PT参加者の日記~Top8編~ By Pascal Maynard
2016年2月12日 翻訳 コメント (2)
CFBより。元記事(http://www.channelfireball.com/articles/the-diary-of-a-pro-player-top-8-at-pro-tour-oath-of-the-gatewatch/)もぜひご一読を。
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ようやく、だ。
先週の土曜日から、どんな気持ちかと訊かれても口をついて出るのはそれだけだった。これまで13回もPTに参加してきたが、結果を出せたことは一度もなかった──勝率は50%を切っていて、賞金を得たのも4年前の、3、4回だけだった。
今回、私は一つの目標を定めて会場入りした。マネーフィニッシュ。
2度めのドラフトを終えて成績は8-3、ここに至って私は考えた。よし、目標達成まではまだ3回も負けられるじゃないか。トップ8の目があることは無論承知していたが、できるとは到底思えなかった。なにしろトップ50にも入ったことがないのだから──いきなりトップ8というのは、不相応なスタートに思えた。
でもどうやら、私のスタート地点はトップ8ということらしい。そして新しい目標はトップ4だ。
・デッキの選択
PTの約2週間前に親和に思い至った。チームメイトにAlex MajlatonとRicky Chinという親和のエキスパートがいたから、少なくとも親和を握るという択を残せるようにしておこうと考えたのだ。それから、毎日がマジックに費やされた調整期間の中で無数のデッキを試したが、実を結んだのはプロツアーを目前にした月曜日のことだった。 選択肢はアブザン、親和、そして青赤エルドラージに絞られていた。アブザンはその丸さから、バックアッププランとしておいた。Ben WeitzとJC Tao(今PTの優勝者だ)が原型を作り上げた青赤エルドラージはチーム謹製のデッキだ。様々な色の組み合わせをテストしたが、青赤のタイプがもっとも好感触だったのだ。
その月曜日、私は空中生成エルドラージをキャストしながら(いや、ドラフトしてたわけじゃないよ)こう考えていた──「これはやっぱりないわ」。私は青赤エルドラージを切り捨て、代わりにMOで親和を延々と回しはじめた。
で、石のような静寂にやられ続けたというわけだ。こんなバカな話があるか。PTのまさしく前夜、私は自問した。明日戦う相手は、MOの奴らみたいにどんなデッキにでも石のような静寂をありったけぶち込むような真似をしてくるだろうか、ってね。寝る前にはイカれちまってたみたいで、ジェスカイカラーの広がりゆく海デッキに鞍替えして、カードをスリーブに入れてデッキリストを書くところまで行った(心配ご無用、そのデッキのビデオはちゃんと撮ってある)。それから寝た。
悪夢を見続けてなかなかぐっすり眠れず、7時45分には目覚めた。そして、やっぱり親和を握ることにした。脳内でシミュレートしてみたが、ジェスカイ広がりゆく海を使った経験がなさすぎて、どうしたら良いかわからない状況が多すぎた。結局、その週の間回し続けた以下の75枚を登録した。石のような静寂? 来るなら来いよ。でもなるべくなら来るな。
Lands 17
4 ちらつき蛾の生息地
4 ダークスティールの城塞
3 空僻地
4 墨蛾の生息地
1 島
1 山
Creatures 27
4 電結の荒廃者
4 エーテリウムの達人
3 メムナイト
4 羽ばたき飛行機械
4 信号の邪魔者
4 鋼の監視者
4 大霊堂のスカージ
Spells 16
2 頑固な否認
4 頭蓋囲い
4 オパールのモックス
4 バネ葉の太鼓
2 溶接の壺
Sideboard
2 古の遺恨
3 刻まれた勇者
1 ギラプールの霊気格子
1 墓掘りの檻
1 はらわた撃ち
1 天啓の光
1 大祖始の遺産
1 海門の残骸
2 思考囲い
1 倦怠の宝珠
1 鞭打ち炎
メインデッキに入っている頑固な否認は、4投しているエーテリウムの達人を守るのが仕事だ。ダメージレースが重視されるメタゲーム下で、達人は重要な役割を果たす。実戦では感電破と入れ替えることが多かったけれど。
・初日ドラフト
これ(訳注──画像1を参照してください)は理想的に組めたデッキとは言いがたい。1パック目からはリンヴァーラを引いたが、上家がCraig Wescoeだから白は空いてない。だが他の色も事情が同じだった。シグナルというものが見つからなかったのだ。1パック目を終えた時点で、何のまとまりもないカードたちが手元にあった。2パック目では巨人の陥落を引き,色を決めるというよりも単にボムだからという理由でこれをピックした。この時点で、私が手にしたカードでもっとも強力なのはどうみても1枚の神話レアと1枚のレアだった。この2枚に託すことに決めた。何枚か数合わせのカードを含めて、"おなじみの"白赤無色コントロールが完成した。
