雷破の執政
2 無謀な奇襲隊
4 焙り焼き
1 精霊龍の安息地
1 龍語りのサルカン
このデッキのニッサは壊れだ。Joshのデッキではサイドに過ぎなかったこのカードがいまやメインから4枚採られているのみならず、デッキ最高の1枚の座を勝ち取っているのだ。ぱっと見でその強さに気づくことは難しいが、一度プレイすれば(私がそうだったように)疑問など吹っ飛んでしまうだろう。
-2能力は果敢クリーチャーやトークン製造機と露骨に相性がいい。だがそれほどあからさまではないのは──私も最初はそれに気づかなかった──、+1能力の強さであり、奥義への到達しやすさなのだ。
マルドゥやマルドゥグリーン、ジェスカイブラックといったデッキは、毎ターン生成される植物トークンを乗り越えるのに一苦労する。一度に少数のクリーチャーしか展開しないことがほとんどで、場合によっては1体かまったく展開しないということもあり得るからだ。時にはそういう戦略に対して腰を据えて防御策を考えなければならないだろうが、その役割を担ってくれるのがニッサというわけだ。
終わりなき植物トークンの群れが乱脈な気孔を押しとどめ、ニッサの忠誠度が7まで到達する時間を稼ぐ。そこからは大量のカードとライフを得たこちらが攻める番だ。
はじける破滅を有するデッキ相手には特に、ニッサの忠誠度を徹底的に上げ続けることにしている。奥義到達を防ぐためにリソースを割かせ、その間に他のカードで勝利するためだ。忠誠度を下げてカウンターを乗せたとしても、一度ニッサがはじける破滅で処理されてしまえば、ライフゲインと除去をふんだんに持った相手に対して2/2のゴブリントークン数体はゲームエンドをもたらすには非力すぎる。
多くの場合、ニッサは他の何者にも優先して3ターン目にプレイする。どうしてもダメージレースしなければいけないマッチアップを除いては、軍属童の突発よりも優先だ。またそんなマッチアップでも、3ターン目ニッサのほうが強い動きであることに変わりはない。1度忠誠度を上げてトークンを生成し、そこから-2を連打すれば多大なダメージを叩き出せる──アタルカの命令や無謀な奇襲隊があれば尚更だ。
サイド後は、より大きいデッキに変身できる。ナラー夫妻を抜いて24枚めの土地を入れ、雷破の執政、龍語りのサルカン、そしてゴブリンの闇住まいといったデカブツたちを投入すればいいのだ。闇住まいと焙り焼きのコンボはアブザンに対し劇的に効果がある。サイのロースト焼きほどうまいものはこの世にないね。
闇住まいはただ強だ。マジで。どのスペルをフラッシュバックしても強い。軍属童の突発でボードを再構築するも良し、焙り焼きするも良し、焦熱の衝動や多勢、はたまたアタルカの命令でも良い。
このデッキの一番好きなところは、組み込まれたサプライズ要素だ。1ゲーム目をささっと取ったあと、2ゲーム目ではアラシンの僧侶や光輝の炎を山ほど目にするだろう。もちろんそいつらもある程度は効くんだけど、雷破の執政や闇住まいに対しては有効打にはならない。とあるゲームでは、魂火の大導師と光輝の炎のコンボで相手のライフが40以上まで膨れ上がった。でもその試合も、ニッサと闇住まいでシンプルに勝つことができた。このデッキはアグレッシブというよりミッドレンジ寄りなのだ。速く勝つこともできるというだけだ。強くて、速くて、リカバリーも簡単だ。
そして何より、プレイしてて単純に楽しいんだ。
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以上です。いまいち活躍の場がなかったニッサですが、アタルカトークンの登場でにわかに脚光を浴びてますね。カリタスに続く出世頭となるのか?