このドラフトは2-1で、デッキの出来から考えれば良い結果だろう。もちろん、2枚のボムが勝たせてくれた試合は数多い。
・2日目ドラフト
さあ、このデッキ(訳注──画像2)はだいぶマシな代物だ。これだけマナシンクと再利用手段があれば、長期戦ではまず負けなし。このデッキは順調に相手を撃破し続けた──渡辺雄也という壁にぶち当たるまでは。 彼のデッキは対峙したくないと思っていた、まさにそのものだった:。武器の教練者2枚, 岩屋の装備役, 装備品と飛行を満載した赤白アグロだ。
これも結果は2-1。
・構築
本当のところ、↓以上に言うべきことはない。
オパールのモックスは手に吸い付いた。
石のような静寂はまったく見なかった。
トーナメントの間ずっと引きが強く、対策にもほとんど出会わなかった。スイスで喫した唯一の負けはアドストームに対してで、 ファイレクシアの非生とサイドからのハーキルでまあ微不利なマッチアップだ。
そして、トップ8でみんな大好きLSVに負けた。けれど今でも、親和対無色エルドラージは親和が有利だと思っている。オールインデッキ同士のマッチアップにおいては、猿人の指導霊を使っての四肢切断のタイミングやΦマナでのはらわた撃ちには難しい判断が必要になりミスがつきものだ。初手はどれも良かったが、オパールのモックスには一度も出会えなかった。接戦になったが、制したのはLSVだ。
日曜日以来、どうしていきなりこんな結果を出せたのか、自問し続けている。答えは"経験"だ。手に馴染んだデッキを使える、モダンというフォーマットが大きな要因なのだ。でもモダンPTだけでは満足できない──スタンダードのPTは年3回あるのだから。マドリードから、私にとって新しい挑戦が始まる。デッキ探しに時間をかける替わりに早い段階でデッキを決めて、それを今まで以上の精度で使い込むつもりだ。
ああ、そうそう、一応書いておくけどたぶんPT優勝デッキを握るチャンスがありながらそうしなかったのはミスなんだろうね。でも賞金1万ドルとプロポイント18点ってのは、そのミスを埋め合わせるのには十分すぎるくらいだよ。
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以上です。メイナードさんについてびっくりしたのは、22歳という年齢です。なぜか年上だと思い込んでいましたので放送を見ていて愕然としました。ともあれ、訳し続けてきたこの日記シリーズはほとんど最高の形で終えることができたのではないでしょうか。スタンでの活躍にも期待です。
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ようやく、だ。
先週の土曜日から、どんな気持ちかと訊かれても口をついて出るのはそれだけだった。これまで13回もPTに参加してきたが、結果を出せたことは一度もなかった──勝率は50%を切っていて、賞金を得たのも4年前の、3、4回だけだった。
今回、私は一つの目標を定めて会場入りした。マネーフィニッシュ。
2度めのドラフトを終えて成績は8-3、ここに至って私は考えた。よし、目標達成まではまだ3回も負けられるじゃないか。トップ8の目があることは無論承知していたが、できるとは到底思えなかった。なにしろトップ50にも入ったことがないのだから──いきなりトップ8というのは、不相応なスタートに思えた。
でもどうやら、私のスタート地点はトップ8ということらしい。そして新しい目標はトップ4だ。
・デッキの選択
PTの約2週間前に親和に思い至った。チームメイトにAlex MajlatonとRicky Chinという親和のエキスパートがいたから、少なくとも親和を握るという択を残せるようにしておこうと考えたのだ。それから、毎日がマジックに費やされた調整期間の中で無数のデッキを試したが、実を結んだのはプロツアーを目前にした月曜日のことだった。 選択肢はアブザン、親和、そして青赤エルドラージに絞られていた。アブザンはその丸さから、バックアッププランとしておいた。Ben WeitzとJC Tao(今PTの優勝者だ)が原型を作り上げた青赤エルドラージはチーム謹製のデッキだ。様々な色の組み合わせをテストしたが、青赤のタイプがもっとも好感触だったのだ。
その月曜日、私は空中生成エルドラージをキャストしながら(いや、ドラフトしてたわけじゃないよ)こう考えていた──「これはやっぱりないわ」。私は青赤エルドラージを切り捨て、代わりにMOで親和を延々と回しはじめた。
で、石のような静寂にやられ続けたというわけだ。こんなバカな話があるか。PTのまさしく前夜、私は自問した。明日戦う相手は、MOの奴らみたいにどんなデッキにでも石のような静寂をありったけぶち込むような真似をしてくるだろうか、ってね。寝る前にはイカれちまってたみたいで、ジェスカイカラーの広がりゆく海デッキに鞍替えして、カードをスリーブに入れてデッキリストを書くところまで行った(心配ご無用、そのデッキのビデオはちゃんと撮ってある)。それから寝た。