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マジックの世界には、あるデッキが採る戦略を一言で表すスラングが存在する。たとえば、相手が持つ最大値を上回る脅威を内蔵し、とにかくマナを伸ばしてそいつを叩きつけることを目標とするデッキは"ランプ"と呼ばれる。"アグロ"デッキの多くは最大値と平均コストを低く設定し、敵が追いつけないくらいの速さを武器にする。
どんな相手も純粋なカードパワーで叩き潰そうとする、アブザンのようなデッキは対戦相手を"スルー"するデッキだ。包囲サイの強さはごくシンプルなのだ。また、コントロール手段や強力なシステムを備えた"ロング"デッキは、自らの勝ち手段が回り始めるまでゲームを長引かせることを目標とする。
そしてもう一つ、忘れてはいけない戦略がある。先の4つほど普遍的で馴染み深いわけではないが、闇の隆盛で未練ある魂が刷られて以来、私の心を捉えて離さない戦略だ。その名は"ワイド"。小さなトークンとクリーチャーで盤面を埋め尽くし、そいつらをまとめてパンプするのだ。相手がサイズで上回っていても気にしない。戦闘でこちらの手勢が何体かやられようとも、残りで押しつぶしてしまえばいいのだ。絶え間ない飢餓、ウラモグはでっかいお友達だが、一度にブロックできるゴブリントークンの数は、やはり1体でしかないのだ。
現スタンダードの"ワイド"戦略はここから始まった:
Atarka Tokens Josh Utter-Leyton, 9th place in a MOCS a week ago
Lands 23
4 血染めのぬかるみ
2 燃えがらの林間地
1 森
11山
1 吹きさらしの荒野
4 樹木茂る山麓
Creatures 18
4 ケラル砦の修道院長
4 僧院の早槍
3 ピア・ナラーとキラン・ナラー
4 無謀な奇襲隊
3 鐘突きのズルゴ
Spells 19
4 ドラゴンの餌
4 軍属童の突発
4 アタルカの命令
4 焦熱の衝動
3 多勢
Sideboard
1 燃えがらの林間地
3 吹きさらしの荒野
2 弧状の稲妻
3 棲み家の防御者
4 ゼンディカーの代弁者、ニッサ
2 龍爪のヤソヴァ
一見してノーマルなアタルカレッドだが、その実態は驚くべき選択に満ちている。土地を足してピア・ナラーとキラン・ナラーを採用しているというのがその一つだ。これによって、長期戦への対応力が増している。地上が止められてしまっても、飛行機械トークンで上から攻めることができるのだ。ナラー夫妻はアタルカの命令や無謀な奇襲隊とも強力なシナジーを構成する。
さらにサイド後からは、ゼンディカーの代弁者、ニッサで相手の予期せぬ角度から攻められる。
そして、ここからこの傑作が生まれ出た:
Atarka Tokens Cloute24, 5-0 in a Magic Online League
Lands 23
4 血染めのぬかるみ
3 燃えがらの林間地
1 森
7 山
4 吹きさらしの荒野
4 樹木茂る山麓
Creatures 14
4 ケラル砦の修道院長
4 僧院の早槍
2 ピア・ナラーとキラン・ナラー
2 無謀な奇襲隊
2 鐘突きのズルゴ
Spells 23
4 ゼンディカーの代弁者、ニッサ
4 ドラゴンの餌
4 軍属童の突発
4 アタルカの命令
4 焦熱の衝動
3 多勢
Sideboard
2 弧状の稲妻
2 沸き立つ大地
4 棲み家の防御者
2 前哨地の包囲
4 焙り焼き
1 龍爪のヤソヴァ
このリストはJoshのデッキの優れたところをすべて取り入れ、さらにメインボードに昇格させている。このリストを何度かテストしてみたが、たった数マッチで虜になってしまった。
現在私が使っているリスト
Lands 23
4 血染めのぬかるみ
3 燃えがらの林間地
2 森
6 山
4 吹きさらしの荒野
4 樹木茂る山麓
Creatures 14
4 ケラル砦の修道院長
4 僧院の早槍
2 ピア・ナラーとキラン・ナラー
2 無謀な奇襲隊
2 鐘突きのズルゴ