悪夢を見続けてなかなかぐっすり眠れず、7時45分には目覚めた。そして、やっぱり親和を握ることにした。脳内でシミュレートしてみたが、ジェスカイ広がりゆく海を使った経験がなさすぎて、どうしたら良いかわからない状況が多すぎた。結局、その週の間回し続けた以下の75枚を登録した。石のような静寂? 来るなら来いよ。でもなるべくなら来るな。
Lands 17
4 ちらつき蛾の生息地
4 ダークスティールの城塞
3 空僻地
4 墨蛾の生息地
1 島
1 山
Creatures 27
4 電結の荒廃者
4 エーテリウムの達人
3 メムナイト
4 羽ばたき飛行機械
4 信号の邪魔者
4 鋼の監視者
4 大霊堂のスカージ
Spells 16
2 頑固な否認
4 頭蓋囲い
4 オパールのモックス
4 バネ葉の太鼓
2 溶接の壺
Sideboard
2 古の遺恨
3 刻まれた勇者
1 ギラプールの霊気格子
1 墓掘りの檻
1 はらわた撃ち
1 天啓の光
1 大祖始の遺産
1 海門の残骸
2 思考囲い
1 倦怠の宝珠
1 鞭打ち炎
メインデッキに入っている頑固な否認は、4投しているエーテリウムの達人を守るのが仕事だ。ダメージレースが重視されるメタゲーム下で、達人は重要な役割を果たす。実戦では感電破と入れ替えることが多かったけれど。
・初日ドラフト
これ(訳注──画像1を参照してください)は理想的に組めたデッキとは言いがたい。1パック目からはリンヴァーラを引いたが、上家がCraig Wescoeだから白は空いてない。だが他の色も事情が同じだった。シグナルというものが見つからなかったのだ。1パック目を終えた時点で、何のまとまりもないカードたちが手元にあった。2パック目では巨人の陥落を引き,色を決めるというよりも単にボムだからという理由でこれをピックした。この時点で、私が手にしたカードでもっとも強力なのはどうみても1枚の神話レアと1枚のレアだった。この2枚に託すことに決めた。何枚か数合わせのカードを含めて、"おなじみの"白赤無色コントロールが完成した。
このドラフトは2-1で、デッキの出来から考えれば良い結果だろう。もちろん、2枚のボムが勝たせてくれた試合は数多い。
・2日目ドラフト
さあ、このデッキ(訳注──画像2)はだいぶマシな代物だ。これだけマナシンクと再利用手段があれば、長期戦ではまず負けなし。このデッキは順調に相手を撃破し続けた──渡辺雄也という壁にぶち当たるまでは。 彼のデッキは対峙したくないと思っていた、まさにそのものだった:。武器の教練者2枚, 岩屋の装備役, 装備品と飛行を満載した赤白アグロだ。
これも結果は2-1。
・構築
本当のところ、↓以上に言うべきことはない。
オパールのモックスは手に吸い付いた。
石のような静寂はまったく見なかった。
トーナメントの間ずっと引きが強く、対策にもほとんど出会わなかった。スイスで喫した唯一の負けはアドストームに対してで、 ファイレクシアの非生とサイドからのハーキルでまあ微不利なマッチアップだ。
そして、トップ8でみんな大好きLSVに負けた。けれど今でも、親和対無色エルドラージは親和が有利だと思っている。オールインデッキ同士のマッチアップにおいては、猿人の指導霊を使っての四肢切断のタイミングやΦマナでのはらわた撃ちには難しい判断が必要になりミスがつきものだ。初手はどれも良かったが、オパールのモックスには一度も出会えなかった。接戦になったが、制したのはLSVだ。
日曜日以来、どうしていきなりこんな結果を出せたのか、自問し続けている。答えは"経験"だ。手に馴染んだデッキを使える、モダンというフォーマットが大きな要因なのだ。でもモダンPTだけでは満足できない──スタンダードのPTは年3回あるのだから。マドリードから、私にとって新しい挑戦が始まる。デッキ探しに時間をかける替わりに早い段階でデッキを決めて、それを今まで以上の精度で使い込むつもりだ。
ああ、そうそう、一応書いておくけどたぶんPT優勝デッキを握るチャンスがありながらそうしなかったのはミスなんだろうね。でも賞金1万ドルとプロポイント18点ってのは、そのミスを埋め合わせるのには十分すぎるくらいだよ。
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以上です。メイナードさんについてびっくりしたのは、22歳という年齢です。なぜか年上だと思い込んでいましたので放送を見ていて愕然としました。ともあれ、訳し続けてきたこの日記シリーズはほとんど最高の形で終えることができたのではないでしょうか。スタンでの活躍にも期待です。
コメント
如何なるものぞと思って読ませていただいたのですが、
読み終わって一番印象に残っていたのは
「上家がCraig Wescoeだから白は空いてない。」
の一文でした