Spells 23
4 ゼンディカーの代弁者、ニッサ
4 ドラゴンの餌
4 軍属童の突発
4 アタルカの命令
4 焦熱の衝動
3 多勢
Sideboard
2 弧状の稲妻
2 ゴブリンの闇住まい
3 雷破の執政
2 無謀な奇襲隊
4 焙り焼き
1 精霊龍の安息地
1 龍語りのサルカン
このデッキのニッサは壊れだ。Joshのデッキではサイドに過ぎなかったこのカードがいまやメインから4枚採られているのみならず、デッキ最高の1枚の座を勝ち取っているのだ。ぱっと見でその強さに気づくことは難しいが、一度プレイすれば(私がそうだったように)疑問など吹っ飛んでしまうだろう。
-2能力は果敢クリーチャーやトークン製造機と露骨に相性がいい。だがそれほどあからさまではないのは──私も最初はそれに気づかなかった──、+1能力の強さであり、奥義への到達しやすさなのだ。
マルドゥやマルドゥグリーン、ジェスカイブラックといったデッキは、毎ターン生成される植物トークンを乗り越えるのに一苦労する。一度に少数のクリーチャーしか展開しないことがほとんどで、場合によっては1体かまったく展開しないということもあり得るからだ。時にはそういう戦略に対して腰を据えて防御策を考えなければならないだろうが、その役割を担ってくれるのがニッサというわけだ。
終わりなき植物トークンの群れが乱脈な気孔を押しとどめ、ニッサの忠誠度が7まで到達する時間を稼ぐ。そこからは大量のカードとライフを得たこちらが攻める番だ。
はじける破滅を有するデッキ相手には特に、ニッサの忠誠度を徹底的に上げ続けることにしている。奥義到達を防ぐためにリソースを割かせ、その間に他のカードで勝利するためだ。忠誠度を下げてカウンターを乗せたとしても、一度ニッサがはじける破滅で処理されてしまえば、ライフゲインと除去をふんだんに持った相手に対して2/2のゴブリントークン数体はゲームエンドをもたらすには非力すぎる。
多くの場合、ニッサは他の何者にも優先して3ターン目にプレイする。どうしてもダメージレースしなければいけないマッチアップを除いては、軍属童の突発よりも優先だ。またそんなマッチアップでも、3ターン目ニッサのほうが強い動きであることに変わりはない。1度忠誠度を上げてトークンを生成し、そこから-2を連打すれば多大なダメージを叩き出せる──アタルカの命令や無謀な奇襲隊があれば尚更だ。
サイド後は、より大きいデッキに変身できる。ナラー夫妻を抜いて24枚めの土地を入れ、雷破の執政、龍語りのサルカン、そしてゴブリンの闇住まいといったデカブツたちを投入すればいいのだ。闇住まいと焙り焼きのコンボはアブザンに対し劇的に効果がある。サイのロースト焼きほどうまいものはこの世にないね。
闇住まいはただ強だ。マジで。どのスペルをフラッシュバックしても強い。軍属童の突発でボードを再構築するも良し、焙り焼きするも良し、焦熱の衝動や多勢、はたまたアタルカの命令でも良い。
このデッキの一番好きなところは、組み込まれたサプライズ要素だ。1ゲーム目をささっと取ったあと、2ゲーム目ではアラシンの僧侶や光輝の炎を山ほど目にするだろう。もちろんそいつらもある程度は効くんだけど、雷破の執政や闇住まいに対しては有効打にはならない。とあるゲームでは、魂火の大導師と光輝の炎のコンボで相手のライフが40以上まで膨れ上がった。でもその試合も、ニッサと闇住まいでシンプルに勝つことができた。このデッキはアグレッシブというよりミッドレンジ寄りなのだ。速く勝つこともできるというだけだ。強くて、速くて、リカバリーも簡単だ。
そして何より、プレイしてて単純に楽しいんだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
以上です。いまいち活躍の場がなかったニッサですが、アタルカトークンの登場でにわかに脚光を浴びてますね。カリタスに続く出世頭となるのか?
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